ノーニュークス・アジアフォーラム通信 No.56 より

台湾第四原発の近くに海底火山

                                 台湾海洋大学応用地球物理研究所 李昭興所長
                                          (国立海洋科技博物館報 2000.12.15)



2000年8月、「南沖縄トラフ海底火山」について研究をしている科学者(台湾、日本、フランス)が共同で、日本海洋センター(JAMSTEC)の潜水艇「しんかい6500」および母船「よこすか」を使って、台湾東北海域、亀山島より東、約80 kmのところにある第五号火山地帯で、3回の潜水調査を行った。

我々はここで非常に活発な海底火山およびその熱水循環による「チムニー」(煙ハロゲン)系統を観測した。これらの資料は我々が研究している海底火山、地震震源地、マグマ活動そして生命の起源などにとって欠かせない材料である。

火山群の位置は貢寮の第四原発からは遠くなく、五号火山は80km、最も近い八号火山は20kmなので、原発建設は十分な地質的見地に基づかなければならない。簡単に言うと、これら海底火山の原因、潜水観測の結果と第四原発におよぼす影響である。

第五号火山は南沖縄トラフ中心地の火山群の中にある。過去数年、我々国家科学会研究計画のもと、我が国の海洋研究船舶を何度も使い、調査した結果を示すと以下の通りである。
第五号火山は、3つの火山の峡谷に介在しており、EK500の水中ソナーシステムによる毎回の就航で、勢いよく立ち上がる「噴泉」現象を記録することができた。

CDTの資料は濁度と塩分濃度が異常で、地熱が高く(1000mW/uまで達し、これは通常の海底地熱の20倍)、掘り出した岩石は流紋岩がほとんどであったことを明らかにしている。

 今回の潜水を通して、我々は多くの場所に「チムニー」系統を発見した。「チムニー」の大きさはばらばらで1〜10m、活発な火山口付近に密集している。それぞれの柱には深海ガニ、エビなどがたくさん生息している。「チムニー」の出口の海水温度は170℃まで上昇し、pH4.5しかない。沖縄トラフのその他の「チムニー」系統を調査した結果、チムニーの年齢は若く、200〜500年であった。マグマが熱水噴泉を提供しなければ、生物群も引き続いて消滅し、それに取って代わるのは硫黄の結晶や重金属を多く含んだ堆積物である。この種の生物群は高温、高圧、強酸、酸欠という「劣悪」な環境の中で生活ができ、微妙な海底火山、熱水循環、「化合作用」の生物群そして硫黄/重金属を含んだ堆積物という新しい火山環境を構成している。



台湾は西太平洋プレートの突き当たった所にあり、今まさに造山運動の最盛期で、頻繁に地震が起こり、地質は粉砕し断層が至る所に存在している。100年ほど前、基隆地区は大津波に見舞われ、隣にある琉球群島は日本政府によって「津波危険区域」とされた。東北海域のこれらの海底火山はすぐに噴火する危険はないかもしれないが、火山の侵入はもうすでに台湾本島に達しており、亀山島/宜蘭充沛の温泉そして急速な地層陥没、坪林/蘇澳隊道の地質変異、これらは大自然の声を表している。亀山島での最近の大量火山噴火は約7000年前で、その山は活火山で、貢寮の第四原発との距離はわずかに20kmである。全世界にある原子力発電所は活火山のこんな近くには設けられていない。

我々は政府に次のように注意を与えなければならない。

・ 第四原発の半径80kmの海域に70数個の海底火山があり、その内の11個は今「活火山」である可能性がある。

・ 浅瀬や海岸付近の火山は破壊性を持った火山である。それは津波、火山灰、溶岩の災害をもたらす。

・ 津波は水位が高くなる危険以外に水位が低くなる危険もある(進水口に大量の土砂がつまり、水源を断絶する)。

・ 火山爆発が津波を発生させる以外に、海底の大地震や大陸の斜面倒壊が起こり、これらも津波の主要な元凶である。この三つの潜在する危険要因は第四原発にすべて備わっているのである。

・ 近距離の津波は「予測」「事前の警戒」が難しい。

このような先天的に不良な条件の下では、どんな工事でも詳細な地質評価と推測が必要なのである。地震による災害は再建することができるが、原子力発電の変異は「悪夢」の始まりである。政府が「地質調査」を重要視することを期待する。天災(たとえば、地震や火山爆発)は今のところ、回避する方法がない。しかし、十分な地質データは「防災」の最も有効な手段の一つである。






台湾東北端の海底火山の要因と未来予測展望 

                              台湾海洋大学応用地球物理研究所 李昭興所長
                                   (海軍軍官学校、海洋検討会での報告より抜粋)

台湾東北端つまり亀山島以東の海域は沖縄海溝の最南端(Southernmost Part of Okinawa Trough ; 略称SPOT)に位置する。それは琉球の海岸線後部の拡張した縁にある海底盆地だ。たぶんフィリピン海底棚が西北に伸びユーラシア大陸に呑み込まれた結果だろう。沖縄海溝は現在成長段階の初期にあり、特に台湾に近い地域では地震が頻発し海底火山が林立している。海底の地熱温度はとても高く海洋金属鉱物の溶解度も普通ではない。その歴史は発生から成長まで地質年代は短く(約1.4百万年)、面積も狭い(100×100平方km)。つまり得難い地球科学的自然実験場だ。

そのうえ黒潮がここを経ているため台湾、中国、日本、韓国沿岸の重要な漁場と気候変化においては無視することのできない地点だ。また台湾北部の頻発地震と沈下する地層、沿岸の生態、生活にとってはさらに関連が深い。

目下進めている国家科学会の計測はすでに初期的資料を整えている。わたしたちは「虚・疑・実・境」方式で地形シュミレーションを創った(張仁寿など、1998)。それは小さな100×100平方kmのSPOT海底に68もの火山が存在することを表している。8つの海底活火山は火山第一号から第八号と命名された。 これら火山は水深1200〜1500mに位置し熱水とガスは火山口から噴出し、900m付近まで届いている。(約300mの噴射柱)、また循環作用は相当に活発なのもわかる。

火山の作用は持続的なものであり、2年来の調査観測で多くの現象は持続的なものと見られた。このためこれらの作用と頻発地震と活動する地勢運動は直接関係があると思われる。




ノーニュークス・アジアフォーラム通信 No.56(2002年6月20日)もくじ
ー B5版 28ページー

●STOP! 台湾への原発輸出(宮嶋信夫)
●海底火山が第四原発におよぼす影響(李昭興) 
●日弁連 台湾調査報告   
●第四原発に亀裂が発覚
●ロシアに核廃棄物を輸出しないで (ウラジミル・スリビャーク)
●韓国の蔚珍原発4号炉で細管ギロチン破断事故 (藤野聡)
●細管破断事故で崩れた原発の安全神話(イム・ジョンヒ)
●日本の核武装に反対する(金源植)

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