ノーニュークス・アジアフォーラム通信No.84より

インド・クダンクラム原発増設計画に
激しい反対運動

  教育と研究のための南アジアコミュニティセンター(SACCER)


  インドのマンモハン・シン首相は、2007年1月27日にロシアのプーチン大統領との間でクダンクラム原発増設の契約に署名した。まだ公聴会すら行われていないというのにである。

 一回目の公聴会は、昨年10月6日に開催されようとした。しかし7〜800人の地域住民が現れ、とくに多くの女性らが激しく真情を吐露し、混乱のうちに流会となった。二回目の公聴会は1月31日に予定されていたが、再び延期された。

 クダンクラム当局がカニャクマリ地区のペチパライ灌漑ダムから取水を行うとの計画に対して、危機感をもった農業団体や漁業団体などが、この危険な動きに対する反対運動を組織し始めた。クダンクラム原発にさらに4基を増設するという計画を、クダンクラム当局がすでに持っているというのだ。

 住民たちは06年10月に何度か会議を開いた。そこでは、ペチパライダムの百周年記念行事を計画するとともに、クダンクラム当局が私たちから灌漑用水を不法に奪い取って、危険な原発計画に用いることを阻止する手段や方法について検討した。

 新しく立ち上げられた「カニャクマリ地区水資源保護連合」は06年11月4日にチュッカライで大規模な集会を組織した。その目的は、原発を含めて、さまざまな問題によって私たちの水資源が危機にさらされていることを議論することであった。

 クダンクラム当局はずるがしこく逃げ回り、「イスラエルから技術を導入して脱塩(淡水化)設備を建設するから、ペチパライダムから水は取らない」と都合のいい主張を行った。私たちが、環境影響評価報告書に書かれている内容や、国内の有力な核担当者が書いた最近の論文などを指摘して問いつめると、当局は「それらの情報はすべて間違いだ」と言い放った。典型的な核擁護者の態度だ。

 TNPCB(タミルナド州公害統制委員会)は、07年1月31日の午前10:30より、延期されていたクダンクラム原発3・4・5・6号機建設計画の公聴会を開催する予定であった。新聞広告には、公聴会はクダンクラム市役所で行われると書かれていた。しかし実際に公聴会が行われようとしたのは、原発立地地区にある私的な会議場であった。

 公聴会の告知には、「公聴会においては地域住民の立ち退きの問題についても取り上げられる」とあった。クダンクラムの人々は、堪忍袋の緒が切れた。

 人々はすでに深刻な迷惑をこうむっていた。原発を建設すれば与えられるとされていた1万人分の雇用はついぞ創出されず、原発建設によって訪れるとされた好景気も到来することはなかった。

 彼らは、村からの立ち退きに対して、「もうたくさんだ」と言って、「住民の権利運動」を組織し、07年1月に3日間連続で反対のデモ行進、ハンスト、道路封鎖などを繰り広げた。

 クダンクラム住民の状況を見た近隣の農村、漁村の人々も、新しい熱意を持って立ち上がった。自分たちの住む場所の真ん中に、さらに4期の原発を建てたいなどという人は一人もいない。それだけではなく、彼らはクダンクラム原発1、2号機の建設さえ中止させたいと思っている。

 人々の湧き上がりとうねりを受けて、当局は秘密裏に公聴会を再び延期した。核の推進側は、「組織のトップから最下層の労働者にいたるまで、立ち退かされるものは一人もいない」と、むなしい説得を行った。典型的な核擁護者の態度だ。すでにある敷地の中に8基まで原発建設が可能だと説明するために、彼らはありとあらゆるばかばかしい土地計画を持ち出してきた。

 もっとも穏便でもっとも民主的でもっとも弱体化したマンモハン・シン首相は、07年1月27日にロシアのプーチン大統領との間で、クダンクラム原発に4基を増設する契約に署名した。公聴会すらいまだ開かれていないのに、である。たぶん彼は、公聴会を実施すること自体がペテンとまやかしであることを知っているのだろう。

 クダンクラム原発計画に含まれるのは、ロシア製のVVER原発6基(出力600万kW)とインド製の高速増殖炉2基(それぞれが出力40万kW)、また可能性としては再処理工場、そして核兵器工場であるようだ。この危険な「科学とテクノロジーの寺院」は、世界的に見てもっとも巨大な核施設となるだろう。

 公聴会の開催が延期されたまま宙に浮いていることから、核推進側は、タミルナド州のティルネルヴェリ、カニャクマリ、そしてトースクディ地区の人々をどのようにして致命的な核のわなにはめようかと計画を練っているところだ。

 地元の新聞その他のメディアは、核の「広告」と「酒宴」に満足しており、核の親分たちに嫌われるようなことはまったく報道しないという姿勢である。タミルの民族とその福祉についてあれほど声高に主張してきた政党たちは、南部地域の人々が核漬けになったところでかまわないと考える傾向がある。宗教関係者たちは、教化的なとっぴな行動に忙しいようだ。

 そのようなことなので、地元の人々は自分たちでやっていく以外にない。私たちはゆっくりと、着実に、しかし確実に組織化を進めている。私たちの幸運を祈ってください。そして、核至上主義の危機が世界中に広がろうとしている今、あなたの住む場所で何らかの行動を起こしてください。    
            (WISE「ニュークリア・モニター」No.652より)



ノーニュークス・アジアフォーラム通信 No.84もくじ

No.84(07年2月20日発行)B5版36ページ   

●[声明] 強震により第三原発が停止、
第一・二・三原発と原子力委員会に厳格な検査を要求する(台湾環境保護連盟)

●台湾における核廃棄物の処理問題(劉惠敏)   
            
●「韓日反核フォーラム2006」に参加して(長田浩昭)

●インドネシアが原発建設へ(ナナ・スハルタナほか)  
           
●タイの環境保護団体が原発の公聴会を中止に追い込む 
           
●原発輸出への資金援助を問う(フィリップ・ワイト) 
           
●日本の核廃棄物が東南アジアへ!(グリーンピース東南アジア)  

●「安倍晋三首相のいう『美しい国』とはよもや、汚いものや危ないごみは
他所へ送るという意味ではあるまい」(藤原敏秀)  
         
●ジャドゥゴダ・ウラン鉱山で重大な放射能汚染事故! ★ 国際署名の要請 

●インド・クダンクラム原発増設計画に激しい反対運動(SACCER)     

●インド・パキスタンの平和市民グループの書簡

●広河隆一、真相と愛で台湾を感動させる(葉紘麟)      
  
●目の前にあったチェルノブイリ(李育琴)                

●日本の専門家が第四原発見学、錆びた配管を目撃(呂慧珍)        

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