ノーニュークス・アジアフォーラム通信No.80より

「JNFL(日本原燃)の安全管理は、地元住民の皆さまに信用されています」

「韓国は過去3年、毎年平均約1000人が六ヶ所村に来ています」

「台湾が低レベル放射性廃棄物処分場の予定地を決めたら、
御二人様はぜひ台湾にきてください」

台湾政府・日本原燃・六ヶ所村長のトンデモ会談

05年12月8日に青森で行われた、台湾経済部(経済省)次長 候和雄、JNFL(日本原燃株式会社)副社長 平田良夫、六ヶ所村長 古川健治の会談記録が、台湾政府のウェブサイトで公表されています。そこで以下のように、青森の山田さん・山本さんにコメント、文章を書いていただきました(台湾緑色公民行動連盟のウェブサイトに掲載してもらう予定です)。
■ は青森の山田清彦さん(核燃サイクル阻止1万人訴訟原告団・事務局長)のコメント

           〔会談記録〕

候経済部次長「JNFLはどうやって六ヶ所村に情報と資源を提供しますか?」

平田副社長「トラブルが発生した場合、すぐ六ヶ所村に報告します」

■ 国、県、村、周辺市町村へは数時間後。マスコミを通じての県民への公表は翌日の場合が多く、35時間後という例もあり、マスコミからもっと早く教えてほしいという不満が述べられています。

平田「六ヶ所村でできることは六ヶ所村でやるという根本政策に基づき、食材、建材などの買出しはなるべく六ヶ所村で行います。ここでできないことは、東京、大阪などの大会社に委ねます。 六ヶ所村村民は十年にわたる大建設に洗練させ、技術が増進しました」

■ 再処理工場は当初計画では1997年12月には操業の運びとなるはずでした。ところが、設計変更があったり、見直しがあったりで、建設が長引きました。
 六ヶ所村の住民が参加したのは、多くは土木工事であったり、簡単なコンクリート工事が主であり、再処理工場の建設に直接関わったのではありません。
 それに、建物が立ってからは、配管工や溶接工の仕事が主で、そういうことに関われる方は限られていました。結果として、土木工事等の仕事が減ったわけですので、その業種の方々は、今後の仕事を再処理工場のメンテナンスに求めざるをえない状況です。つまり、積み重ねた土木や建設の経験を生かす場がないので、今後は被ばく作業に活路を見出すしかないのです。

平田「JNFLの施設では多くの村民が働いているので、自分の身で施設の安全性を体験できます。JNFLの仕事に対する厳しさと徹底的に実行する安全管理は、地元住民の皆さまに信用されています」

■ 「日本原燃が施工管理を十分に行わなかったため、再処理工場の建設時に不良施工が行われた」ということが、使用済み核燃料の貯蔵プールで漏水が起きた際の原因究明でわかりました。また、当時の日本原燃の社員で施工管理をしたのは、電力会社からの出向組で、現場の状況がよくわからないことも原因しました。
 ただし、建設時にさかのぼって再処理工場が健全に建設された証明はできないので、健全に建設されたことの確認調査を行い、無理やり「健全である」と認定したのです。
 昨年、再度漏水があり、不十分な安全管理が浮き彫りとなりました。
 いま、アクティブ試験が行われていますが、トラブルがいくつも発生しています。
 核燃施設に協力的な県民の間では、トラブル発生の都度マスコミが大きく取り上げるので、トラブル情報をこまめに載せることに反感を覚える者もいますし、そのように報道すれば、日本原燃の社員がやる気をなくすと気遣う者もいます。
 ところが、小さなトラブルは1か月分を翌々月にまとめて報告することになっており、それを超えるトラブルを日本原燃が自ら発表しているのに過ぎないのです。
 このような報告がたびたびなので、青森県内で行われる各種の世論調査では、日本原燃に反対する人の割合が80%を超えています。
ですから、地元住民の皆さまに信用されているとは、なかなか言えないように思います。
 ちなみに、5月27日の新聞報道によれば、さすがの古川村長も、日本原燃に厳しく対処せざるを得ないと述べていまして、信用という言葉をそのまま使うわけにはいかないように思います。
 
平田「長い時間をかけて六ヶ所村民に高度専門能力を身につけさせ、工事が終わっても仕事を失いません。これは日本の模範的なものであります」

■ 工事の仕事は、先ほど述べたように、建設時だけの仕事なので、今後は仕事がなくなるのです。仕事を失いませんという言い方に、なんとなく妙な言い方を感じます。

平田「常に住民と交流し合い、密接な関係を築きます。忘年会などに積極的に参加します」

古川村長「コミュニケーションのみならず、JNFLのいろんな討論会、研修会などにもなるべく地元住民を出席させます。
 JNFLの従業員は2000名います。15年来、青森県出身者約1000人が雇われました。そのうち160人が六ヶ所村出身です。多くの当地出身者がこの事業に携わっているので、安全の問題に関しては、心配しなくてもいいでしょう」

■ 「約2000人の社員のうち、約1000人が青森県内の採用」は事実です。彼らは主として現場の操作員。残る約1000人は電力会社等からの出向者です。彼らは、主として事務所で働きますが、数年で赴任先に戻ります。
 日本原燃は本社が六ヶ所村ですが、実際には約550名が六ヶ所村に納税しているということです。出向者は出向元に収めています。

「JNFL施設の運転前と運転後、地元住民の反応はどういうふうに変わりましたか?」

古川「六ヶ所村は貧しい土地です。JNFLのおかげで、六ヶ所村の産業構造は建設産業に転換し、村内には2000人の就業機会が増えました、こうして社会の福利厚生、教育、医療サービスなども向上しました。唯一残念なのは、漁業の低迷が持続しています。

■ 「建設産業に転換」:
 この背景には、環境破壊が進んだことによる、沿岸漁業者の失業問題があります。
 六ヶ所村の泊という集落は、昔からウニやあわびがとれるところでした。沿岸が岩場で、ワカメや昆布もとれたのです。漁港も整備され、イカ漁の船も停泊するなど、活気がありました。泊集落の人口は約3000人で、漁業の町として発展しました。
 ところが、砂地であるにもかかわらず、三沢市に三沢漁港が、鷹架沼のあたりにむつ小川原港ができたことで、海流が変わり、深刻な被害を受けました。
 海流が変わったことで、砂が岩場に入り込み、ワカメや昆布が育たなくなり、それを餌にするウニとあわびの漁獲量が激減したのです。結局、その漁港で働いていた漁民が、今度は生活収入を得るために、日本原燃の建設現場に労働力を提供することになったのです。
 漁業の低迷は、結局は環境政策の過ちであるのに、村長が低迷と表現しているのは問題です。
 村民が第一次産業を捨てて、建設産業に転換した理由は、土地の貧しさ(施す労力に比べて収穫が少ない)であることは否定しませんが、日本原燃のおかげで建設業に転換したのではありません。
 その建設業も仕事がなくて、これからはメンテナンスという被ばく仕事になるのですから、日本原燃の求める職種への転換でしか飯を食えない村民を増やしたということでしょう。

古川「青森県は、第一次産業に限られ、県民の所得が低いです。このような環境で六ヶ所村が教育、福利などを受けられて、羨ましがられています」

■ 県民所得が全国の中でも低いのは事実です。でも、教育や福祉は、日本原燃が与えたのではなく、行政が行うものです。それを、あたかも日本原燃のおかげだと村長が言い張るのは、自らが村長としては無能であり、日本原燃に寄りかかっている体質にあることを自白していることになるでしょう。

「JNFLと六ヶ所村の話し合いの実態は?」

古川「施設の安全と周辺への影響に関しては、地元とJNFLに『安全協定』が結ばれております」

■ 安全協定とは、別名紳士協定ともいいます。法的な規制ではなく、それを遵守しないからといって法的な責任を負いません。
ただし取り決めた当事者同士の不信感は生まれるでしょうが、それだけのものです。

平田「お互いに信頼関係の基礎がなければ、いくら話し合っても無駄です。情報は公開すべきです。信頼関係の基礎はこのように築かれました」

■ 「情報は公開すべきです」という言葉は、県民が日本原燃に言っている言葉です。
 ところが日本原燃は、情報の公開に際して、いつも後ろ向きです。
 なぜなら、核防護条約上の守秘義務に抵触する情報もあれば、関連会社の技術上の機密もあるのです。そのような情報を隠してから公表するので、時間がかかるし、わかりづらいものになります。ですから、県民の多くは日本原燃を信頼をしていないのです。

古川「疑問がある時、素直に大声で言い出すのも大事です。そういうことで、六ヶ所村もJNFLを招いて、村内の活動や審議に参加させます」

平田「私も、村内の未来計画委員会に参加して、率直に意見を発表しました」

候「六ヶ所村の観光資源と観光客の実態を教えてください」

古川「RokpokはJNFLが立てたレジャー施設です。年に10万人の観光客を寄せられる観光資源施設になっています。

■ 観光客の実態:
日本の原子力施設のPR館では広く行われているらしいのですが、PR館見学をすれば、観光バスの旅行代が安くなるというのがあるそうです。
 たとえば、福井県の美浜原発は、死傷事故を出して、観光客が激減したので、そのような対策を講じています。他の原発でも、同様のことがされているのは間違いありません。
 六ヶ所村の観光スポットは、核燃施設以外に観光客を受け入れるためには整備されていません(公衆便所が少なく、観光名所と呼べるところも思い当たらない)。
 ただし、下北半島のむつ市には、恐山があり、それなりに観光で訪問する方々がいらっしゃいます。そういう方の受け入れに際して、観光バスをPR館に回してもらって、館内見学を入れてもらえば、旅行代が割安になるということを聞いています。
 これによって、PR館は入館者が確保でき、存在意義を保つための観客動員数を増やすことができるのです。

平田「核燃料リサイクル施設の資産価値のうち1.4 % は税金であり、それを六ヶ所村に提供します。

古川「税収の64-65%はJNFLに関連します。すなわち年度予算110億円のうち、60〜70億円はJNFLからの補助です。通常、六ヶ所村のような規模の村の予算はだいたい40〜50億円です」

平田「六ヶ所村は青森県において唯一『富裕団体』になる自治体です」

■ 日本原燃が六ヶ所村の経済の大部分を支えているというのは、ある意味では事実でしょう。ただし、電源三法交付金の交付がそろそろ尽きました。そのような交付は箱物行政を支えてきましたので、その負担増が六ヶ所村の今後の財政に及ぼす影響は小さくないはずです。

古川「村民はJNFL 施設の安全性にいまだに疑問を持っています。きちんと注意すれば、不安全なことを起こさせないことに有利です」

平田「チェルノブイリといい、JCO事故といい、みな不注意から生み出す『人災』であります」

古川「みのもんたがTV番組で、東京を訪ねた六ヶ所村の修学旅行生にインタビューし、『地元の産業はなに?』と聞くと、中学生は『六ヶ所村の産業は原子力です』と答えました。核燃料サイクル事業に関連する人間がこれを見たら、『20年間の努力がやっと実った』と喜ぶでしょう。六ヶ所村がやっと荒野の中から近代産業を興しました」

「台湾がもし低レベル放射性廃棄物最終処分場の予定地を決めたら、地元の住民を招いて六ヶ所村を見学します。その時はよろしくお願いします」

古川「歓迎いたします」

平田「韓国は過去3年、毎年平均約1000人が六ヶ所村に来ています。現在六ヶ所村は日本政府と、東アジアに貢献できるかどうかを討論しています。核燃料の再処理、ウラン濃縮のできる国として」

■ 「核燃料の再処理、ウラン濃縮のできる国」:
 再処理が商業的に成功するかどうかは、今後の操業にかかっており、まだ実践例がありません。かろうじて運転を続けてきた東海再処理工場は運転をやめましたが、商業規模で再処理が成功したのではありませんでした。
 ウラン濃縮技術に関しても、六ヶ所にある工場は失敗例です。そこで、2010年から新しい工場を作ることになっていますが、それが成功する保証は全くありません。
 その両方とも疑問符なのに、核燃料の再処理とウラン濃縮を代行できるという判断そのものが間違っています。

「韓国慶州でのAPCCC (Asia Pacific Climate Change Conference) 会議で、日本の経産省副大臣にお会いして、原子力発電の議題を討論しました。原発の安全管理について、これから日台両方はたくさん提携し合うところがあると思います」

平田
「中国の副部長も六ヶ所村を参観しました。JNFLはフランスCOGEMAの再処理技術の違いを理解したうえ、将来5〜6年内に商業用再処理工場を建設することを決めました」

中杉秀夫「中国はロシアから再処理技術を引用したけれども、失敗しました」

平田「経済の規模と経験の多少は勝負の決め手です」

「古川村長と平田副社長は台湾にこられたことがありますか?」

古川、平田「一度もないです」

「台湾が低レベル放射性廃棄物処分場の
予定地を決めたら、御二人様はぜひ台湾にきてください」

古川「当時核燃料サイクル施設を推進したのは兄です。そのときの辛い思いは、私がよく知っています」

「古川さん、ぜひ台湾にきて経験をわけあってください」

平田「マスコミ界にはちゃんと勉強する記者を育成する必要がありますね。日本でもマスコミが恐ろしいですよ。でも恐れても逃げたりはしません。恐れがゆえに、逆にもっと彼らに理解してもらう、お互いの認識を深めるべきだと痛感します。核エネルギーにおいてもっとも大事なのは“heart to heart”。もし何も感情がなければ、報道陣の方々も共鳴しません。すなわち単純な“人”と“人”の付き合いでマスコミと接触する」

■ 平田副社長は、マスコミを下のように批
判しています。決して、上に書かれたような感触では接していないし、マスコミが見たらびっくりすることでしょう。

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「安心している住民に火を付け油を注ぐ/原燃副社長、マスコミ批判」
東奥日報 2006年4月19日付
 日本原燃の平田良夫副社長は十八日、六ケ所 村を訪問したフランスのジルダ・ル・リデック駐日大使一行との昼食会で、トラブル発生時の報道が住民の不安をあおっている−と受け取れる発言をした。
 平田副社長は同村の温浴施設「ろっかぽっか」内で行った大使らとの懇談で、フランス国内でのトラブルや、それに対する住民の反応、メディアの報じ方などが話題に上った際に「住民が安心しているところで火を付け、油を注ぐのがマスコミ。事実を正確に伝えるのならば良いのだが」と話した。また、「できるだけ早く記者が理解するよう、勉強してもらう必要がある」などと述べた。
 食事会の他の出席者からは「一般住民と目線が違うように感じた」「トラブルが起きれば一般住民が不安に思うのは当たり前。事業推進側のおごりがあるのでは」などの声が聞かれた。
 取材に対し平田副社長は、海外メディアの過大な報道に対する話だ−とし「前提なしにどぎついことを言ってしまったが、県内の話ではない。誤解を与えたのであれば関係者に説明して解消したい」と述べた。
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平田「原発の占める割合は多すぎても少なすぎでもよくありません。もっともよいバランスを考えなければなりません」

「台湾の石油輸入比率は98 %です」

古川「火力、原子力、風力、水力をバランスよく組み合わせなければなりません」

平田「1975年、原発は日本発電量のわずか5 %でした。石油は65 %でした。しかし現在原発は41%になり、石油が8 %まで減少しました。最近石油が値上げしたけれど、日本の電力価格に影響はなかったです。
 現在、日本の電力のコストは:
・原子力:5〜6円
・石油発電:10〜11円(しかし原油がUS$70まで値上がれば、14〜15円まで上昇する)
・天然ガス発電:6〜7円
 しかし、電力会社は長期契約の形式で天然ガスと核燃料を買っている。数年分の燃料提供を確保するため」

■ 青森県の経済に占める、核燃の効果はそれほど大きいとは思いません。しかし、国の中で再処理事業を手がけるのは六ヶ所再処理工場だけですので、そのような迷惑施設を受け入れていることで、交付金等や地域振興策を求めやすいと、自治体の関係者は認識しているようです。
 そのような恩恵があっても、再処理工場が動き出したら、無事故でさえ40年間も放射能を撒き散らし、大気も海も汚染されるので、私たちにとっては不利益しか思い浮かびません。
 それに、再処理工場が運転を終えたとして、今度は数十年間も放射能減衰を待たなくてはいけません。それから工場を解体して、放射能の強い廃棄物は長期間(数百年とか、数千年単位)管理が必要です。そのような施設と同居したいという人はいないと思うのですが、それを青森県知事が1985年に決めてしまって、現在の状況になっています。
 ただし、その進め方は県民騙しの連続でした。第一、核燃施設についての知識を県民に十分に与えずに、安全性だけを強調して現在に至っています。その不利益を、将来の子供や子孫が背負うことを考えれば、彼らの進め方を考察して、対策を練る必要があります。
 なお、韓国で低レベル放射性廃棄物処分場の候補地を決める際、たくさんの方々が六ヶ所村を訪ねてきました。その際にわかったことですが、韓国の新聞のコマーシャルで、六ヶ所村の原燃のPRセンターから直ぐ近くで、長いも農家が作業している写真を載せて、「私は以前不安を感じていたが、今は安心している」という宣伝がありました。そこで、現地周辺を調べましたが、牧草地はあれども、長いも畑はありませんでした。
 また、国家石油基地の交付金で建てた建物を、低レベルの交付金で建てたと錯覚させるパンフレットもありました。さらには、核燃4施設の交付金を、あたかも低レベル処分場で受けた交付金との誤った情報操作もされていました。
 原子力施設はすべてそうですが、安全に動かしていく技術は未完成です。そして、核のゴミの処分場は、一旦受け入れたらそこに一極集中します。残念ながら、六ヶ所村では日本中の原子力発電所の核のゴミが低レベルだけではなく、中レベルのものまで一極集中が始まろうとしています。正に、そういう意味では、核のゴミを一旦受け入れたら最後だというモデルとして、六ヶ所村の核燃施設計画を考えていただきたい。 


日本原燃再処理工場アクティブ試験以降のトラブルについて
                             
                                   山田清彦

 最近の日本原燃の再処理工場と、東北電力の東通原子力発電所1号機のトラブル事例を、「東奥日報」のインターネット記事から拾ってみました。ここに表示された再処理工場のトラブルは、4件ですが、他にもトラブルは起きています。

(六ヶ所核燃施設全体を見渡せば、ウラン濃縮工場、低レベル放射性廃棄物処分場、高レベル放射性廃棄物一時貯蔵施設でも沢山のトラブルを起こしてきましたが、今回は最新の情報ということで、3月31日に始まった再処理工場のアクティブ゙試験と、昨年12月に運転開始した東通の原子力発電所関係を取り上げました)

再処理工場のアクティブ試験以降のトラブル関連報道(東奥日報より)
・ トラブル続発で原燃に改善要望/自民県連(6.13)
・耐震指針見直しで地質調査/再処理工場周辺(6.13)
・ 耐震指針見直しで再処理工場周辺地質調査実施へ(6.10)
・手袋汚染が原因か/六ケ所再処理作業員被ばく(6.10)
・ 再処理工場試薬漏れ“告発”メール届く(6.9)
・ トラブルは安定操業の教訓/六ケ所で保安院課長が見解(6.3)
・体内被ばくで原燃が臨時全社集会(5.31)
・「県民に心配かけた」/原燃社長が作業員の体内被ばく陳謝(5.31)
・原燃に作業員被ばくの原因究明要請/隣接市町村連絡協(5.30)
・日本原燃が試薬漏れの原因を発表(5.29)
・透明性確保求める/六ケ所・古川村長(5.27)
・知事「第三者チェックを」 六ケ所再処理作業員被ばく(5.27)
・作業員被ばくで県が現場を確認(5.26)
・再処理工場の作業員が被ばく(5.25) トラブル4
・試薬漏れトラブルで成田議長が原燃批判/県議会常任委(5.20)
・再発防止策を国へ報告/東通原発データ改ざんで東北電力(5.19)東通
・ウラン含む試薬が漏れる/六ケ所(5.18) トラブル3
・再処理工場の配管は液漏れなし/放射性物質検出で原燃が調査結果発表(5.3)
・データ改ざん理由か/東北電力社長が藍綬褒章の受章辞退(4.28)東通
・ トラブル情報の公表前倒しに努力/原燃社長(4.25)
・地下道配管下から微量の放射性物質/再処理工場(4.25)トラブル2
・想定超す温度差/東通原発温排水(4.25) 東通
・東北電力、流量計近く品質監査/東芝 東通原発のデータ改ざんで(4.21) 東通
・保安院が東芝と電力2社に厳重注意(4.21) 東通
・「安心している住民に火を付け油を注ぐ」/原燃副社長、マスコミ批判(4.19)
・ 洗浄水漏れで六ケ所隣接市町村が原燃に安全操業要請(4.15)
・再処理工場で洗浄水漏れトラブル(4.12) トラブル1
・東芝、東通原発でもデータ改ざん(4.11)  東通
・燃料の切断開始/試運転が本格化(4.1)

 問題は、ここに表示された再処理工場のトラブルに対して、県と村、隣接市町村がそれぞれ要請し、自民党県議団からも改善要望が出されていることだと考えています(私たちの抗議行動の新聞記事は敢えて載せていません)。  

 日本原燃に対しては、どちらかといえば交付金増額や地域振興策の陳情や要望を唱えるばかりだったのですが、トラブルの多さに呆れているという感じです。ただし、彼らの怒りは、核燃税や交付金の増額で引っ込んでしまうので、その程度の怒りでしかないのが、私たちの悩みです。

 なお、この間のトラブル公表について、この程度のトラブル等は国に報告義務のないものであるという国の見解を、私が5月29日に確認しました。そのような内容を公表したのは、安全協定に基づくもので、日本原燃の誠意であるといわんばかりでした。そのような地元住民の不安に答えない国が安全性を担保する再処理工場や原子力発電所ですから、ますます不安感を強めています。

 ついでに述べておきますが、再処理工場の試験は、通水作動試験、化学試験、ウラン試験、アクティブ試験の順で行われていますが、そのトラブル発生数は、以下のとおりです。

 通水作動試験 2001年 4月〜2004年11月  1252件
 化学試験   2002年11月〜2005年12月   602件
 ウラン試験  2004年12月〜2006年 1月   261件

 ちなみに、日本原燃はこれらを不適合等と表現しておりまして、我々はそれをトラブルと言います。そのずれがありますので、上記の数が全部トラブルだと、日本原燃は認識していません。

 なお、通水作動試験のときに比べて、どんどんと不適合が少なくなっています。それが、再処理工場の安全性に結びつくと考えることはできません。建設時に正しく工事されていれば起きなかったはずの不適合は、さすがに大方は修復されたはずです。でも、これから顕在化する不良(使用済み核燃料貯蔵プールからの漏水発覚の原因は、工事が下請け任せで、現場管理がしっかりできていない故でありました。それと同様の箇所が、まだまだあると私は考えております)もあると思います。それが、再処理工場の機能を止める可能性がありますが、大事故に発展する前に顕在化してほしいと願うばかりです。

 また、東通原発のトラブルは、東芝のデータ改ざんですが、再処理工場の現場にも東芝が入っておりまして、同様のデータ改ざんが行われていなかったかどうか、疑問が高まっています。


        台湾の皆さまへ

              山本若子(青森県保険医協会環境部)

 ついに、六ヶ所からの放射性物質の放出が始まってしまいました。反核燃の運動はこれからももちろん続きます。いま以上に目を光らせていなくてはならないでしょう。

 「15年戻れるなら」と思っている青森県民も多いでしょう。自分をふり返ってみても、もっと必死でもっと何かできたのではないかと悔やまれます。諸先輩の並々ならぬ闘いと努力を私は見てきました。敬服の想いが一杯です。いまも大勢の仲間ががんばっています。六ヶ所村の皆さまもかつて、拳を上げ生活を賭けた闘いをしてきました。人は生きねばなりません、人は時に弱く、時に強い。時に仲間を失い、時に誘惑に駆られる。だからこそ台湾の皆さまには本当に真剣に考えてほしい、事実を見てほしい。答えは見えています。

 茶番劇を批判するだけでなく、今の六ヶ所再処理工場の現状を見てほしいと思います。

 今年5月17日精製建屋内のプルトニウム精製に係わる配管の継ぎ手から硝酸ウラナス(放射性)が漏えいした。アクティブ試験の前段階のウラン試験中にも同種の漏えいが起きていたのに、同種の事故がおきたのは原燃のずさんな管理、責任感の欠如としかいえない。

 ウラン試験で欠陥が見つけられていたのに、青森県はアクティブ試験に進むことを容認してしまった。県民の安全や環境保全より、事業者や国の思惑を重視したのだろうか。

 分析建屋では男性作業員がプルトニウム被爆していた。バイオアッセイ法検査で体内にプルトニウムと見られるアルファ核種を検出した。原燃は人体に影響はないと言い切っているが、疑問である。作業員の働く場所がきちんと管理されていなかったのだ。

 トリチウムもクリプトンも放出されている。私たちは放射性物質を吸わされ、食べさせられている。

 確かに豪華なホールで素晴しいクラシックコンサートが開かれるだろう。温泉施設が完備され、道路は舗装され美しく並木道が伸びている。学校は冷暖房完備となり、児童の活動に援助が来るかもしれない。

 しかし見上げれば再処理工場の排気塔からは空に向かって目に見えない放射性物質が放出され、海岸から3キロ先には放水管からトリチウムが放出される、海では食物連鎖が起きる。

 風が吹き放射性物質は陸の戻る物もあるだろう。英国セラフィールド再処理工場では放射能汚染した鳥類が鉛の箱に入れられ埋められている。

 六ヶ所の村民に申し訳ないのです。心が痛みます。そこでは子供たちが暮らし、原燃に働きに出ている方も多いでしょう。付近で農業や漁業、酪農を営まれている方もいるでしょう。だからこんなこと言いたくなかった。だけど失う前に台湾の人たちにも事実を見てほしい。京都新聞に、スーパーマーケットチェーンのいくつかは、青森・岩手県産の農産物・水産物で微量でも放射能を含む食品を取り扱わないとしていることが記事として載りました。誰だって自分の身を守りたいのです。

 原子力産業も生き残りをかけ様々な攻勢に出るでしょう。教育者や産業界や政治家や芸術家や皆が、素晴しい未来を語り、協力するかもしれません。しかし、そこに住む皆さんが自分たちの目と耳でたしかめ考えてください。

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