ノーニュークス・アジアフォーラム通信No.75より

韓国・核廃棄場強行政策に抗して

三陟住民は「核廃棄場の地質調査を望まない」


―警察は、ふとんを奪ったり食料搬入を禁止するなど人権蹂躙を続けているー


現在、三陟(サムチョク)市遠徳(ウォンドク)邑では、住民80数人が7月22日から、韓水原(株)による核廃棄場用地の地質調査のための一方的な掘削工事に反対する座り込みを続け、警察と対峙する状況が続いています。

住民の座り込みは、遠徳邑の住民らの反対意志にもかかわらず、韓国水力原子力(株)が22日から三陟市遠徳邑イチョン3里で掘削工事を強行したことに起因します。

座り込み5日目に入った26日、警察は、冷たい地べたで夜をあかしたその大部分が老人である住民たちのふとんを奪ったり、食料の搬入を妨害するなど、基本的な人権さえ保障しなかったことが明らかになりました。

警察のこのような措置により、8名のお年寄りが健康状態の悪化で病院に入院したり、高血圧症状のある住民は脱力症状により病院に運ばれました。25日夜には外部にいた住民たちが食べ物と水を届けてくれるよう要請したのに、警察はこれを拒否し、この過程で小競り合いが発生したこともありました。現在住民20人余りが座り込みを続けており、警察約100人が住民らと対峙しています。

イチョン3里の人々は江原道の山あいの純粋な田舎の人々といえます。写真で見る彼らの外見からは非常に窮乏した田舎の人々のように思われますが、今日公権力による思いがけない災難が降りかかる前までは、村人同士でお互い助け合って平和に暮らしてきた、犯罪のない村に暮らしてきた人々です。

しかし、写真を見ても、情け容赦のない公権力に圧倒されたように恐怖におびえ、寒さに震えている姿から、彼らがどれ程大きな苦痛を味わっているのかを推察することができます。

政府・産業資源部は、国民の税金で連日「住民の同意が第一です」と宣伝していますが、相変らず公権力を動員し住民たちを威嚇しながら核廃棄場建設計画を強行しており、「プアン事態を教訓とし、誤った政策を正す」と言っていた政府は影も形もありません。

いま、全国の数ヶ所で、莫大な資金力と行政力と公権力を動員して核廃棄場建設計画を強行する産業資源部の非民主的な政策は、相変らず現在進行形であり、これによって群山と三陟では暴行事件まで発生するなど関連地域の住民たちは大きな苦境に置かれています。国民が本当に願うものは、プアン事態のような痛恨の政策失敗ではなく、国民との合意と議論の中で解決していこうという要求なのです。        (韓国環境運動連合HPより)

*三陟(サムチョク)は、ペ・ヨンジュン(ヨンさま)主演の最新作映画「四月の雪」のロケ地で、いま日本から大量の観光客が押し寄せています


産業資源部の核廃棄場強行政策を糾弾する

−三陟のマ・ギョンマン政策室長、核廃棄場誘致側の殴打により入院加療中−

7月10日、江原道三陟(サムチョク)市遠徳(ウォンドク)邑福祉会館で、三陟核廃棄場反対対策委のマ・ギョンマン政策室長が、三陟国策事業誘致委員会ホン某委員長ほか2名から殴打される事態が起こった。彼らはマ・ギョンマン室長の首を締め、腰を後ろ向きに折り曲げる等の暴行をはたらき、マ・ギョンマン室長は首と腰の負傷により現在病院に入院治療中である。

この日の暴行は、三陟市遠徳邑で開かれた江原大・イ某教授による「陽子加速器事業と核廃棄場誘致地域に対する支援案についての説明会」において、一方的な説明会に対し反対の立場を陳述するマ・ギョンマン室長を、ホン某委員長たちが強制的に引っ張り出す中で発生した。マ・ギョンマン室長は説明会場の外で殴打されたうえ暴言を浴びるなど、およそ15分にわたって災いを被った。

先月、全羅北道・群山でも、群山核廃棄場反対対策委所属の会員が、群山国策事業推進団の暴行を受けて病院に入院し、警察に告訴状(被害届)を出すなど、核廃棄場誘致による地域住民間の葛藤が徐々に広がっている。

その上、最近二度にわたった産業資源部主催の説明会が、反対団体の入場を許可しないなどバランスを欠いた運営であり、政府自ら地域葛藤を誘発し、地域共同体を破壊する態度をとっていることによって、住民間の溝がますます深まっている。

反核国民行動はこのような事態を強く糾弾し、またもや非民主的方式により核廃棄場建設計画を強行する産業資源部の態度に驚きを禁じ得ない。

6月16日、産業資源部は核廃棄場敷地選定のための公募を再度発表するとともに、プアン事態による地域共同体の破壊と葛藤に対して謝罪したところである。しかし、民主的手続きを強調し、住民の受容性を優先するという産業資源部の主張からはすでに外れたものとなっている。
反核国民行動は、いまだにプアン事態から社会的教訓を得られない産業資源部の推進政策に対して憂慮を表し、社会的合意を成しながら進むゆるやかな歩みこそがこの問題を解決できる最も速やかな方法であることを、いま一度強調する。     2005.7.13 反核国民行動

*マ・ギョンマンさんは、6月3〜8日、台湾で行われたノーニュークス・アジアフォーラムに参加し、ランユ島核廃棄場の訪問報告を韓国で発表しました


慶尚北道庁は無責任な発表による世論の眩惑を中断せよ

−慶尚北道戦略産業企画団、根拠となる資料も明らかにできずに
「3兆6千億ウォンの経済効果」と世論を惑わす−


最近、慶尚北道と慶尚北道戦略産業企画団は、核廃棄場の地域誘致にともなう経済波及効果が3兆6千億ウォン〈註:1ウォン=0.11円〉に達すると発表した。慶尚北道戦略産業企画団は、地域経済への波及効果の分析によってこのような結果が導き出されたとし、政府がすでに提示している直接事業(韓水原本社の移転、陽子加速器、3000億ウォンの支援金、搬入税)だけを考慮したと明らかにした。

反核国民行動は、核廃棄場誘致の意図自体で地域共同体を崩壊させる激しい論争が行われる状況において、慶尚北道戦略産業企画団の検証されてもいない不確実な主張は、地域世論をごまかすためのものだと判断する。慶尚北道と慶尚北道戦略産業企画団は、反核国民行動の度重なる算定根拠の公開要求に対して、担当者の休暇を言い訳に算定根拠を公開しないでいる。また慶尚北道戦略産業企画団のチャン・ネウン団長は、反核国民行動との電話でのやり取りにおいて「敏感な時期であるから、結果を公開することはできない」と、算定根拠が公開できない理由を明らかにした。

核廃棄場誘致の賛否に対する地域社会の尖鋭な対立と社会的葛藤の拡大を未然に防止し、地域住民の公正な判断を導くための客観的情報は当然公開されなければならない。慶尚北道戦略産業企画団は、自らの研究結果に対し公正なものだと判断するならば、公開できない理由はない。反核国民行動は、慶尚北道と慶尚北道戦略産業企画団が地域世論と住民を眩惑させる策略を中断し、研究結果の明確な根拠を提示することを促す。

また慶尚北道戦略産業企画団は、産業資源部と慶尚北道が共同支援する研究機関であり、今回の報道資料も慶尚北道名義で発表された。慶尚北道の担当者は、「自分たちは専門家ではないので算定根拠も持っておらず、 内容もよく知らない」としながら、今回発表の資料を地域誘致活動のための広報資料として今後活用する計画を立てており、激しい論争が続けられている。反核国民行動は、今回の事態が「地方自治体が核廃棄場誘致のために根拠のない世論糊塗作業を行っている」という点を明確にさらけ出したものと判断し、即刻中断を促す。

最後に反核国民行動は、慶尚北道の無分別な核廃棄場誘致活動と地域世論糊塗作業を中断させるために、力強く闘争することを明らかにする。

2005.8.5 反核国民行動 (健康社会のための薬剤師会 / 健康社会のための歯科医師会 / 慶州核廃棄物処理場反対汎国民対策委員会 / キリスト教環境運動連帯 / 労働健康連帯 / 緑色未来 / グリーン・コリア / 緑色評論 / 文化改革のための市民連帯 / 民主労働党 / 民主労総 / 釜山反核連帯 / 仏教環境連帯 / 社会党 / 三陟核廃棄場反対闘争委員会 / 城南市民の集い / 新コリ核発電所建設反対蔚山汎市民対策委員会 / エネルギー対案センター / 霊徳核廃棄場反対闘争委員会 / 蔚珍核廃棄場反対闘争委員会 / 円仏教天地報恩会 / 人道主義実践医師協議会 / 全国農民会総連盟 / 全国保健医療産業労働組合/ 真の医療実現のための青年漢医師会 / 参与連帯 / 天主教釜山教区正義平和委員会 / 天主教環境連帯 / 青年環境センター / 平和を作る女性会 / 青い平和 / 学術団体協議会 / 韓国教会女性連合会 / 韓国労総 / 韓国仏教環境教育院 / 韓国女性団体連合 / 核廃棄場反対群山対策委 / 核廃棄場反対靈光郡民非常対策委員会 / 核廃棄場反対浦項対策委 / 環境と公害研究会 / 環境運動連合 / 環境正義市民連帯)


核廃棄場誘致に公務員が大挙動員され不法行為

グリーン・コリア、環境運動連合、民主社会のための弁護士会 等、市民・社会団体は8月4日の記者会見で、「自治体公務員の核廃棄物処理場推進・違法事例調査結果報告書」を発表し、最近政府と各地方自治体が進めている核廃棄場推進の問題点を告発した。

この報告書は、イ・ドグ弁護士(民主労働党 人権委員会委員長)、パク・テヒョン弁護士(環境運動連合 環境法律センター)、ハ・スンス弁護士 等で構成された民間法律調査団が、核廃棄場の誘致予定地域を直接訪問し、調査・作成したものである。

この報告書によれば、地方自治体の公務員が公正でなければならない住民投票に偏向的に介入する不法行為が蔓延していることが明らかになった。

報告書は、「このように公務員が動員されたことは、明確に住民投票法に違反」と指摘した。
住民投票が実施されることが客観的に予想される時期に、地方自治体の長が特定の懸案に対して情報提供をしたり広報することは、つまり特定の立場を支持する行為になり、投票事前運動と公務員の投票(選挙)運動を禁止している住民投票法 第21条の規定に違反するというもの。

自治体予算で賛成側に支援……公務員が街頭宣伝まで


この日公開された報告書を見ると、地方自治体の公務員等の核廃棄場誘致のための活動は、とくに、群山、プアン、慶州、浦項 等で甚だしいものがあった。

群山市の場合、群山市庁内に「国策事業推進団」を構成した後、6月には3億6500万ウォンの予算まで策定した。プアン郡も6月、核廃棄場関連施設の見学などのための費用として1億ウォンを策定し、慶州市の場合には市議会が7月、12億ウォンを核廃棄場誘致団体に支援する予算を通過させた。

これら地域では、公務員らも大挙、核廃棄場誘致に動員された。5月には群山市の公務員約1300人のうちの半数を越える669人が、「原子力を正しく理解し愛する公務員の会」を創立し、核廃棄場誘致を広報するための街頭宣伝を数回にわたって行ったことが確認された。浦項では、住民たちから誘致申込書を受けるための懐柔作業に、該当地域に縁故を持った公務員らが動員される事実もあった。

この他に群山市教育庁は、管内83の小・中学校に公文書を発送し、前・現職教職員95人が平日に外国の核廃棄場の施設を見学できるようにしたり、国立・郡山大学は各単科大学(学部)ごとに、学生らを対象に核廃棄場の安全性についての特講まで実施した。慶州市も、邑・面・洞事務所(町村役場)で、住民らが参加するなか、韓国水力原子力(株)の広報冊子を配布、核廃棄場誘致のための説明会を開催した。

産業資源部「公務員の広報行為は適法である」

だが、こうした主張に対し産業資源部は、「公務員の核廃棄場の広報行為は適法である」という立場を曲げておらず、今後、核廃棄場選定過程の公正性についての激しい論議が続く見通しである。

産業資源部は4日、「産業資源部長官が住民投票の実施を要求して自治体の長がその事実を公表する以前には投票運動をすることができる、という中央選挙管理委員会の有権解釈(主に法などに対し国家機関が公式的におこなう解釈)があるのみならず、自治体の公務員の広報活動も違法なものではない」と強く反駁した。
                    (カン・ヤング記者・韓国環境運動連合HPより)


慶州市民を踏みつけて提出した誘致申請が
住民意思といえるのか?


本日(8月16日)、慶州市は、産業資源部に核廃棄場の誘致申込書を提出した。この間、慶州市と市議会は、12億ウォンにものぼる巨額の金を国策事業誘致活動費の名目で予算として策定し、地域で誘致活動を展開してきたところである。地域住民の意見一つ一つまで聞くという宣伝文句とは異なり、巨額の金を地域にばら撒いて地域住民を惑わせる旧態依然の核廃棄場誘致活動をそのまま行っているのである。

そのような中の8月12日には、核廃棄場に同意する案の市議会通過の不当性を主張していた地域住民らを、市会議員らが殴りつけ、足で踏みつけたあと議会本会議場に入場するという史上始まって以来の事件まで引き起こしながら、政府の日程に合わせた核廃棄場の誘致活動を進めている。政府がこの間しきりに強調してきた、「民主的手続」と「意見聴取」は影も形もなく、「金権選挙」、「武力動員」の20余年間の旧態が私たちの前に再び繰り広げられている。

このような状況であるのに政府は、「過去と異なり地方自治体の呼応が良い」としたうえで、「(既に市議会で同意案が通過した)群山・慶州以外にも誘致申請地域がより多く出てくることを期待する」という発言に終始している。これらの地方自治体が核廃棄場誘致申請と関連した活動を行っていることが、果して住民たちの意思に沿ったものなのか? 数億ウォンずつの広報費を注き込んだうえで行ったアンケート調査、公務員組織を動員した誘致活動、最小限の住民同意もなく一方的に進められた掘削調査、そのどれひとつを見ても、「住民意思」や「民主性」とはかけ離れたものだ。このような中で「今回こそは民主的だ」などと言うのは、あたかも「手のひらで空を覆う」行為に過ぎないであろう。

今回の慶州市の誘致申請を契機に、いくつかの地方自治体が付和雷同するものと予想される。しかし、それらの地域でもやはり住民たちの意思に反した活動を繰り広げているのである。3000億というお金と各種の気前の良い公約で地域住民を惑わせながら、住民意思をどのように確認するというのか?

政府は今からでも信憑性のない世論調査結果と金権を動員した広報活動を即刻中断するべきである。また、あたかも民意を反映したかのような、「語不成説(話が理屈に合わないこと)」に他ならない発言をやめ、きちんとした地域意思を聞くための作業をするべきであろう。

われわれは、今回の慶州の誘致申請を契機に、政府の「金権・官権」核廃棄場誘致活動が中断されるまで、さらに強力な方法で政府の核廃棄場選定過程の不当性を明らかにしていくつもりだ。また、われわれは、政府の核廃棄場選定過程の不当性を知らしめ、この手続きが進められないよう力強く闘争する考えである。           2005.8.16.  反核国民行動




ノーニュークス・アジアフォーラム通信 No.75もくじ

No.75(05年8月20日発行)B5版32ページ   

●韓国・核廃棄場強行政策に抗して(反核国民行動ほか)            
●台湾・蘭嶼人の新たな悲劇―原子力委員会の罠           
●教科書問題・韓国からの意見広告(アジアの平和と歴史教育連帯)     
●北東アジア非核地帯と六ヶ所再処理工場(野川温子)        
●フィリピン・バターン原発閉鎖について(今井なおこ)           
●イラク世界民衆法廷・最終判決
               

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