ノーニュークス・アジアフォーラム通信No.72より

IAEAの改革に関する
国連への要望


昨年10月1〜2日にリンツ(オーストリア)で開催された国際シンポジウム「原子力平和利用の嘘――核兵器と原発はひとつのコインの裏表――」で、国連事務総長に宛てて次のような書簡を送ることが決まりました。現在世界で95団体がこの書簡に署名しています。

リンツシンポジウムの参加者は、核兵器と原子力発電の間には分かちがたい関連性があることを認識しました。原子力を推進しながら核不拡散を追求する体制には欠陥があります。この書簡の草案は、アレクセイ・ヤブロコフ教授(ロシア)とウダヤクマール博士(インド)によって書かれました。

この書簡は、ビキニ水爆実験の日、3月1日以前に、署名とともに国連事務総長に送り、それとともにコピーをIAEAとNGO、さらに各国国連代表に送られる予定です。    
                            
              大庭里美(プルトニウム・アクション・ヒロシマ)

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IAEAの任務からの原子力推進削除
の要望


国連事務総長様
CC: 国際原子力機関、各国国連代表、報道関係、およびNGO各位

原子力推進をIAEAの任務から削除してください!

以下に署名した私たちは、原子力推進に関連した国際核不拡散体制の切迫した欠陥について注意を喚起したいと思います。

今日、原子力と核兵器の否定しがたい不可避な関係のために、多数の国が核兵器獲得可能となっています。その構想が生まれて以来、核不拡散条約とIAEA 保障措置による現存の核不拡散体制は失敗してきています。

「アトムズ・フォア・ピース(原子力の平和利用)」と「アトムズ・フォア・ウォー(戦争のための原子力)」とは、互いに分かちがたく結合しており、それがイランや北朝鮮のような現在の危機的状況をもたらしてきたという事実は、国際社会におけるこのような憂慮を引き起しています。

IAEAは、その主目的が核兵器の拡散防止であるとしていますが、「最近暴露された核物質と装置の闇市場によって明らかなように、輸出管理体制は失敗し」、「核燃料サイクル技術の危険な拡散」を認めています。IAEA がはっきりと述べているように、現在の核不拡散体制の下では、非核保有国がウラン濃縮や再処理技術を持つこと、あるいは核兵器級核物質を取得することはまったく違法ではありません。もし、ある国家が核燃料サイクルの能力と高度な工業的産業基盤を全面的に発展させ、核不拡散の約束を破棄する決定をしたならば、その国は数ヶ月以内で核兵器を製造することができるでしょう。

最近IAEAは、これらの脆弱性を解決するために、兵器使用可能物質および使用済み燃料と放射性廃棄物を多国間管理の下におくことが必要であり、そういった多国間の取り組みがコスト、安全性、安全保障、および不拡散の面で有益であろうということを認めています。これまで核兵器の拡散防止その他さまざまな重大問題を解決できなかった同じ多国間の取り組みによって、このことが達成されるかということは明確ではありません。

IAEAによる失敗は公けに自認されるところであり、そのことによって国際核不拡散体制の総点検を求める声が高まっており、以下に署名した私たちは、この要求を支持するものです。

目下核関連機関は、説明責任も、透明性も、大衆的な議論もなく、国家内国家として機能しています。とくに、予算の分野において強く支配しています。そのような慣習を続けさせているのは、公共の利益のためではありません。市民社会は民主主義的権利と人権の侵害を経験してきており、貴職がこれらの問題について国連機構内部での議論を開始し、国連の最重要人物として進んでそのような議論に参加されるよう要望いたします。

私たちの目的は核技術のない世界であり、これを達成するために私たちはIAEAの任務から原子力推進を除外し、それに代わってすべての(軍事用および民生用の)核施設、物質を効果的に管理する機関を置くことを提案します。

私たちはまた、新たに再生可能エネルギー推進のための国際再生可能エネルギー機関(International Renewable Energy Agency)設置を支持します。再生可能エネルギーは今日すでに、環境を破壊する危険な核と化石燃料エネルギーとの代替が完全に可能となってきています。太陽は現在の地球表面における全消費エネルギーの7000倍のエネルギーを供給するのです。10〜20年以内にクリーンで再生可能なエネルギーによる電力供給を地球的に可能にするかどうかという問題は、技術ではなく政治的意思にかかっています。

誠意をこめて。

(訳:大庭里美)

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