声明   イラクへ派兵するな!

そもそも現代における戦争は、戦闘行為により経済的利益を受ける兵器・航空機・重工業などの産業体と、それらと結託する政治により引き起こされてきた。

ブッシュの米国は、自らが育てたアルカイダそしてイラクと戦闘を続けているがそれは偶然ではなく、戦争そのものが彼らの目的だという必然による。

自らの経済的テリトリー、つまり金儲けの対象となる地域を拡大するために、ブッシュの米国はイラクに戦闘をしかけ、兵器産業を栄えさせ、おまけに石油を手に入れる。そして徐々にその勢力を拡大させ、アラブ諸国全域をそのテリトリーとする。それが彼らの計画だ。

日本がそうした米国と同盟を結んでいながら、諸外国から同一視されることをかろうじて防いでいたのは、国外で兵力を使用しないことと、おおっぴらには兵器輸出を行わないことだった。しかし、今、米国への追随をつづけ、そのいずれをも、覆そうとしている。

私たちは、そのような行為を断じて許すことはできない。

特に、核に関する問題を追及してきた私たちには、劣化ウラン弾の問題を見過ごすことはできない。

湾岸戦争で使われた劣化ウラン弾によってすでにイラク国内では、子供たちを始めとした多くの人々が健康被害に苦しんでいる。今回のイラク戦争における使用量はその十数倍にも及ぶと言われている。

イラク国民の解放のためと言いながら、無差別に、しかも永久に緩慢な死を強いる放射能兵器は、最悪の「大量破壊兵器」と言わざるをえない。  

今回陸上自衛隊が派遣される予定のサマワでは、米軍が使用した劣化ウラン弾が発見されている。米軍は、問題になる量ではないと言ってはいるが、そもそも今回イラク戦争で投入した劣化ウラン弾の総量すら明かにしていない米国の説明に説得力はない。派遣する軍隊の被曝が議会でも問題化したオランダの民間の調査団体は、サマワでも大量に使われた可能性を指摘している。
自衛隊がイラクに派遣されれば、隊員が被曝する恐れは十分にある。超微粒子となった劣化ウランよる被曝の影響は、体液を通じてその配偶者やその子どもにまで及ぶという報告も出始めている。ところが、驚くべきことに、日本政府はいまだにイラク戦争で米軍が劣化ウラン弾を使ったことすら正式に認めていない。

常日頃政府は、国民の生命・安全に責任を持つと公言しているにもかかわらず、今回の自衛隊の派遣は、無責任という以上に、積極的に、しかも、いたずらに隊員やその家族の生命・健康を危険に晒すことになるだろう。

日本政府は、この最悪の放射能兵器の影響に目をつぶるべきではない。核兵器としての残酷さを直視し、国際的に使用を禁止する為に汗を流すべきである。日本が被爆国であるということだけでなく、原子力発電を所有する日本の電力会社のほとんどが、米国のUSEC社に核燃料の加工を委託しており、その過程で生ずる廃棄物の劣化ウランを無償で米国に提供しているという点からも、日本の倫理的責任は無視できない。この核廃棄物の発生責任は日本にあり、それが劣化ウラン弾やバンカーバスター等の兵器に転用されていないと証明することは不可能だからである。

日本政府が今イラクの復興のために最初に着手すべきことは、米軍の占領政策に加担し、自衛隊を派遣することではない。まず米国に劣化ウラン弾の被害を認めさせ、イラクの被害者に対して補償させることである。そして、一刻も早く既に拡散しつつある放射能の除染作業と健康被害者の救済を行うべきである。

日本は、侵略戦争・植民地支配でおびただしいアジアの人々を殺し、苦しめた。
二度と戦争しないこと、二度と他国に派兵しないことを誓い、アジアの人々との友好と信頼を築こうとしてきたのではなかったか。
アジアの敵になってはいけない

2004年1月15日 ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン

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