ノーニュークス・アジアフォーラム通信No.128より

台湾人に感謝します
― 絶食を停めるにあたり皆様にお伝えします


                                林義雄



親愛なる皆様

 私は4月15日から絶食を宣言し、台湾人民に「積極的で有力なあらゆる方法をとり、政府に、第四原発建設停止を催促しよう」と呼びかけて以来、この半月のうちで全国各地の多くの見知らぬ人々、また、親しい友人たちが熱烈に関心を持ち、声援してくださり、ひいては私の健康のために憂いてくださりました。

 反原発団体、市民団体は、全力を尽くして色々な行動を起こし、非常に多くの新世代の市民が積極的に参与し、強烈な「第四原発建設阻止!」という意志を示すためだけに、毅然と残忍な国家暴力に耐えました。政治団体もそれに後れをとらず、民進党の蘇党首もあちこち駆け回り、第四原発建設停止方案のコンセンサスを探し求めました。国民党内で良識を持つ人も、言葉や行動で第四原発反対の訴えに呼応しました。

 これら全ての、郷土を守る熱心さを見て、私は深く感激しました。

 この広大で前代未聞の「第四原発建設阻止!」の声に直面して、現在の権力者は初めて民意の圧力のもとで、「全面的に第四原発の工事を停止する」と宣言しました。これは反核運動の段階的成果と言えるでしょう。

 しかし権力者は、諦めきれず、「工事の停止」は「建設停止」ではないとする言葉のゲーム遊びをし、立法院(国会)の監督の回避を企み、建設続行を狙う伏線を敷きました。

 「民主を確実に履行せよ」との訴えに対して、政府が国民投票法の改正を拒むという愚かで頑なな態度は、「広大な人民の持続する揺るぎない闘争こそが、未来の唯一の路である」ということを我々により一層わからせました。

 サービス貿易協定から第四原発まで、権力者の全ての作為は、市民社会の強大な抵抗に遭い、ひいては軽視までされています。

 少しでも政治観察力を持つ人であれば、現在の権力者には少数のお供しかおらず、どこであっても人民を敵にしている無道の君主であるということがわかるでしょう。

 このような権力者に対し、彼らが台湾の民意に符合する良いことをするなどと空想する必要は全くありません。我々が努力しなければならないのは、彼らが引き続き台湾の民主を殺害し、台湾の主権を売り渡すことを阻止することなのです。

 この数か月のあらゆる抗議行動で、台湾人民がすでに普遍的に覚醒したことがわかります。

 もし、この覚醒を、有効に組織し適切な方法で鍛えれば、人民の主権者としての意識および大衆の闘争能力を高めることができ、誰も止めることのできない力となるでしょう。

 この力があれば、現在の権力者のやり方は通用せず、未来の台湾に、民意を軽視する独裁者はもう出現できないようにできるでしょう。

 人民をエンパワーメントするには、決心、意志および勇気が必要ですが、個人の時間、精神、私欲の享受を犠牲にしてしまいます。これは当然長くて辛い路ですが、近いうちに私たちは以下の2つのことを努力してすることができます。

一、身を入れ時間と精力をかけ自分の闘争能力を鍛える。台湾の民主と主権を守ろうとしている人と積極的に交流し、切磋琢磨し、闘争方法を研究し、お互いに信用し仲を深め、さらに強い能力を具え、より有効な抗議行動を行なう。

二、下記の行動で実質的に闘争能力を鍛える

1. 立法院に「公民投票法」の修正を要求する。署名の条件が過度に高すぎること、投票結果の計算が不合理であること、審議委員会の設置などを提案することを含む。

2. 立法院で「自由経済模範区特別条例」が通過することを阻止する。

3. 全国「市民憲政会議」を招集し、憲法改正をすすめる。

4. 2014年末に行なわれる選挙と来年の立法委員、総統選挙の際、立候補者に「非核国家」を促進することを承諾させる。

 第四原発はすでに工事停止を決定しました。工事が再開せず、「第四原発建設停止」がイシューでなくなるならば、反原発運動家は、第一・第二・第三原発の廃炉に力を尽くすことができ、台湾を愛する多くの人民は、台湾の民主および主権を守ることに専念できます。  

 私は現在の権力者に何の期待もしていないため、彼らに要求をすることを重視していません。そのため絶食の目的は、「台湾人民に、積極的で有力な方法で力を現わしてもらう」ことにありました。

 この半月の台湾人民の素晴らしい行動は、前例のないものであり、非常に感動的なものでした。私は深く感激しました。台湾人民の真摯な関心に応えるため、私は絶食を停止し、余生は台湾人民と共に台湾の民主と主権を守ることに尽力し、並びに危機が再来する際には、全てを捧げ、全ての台湾人民と共に奮闘することを誓います。

 あらためて親友の関心と支援に感謝いたします。
                
 2014年4月30日 林義雄
                                   (訳:ぅきき)

<断食する林義雄さんに届けたメッセージ>

林義雄先生へ

 非核亜州論壇(No Nukes Asia Forum)の日本事務局の佐藤大介です。
 2002年9月、第10回非核亜州論壇で、林義雄先生に開会挨拶をしていただきました。

 2003年9月には、菅井益郎教授、酒井亨さんとともに、林義雄先生の自宅を訪問させていただきました。私が、「貢寮の人たちは、全国での公民投票では、負けるかもしれないと心配しています。もし負けたら次にどうしますか」と質問したら、林義雄先生は、「また再び、公民投票を行なう」と、きっぱり言いました。林義雄先生の、原発に反対する思い、民衆への信頼、民主主義の希求、そして、確固たる信念を感じました。

 私たちは、1996年から8年間、日本から台湾への原発輸出に対し、署名運動、不買運動、集会、国会での質問、株主総会参加、政府との交渉など、さまざまな反対運動を展開しましたが、力が足りず、東芝・日立の原子炉が輸出されてしまいました。とても申し訳なく思っています。

 しかし、いま台湾の民衆が立ち上がっています。彼らは必ず第四原発を廃止するでしょう。非核台湾を実現するでしょう。

 私たちも、非核日本を実現するために尽力します。また、東芝・日立・三菱は、トルコ、インドなどへの原発輸出を狙っていますが、私たちは、それを阻止し、非核アジア、非核世界を実現したいと思います。

 その日まで、林義雄先生や台湾のみなさんとともにがんばりたいです。

.映画[こんにちは貢寮]プロモーションページ
http://www.stopnukes.org/gongliao/

 
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ノーニュークス・アジアフォーラム通信 No.128 もくじ

                     (14年6月20日発行)B5版20ページ

● 5万人が台北駅前を占拠 
   ― 馬英九政権「第四原発、稼動・工事凍結」を宣言 ―  (陳威志)      

● 台湾人に感謝します
       ― 絶食を停めるにあたり皆様にお伝えします (林義雄)

● 断食する林義雄さんに届けたメッセージ                    

● 川内原発「再稼働」反対!
     ― 県議会開会日、県庁前集会に1100人 ― (杉原洋)           

● 三菱が原発を輸出しようとしているトルコ・シノップで1万人デモ
    「幸福なシノップに原発はいらない」  (ルファット・ドーアン)      
 
● サムチョクに希望を見出すも、脱原発の政治イシュー化には遠く (高野聡   

● 顕在化するインドネシア・バンカ島の原発建設計画  (遠山勝博)  

● インド・クダンクラム原発反対運動(15) 

● 福井地裁・大飯原発差し止め判決! 「原告の一人として」 (水戸喜世子)

● ノーニュークス・アジアフォーラム関連 Ustreamアーカイブ (中島貫) 

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