ノーニュークス・アジアフォーラム通信No.115より

インド・クダンクラム原発反対運動(4)

 昨年8月、日本でのNNAF2011に参加したウダヤクマールさんが帰国した直後から、クダンクラム原発の稼働を阻止するための大規模な闘争が半年以上続けられてきました。

 しかし、状況は急激に緊張の度合いを増しています。これまで原発稼働に慎重だった州政府が3月中旬に突如として方針を転換し、中央政府の要請通り、稼働を許可してしまったのです。クダンクラム原発の周辺は武装した警官隊に包囲され、封鎖された地域では自由な出入りや食料、電力、医療などが遮断されました。そして、反対運動のリーダーたちに対して逮捕状が出されたのです。数万人の武装警官隊が投入される緊迫した状況の中で、クダンクラム原発に反対する人々は無期限ハンストに突入、警察は次々に反対派を逮捕するなど弾圧を強めています。



 以下、ウダヤクマールさんからのメール、PMANE(People's Movement Against Nuclear Energy)の現地報告より

2012年3月20日

 昨夜クダンクラムで、18人の男性が警察によって逮捕された。また、5000人の老若男女が抗議の意を表明してセントルーデス教会の周辺で夜を明かしていたが、道端で平和的に抗議していたにすぎないのに、教区の神父を含む185人が逮捕された。彼らはティルネルヴェリの拘置所で拘束されている。これとは別に、シヴァスブラマニアン氏やラジャリンガム氏など、われわれの闘争委員会のメンバーを含む9名も逮捕、告訴された。彼らがどこで拘束されているかはわかっていない。また、主要な活動家であるムヒラン氏も、イディンタカライに行く途中で逮捕されてティルネルヴェリで拘束されている。

 警察は法律を拡大解釈し、「いかなる集会も認められない」として厳重に取り締まっている。クダンクラムの周辺では歩き回ることすらできない状態である。それほどの妨害にあいながらも、人々はボートで、あるいは徒歩で、イディンタカライに集結しつつある。

 これは警察による職権乱用であり、警察が平和的に行動する市民をこれほどまでに弾圧するということは、極めて激しく非難されるべきことである。プシュパラヤン氏と私を含む15名(男性8人、女性7人)は、これに抗議してイディンタカライにおいて19日から無期限ハンストに突入した。我々の要求は以下のとおりである。

1. 逮捕した人々を即時釈放すること

2. タミルナドゥ州政府の決議を撤回すること

3.クダンクラム原発の安全性に関して、地質学者、水理学者、海洋学者による徹底的で完全な探査を行うこと

4. 2008年2月にインドとロシアの間で秘密裏に結ばれた政府間合意を放棄すること

5. クダンクラム原発から半径30キロ圏内で安全訓練や避難訓練を行うこと

 タミルナドゥ州の人々は、タミル人のコミュニティに対して行われているこうした弾圧に気づくべきである。インドの人々は、これほど人口稠密な国で核の悪夢が差し迫っているということに関心を向けるべきである。世界の人々は、巨大原発プロジェクトがいかなる情報公開もないままに暴力的な手法で我が国の人々を苦しめていることを、しっかりと目をそらさずに直視するべきである。このようなファシスト的な開発は、我が国を新たな「東インド会社」とネオ植民地主義に連れていくだろう。

 どうかお願いです。警察による暴力行為と核の狂気を非難し、我々に対する連帯の意を表明するために、あなたにできる行動をとってください。

3月25日

 無期限ハンスト開始から7日目。私たちは体力が落ちて疲れているが、まだ座ったり話したりすることはできる。中央政府はおろか、州政府からも、われわれに会いに来たり対話しようとしたりする動きはない。23日には、医療チームが健康チェックに来てくれた。しかし、3月19日以来1万人の人々がここイディンタカライに結集しているというのに、公衆衛生に関わる行政スタッフは姿も見せない。イディンタカライの友人たちが、集まった人々に食事を作って提供してくれている。警察は、私やプシュパラヤンが病に倒れるのを待っている。民衆の輪から出て私たちが治療のため病院に行けば、そこで私たちを逮捕することができるからだ(訳注:リーダーたちを守るために、1万人もの人々が彼らを取り巻くように座り込みを続けている)。我が国の政府は、ここまで冷酷で反人民的になれるものなのだろうか。

 人々の力か、核の力か? 道徳の力か、カネの力か? 市民の力か、国家の力か? あなたはどちら側に立つのか?
タミルナドゥの人々よ、インドの人々よ、考えてほしい。

3月27日

 多くの友人たちが、死に至るような無期限ハンストをやめるよう私たちに懇願し続けてくれている。私も含めてハンスト参加者は疲労困憊している。3人の女性が失神して病院に運ばれた。私は腹痛と頭痛に悩まされている。政府の医療チームが健康チェックを行い、私は脈拍が弱まっていると指摘された、医療チームは私に、近くの病院に行くよう勧めたが、私は拒否した。

 われわれは政府に対して対話を求めていた。9日が経って、やっと地方長官と議論できることになった。人々は10人の代表を選んで、長官との会談に備えている。

 その一方で、クッタプリ村ではさらに重い罪状で178人が告訴されている。拘束中に、さらに重い罪状で再逮捕された者もいる。インド政府は、国中で反原発、反グローバリゼーション、その他のあらゆる反政府活動を破壊し、「教訓」を思い知らせようとしている。

3月27日夜

 私たちは、9日間にわたった無期限ハンストを終了した。信頼できる仲介者が、タミルナドゥ州政府と交渉を持ち、不当逮捕されたすべての仲間の釈放と、でっちあげられた事件による起訴をすべて取り下げることに合意したからだ。

4月1日

 PMANEは、3月27日に信頼できる仲介者の働きにより、州政府との交渉に入った。州政府は、不当逮捕された人々の釈放や起訴の取り下げを約束した。

 しかし、治安妨害罪などの重い罪状の者の起訴は取り下げられていない。地元民を脅迫するために動員された人間は数千人に上るとされる。村人たちは恐怖の中で生活し、外出することすら恐れている。タミルナドゥ州は今も、主要な活動家を全員逮捕するつもりであると表明している。

4月5日

 クダンクラムの男性が警官に暴行を受けて重傷を負う事件が発生した。抗議行動に連帯して店を閉めるよう、ある店の店主に依頼したことが原因であった。男性は顔と胸に大けがを負った。さらに警察による妨害が激化するのではないかと懸念される。

 沿岸のクッタプリ村の148人が釈放された。釈放された人々は、英雄さながらに喝さいを受けて村へ帰った。

 今日はリレーハンスト161日目だ。160日目だった昨日は、あちこちから支援者が集まり、数千人がハンストに加わった。

4月16日

 クダンクラム原発の反対運動のハブとなっているイディンタカライでは、緊張が高まった。ヴィジャヤパティ・パンチャヤットの長の夫とその兄が、ギャングによって襲撃された。

4月23日

「PMANEは5月1日から無期限ハンストを再開する」

 PMANEは、メーデー(国際労働者の日)から再び無期限ハンストに突入する。3月27日にわれわれがハンストを終了したのは、仲介者を得て当局と交渉し、次のような合意に達したからであった。

・すべての逮捕者を無条件に釈放する

・治安妨害罪などの重罪を含めて、でっち上げによって告発された人々の起訴を、すべて取り下げること

・地質学、水理学、海洋学などの専門家による独立した全国委員会を立ち上げること

・インドとロシアの間で秘密裏に取り交わされた政府間合意の内容を公開すること

・クダンクラム原発の放射性廃棄物の処理と管理に関する情報をすべて公開すること。

・われわれ人民が、平和的に、そして非暴力によって、クダンクラム原発に対して反対し続ける権利を尊重すること。

 すでに1か月がたとうとしているのに、この約束の一つたりとも履行されたものはない。2011年12月末までに56000人以上が逮捕、告訴された。6000人は、治安妨害罪に問われている。保釈された人々は遠方の警察まで毎日出頭することを求められ、仕事もできずに困窮している。

 これまでのでっち上げの起訴が取り下げられないばかりか、ついにはPMANEのリーダーたちに対して、「殺人未遂」事件でのでっち上げまでが起きている。

 ウダヤクマールさん




ノーニュークス・アジアフォーラム通信 No.115もくじ

                        (12年4月20日発行)B5版24ページ

●第15回NNAF in韓国 報告

  ダイジェスト(高野聡、功能大輔、胡桃澤伸)               
  
  共同声明                               

  NNAFに参加して (黒田節子、うのさえこ、村上正子、渡辺美紀子、石原燃、
                  胡桃澤伸、渡田正弘、前川武志、豊田直巳)  

●インド・クダンクラム原発反対運動(4)


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