ノーニュークス・アジアフォーラム通信No.113より

インド・クダンクラム原発反対運動(2)



● クダンクラム反対住民、2日後に首相と会談
                                 (The Hindu 10月5日)

 タミルナドゥ州のクダンクラム原発に反対する住民運動の代表団が、10月7日に首相と会談してプロジェクトの問題点について議論することになった。住民側は、原発の稼動が延期されないなら、9日から抗議行動を再開させ、全国規模に広げていくとしている。

 リーダーのウダヤクマール氏は、「あさってニューデリーに行き、首相と会談する。われわれは10人の仲間たちと話し合いに臨む。政府側からも同じ人数だけ会談に参加するだろう」と語る。

 先月の反対運動では、127人のイディンタカライ村民が12日間の断食をし、連日数千〜1万人の人々が抗議デモを行った。

 9月22日、住民の不安が解消されるまで原発での作業を中断することを州政府が決議した。州政府はさらに、住民代表たちと首相との会談を約束した。
127人の村民による断食は撤収された。
 
● クダンクラム原発問題で、反対派がシン首相と会談
                                  (The Hindu 10月6日)

 反対運動を率いるウダヤクマール氏は、「首相が原発賛成の立場であることはわかっている。しかし明日彼と会談して、われわれの要求を突きつけ、事態がどのように展開するかを見ようと思う。もちろん、この会談が解決に直結することを望んでいる」と述べた。

 10月9日に抗議行動を再開させると予告していることについては「会談の結果がどのようになろうとも、その報告をしなければならない。9日には必ず人々が結集することになる」

 シン首相は、「タミルナドゥ州の賢明なリーダーたちと膝を交えて現実的な解決策を見出したい」と述べている。しかし同時に、「核エネルギーは未来のエネルギーであり、その重要性が揺らぐことはない」との姿勢も明確にしている。

● クダンクラム反対運動再開される
                        (Indo Asian news Service 10月9日)

 シン首相との会談の内容が納得のいくものではなかったとして、クダンクラム原発に反対する住民たちはティルネルヴェリでの抗議の断食を再開した。

 タミルナドゥ州政府議員や反対派との会談で、シン首相は「今年中の運転開始が予定されているクダンクラム原発での作業は中断しない。しかし、原発に関する不安が払拭されるように専門家による委員会を結成する」と述べた。
 


● 抗議の断食に7000人以上が結集
                              (Deccanchronicle 10月9日)

 クダンクラム原発への抗議行動が再開された。シン首相との会談にも参加したリーダーのウダヤクマール氏は「断食はクダンクラム原発に対する長い闘争の始まりに過ぎない」とし、クダンクラム原発が閉鎖されないならこの闘争はさらに強化されるだろうと語った。

 活動家らは、「首相との会談が実現したことは運動にとって一つの勝利ではある。しかし、シン首相がタミルナドゥ州政府に対して原発稼働への協力要請の書簡を送ったことには我慢がならない」と主張。ウダヤクマール氏も、「あのような書簡が会談と同じ日に出されるということは、中央政府がタミル人の命などどうでもよいと思っていることの現れだ」と語った。

● イディンタカライで、原発反対1日断食が72時間断食に
                                 (The Hindu 10月9日)

 クダンクラム原発に反対する人々による1日断食は、タミルナドゥ州政府の決議を無視した中央政府を非難する72時間断食へと変容した。13の村から漁師など7000人が集結した。

 断食に参加したのは、106人、そのうち22名の女性、2名の身体障害者、3人の宗教指導者。イディンタカライのセントルーデス教会の前で行われた。

 「中央政府は傲慢にも、工事を一時中断してほしいというタミルナドゥ州政府の決議を拒否している。これまで非暴力で抗議を行ってきた私たちであるが、今後は別の形態の抗議行動に訴えざるをえなくなるかもしれない。中央政府はタミル人の強い思いを尊重して、州政府の決議を守るよう行動に移さなければならない」。ウダヤクマール氏がこのように発言し、この場で決議も採択された。

 ウダヤクマール氏は首相との会談で話し合われたことの詳細を聴衆に報告し、「クダンクラム原発の運転に関わるあらゆる活動がすべて停止するまで、徹底的に抵抗し、抗議行動を強化していこう」と語りかけた。

 しかしウダヤクマール氏が、「クダンクラム原発を完全閉鎖に追い込むには2年がかりの闘争が必要になるかもしれない」と話したときには、集まった人々の間に軽いどよめきが起こった。
 
● クダンクラム原発への抗議行動が今日再開
                                (India Today 10月17日)

 10月9日に第2ステージへと入ったクダンクラム原発に対する抗議行動は、抗議行動参加者らがそれぞれ自分たちの住む村に戻って世論調査を行うため、2日にわたって中断されていた。「民衆の権利を守るための運動」コーディネーターのシヴァスブラマニアン氏は、「100人の参加者を得て無期限断食を再開する」と述べた。

 シヴァスブラマニアン氏は、抗議行動参加者らがバスの通行を止めたり、原発建設労働者のための仮設住宅に設置されていた水道管を破壊したりしたという噂を否定した。「私たちは契約労働者が作業に向かうのを妨害していない。私たちは彼らに対して、プロジェクトに対する私たちの懸念を話しただけだ。その結果、8割の労働者が仕事に行くのをやめてしまったということだ。数千人もの女性がこのような僻地で座り込み続けているのを見たら、誰でもこのプロジェクトに反対する気持ちが真剣なものであることを感じ取ったはずだ」

● クダンクラムの抗議行動で、原発計画が6ヶ月前に後退
                                  (ProKerala 10月20日)

 インド原子力公社(NPCIL)関係者は、「激しい抗議行動によってプロジェクトの時計の針は、少なくとも6ヶ月前に戻されてしまった」と語った。作業をする労働者の多くは、すでにクダンクラムを去ってしまったし、大手の契約会社の中にも、労働者の供給を停止したいと打診してきているところがある。

 1号機は12月に運転を開始する予定であった。プロジェクト全体でかかる費用は、1300億ルピーである。関係者は、専門家委員会が結成されて反対派の人々と対話をするには、かなり時間がかかると考えている。また、ダミーの燃料でテストを行ったため、ダミー燃料を取り出すなど、本物の核燃料を装荷するにはさまざまな作業が必要になる。

 クダンクラムでのリレー断食は3日目に入った。「今日はペルマル村の人々が断食に参加してくれた。断食に連帯して、ティルネルヴェリの法律家や、ケララ州の反原発グループがイディンタカライまで来てくれた」と沿岸部民衆同盟のプシュパラヤン氏が語った。

 中央政府による専門家委員会の結成の動きに対してプシュパラヤン氏は「中央政府は、クダンクラム原発の問題点を検討する専門家委員会には国、州、反原発運動のそれぞれから推薦されたメンバーを入れると言っていた。しかし委員会にはタミルナドゥ州政府やわれわれが推薦したメンバーが入っていない」と批判した。

● 断食11日目、多国籍企業に対する抗議の手紙 
                                  (ProKerala 10月28日)

 クダンクラム原発に反対する断食が11日目に入った今日、50人の子どもたちが「各国で新たな原発建設が計画されているのはロシア、フランス、アメリカの多国籍企業による圧力のせいだ」と書いた手紙を海に流した。

 「クダンクラムと周辺の村に住む50人の子どもたちが、ロシア、フランス、アメリカの人々に対して書いた手紙を海に流した。手紙の中で、原発が建設される理由は、多国籍企業の圧力によるものだと書かれている。この手紙は郵送も配達もされない」と沿岸民衆同盟のプシュパラヤン氏は述べた。

● マドゥライからクダンクラムへ、活動家らが反原発の旅を開始 
                                   (The Hindu 11月9日)

 クダンクラム原発で地域の民衆が続けている原発反対闘争に連帯するため、約100人の反原発活動家らがマドゥライ(タミルナドゥ州中南部の古都)からクダンクラムまで、反原発を訴える旅に出発する。

 州都チェンナイに本拠地を置く「クダンクラム闘争のためのチェンナイ連帯グループ」の後援を受けた活動家の一行は、11月10日にクダンクラムへ向けて出発、途上にある都市や村で「原発がもたらす破滅的な環境及び健康への影響」について人々へ情報提供を行う。

 この旅には、核物理学者スブラット・ラジュ氏や著明な数学者のバンワリラル・シャルマ氏も参加する。


● ウダヤクマール氏インタビュー
                                 (Malayalam 11月22日)



 なぜこの運動にかかわるようになりましたか? PMANEはどのように始まりましたか?

 1980年代後半に、私は「平和なインド洋のためのグループ」を結成し、アメリカ、イギリス、フランス、ソ連などの海軍が核兵器を搭載した艦船で、ディエゴ・ガルシアなどインド洋の基地に寄港することの問題にとりくみました。そして、自然にクダンクラムの原発計画に関心を持つようになったのです。しかしこの計画は、ソ連崩壊とラジブ・ガンジー暗殺で頓挫しました。その後私は1989年にアメリカに留学しました。クダンクラム原発計画が復活して以来、メールでの情報発信をしてきましたが、2001年に帰国したのを機会に、本格的に運動に参加し、核エネルギーに反対する民衆運動(PMANE)を結成しました。

 これまで政府は、職業、宗教、地域などの違いを利用して、反対運動参加者を分断しようと画策してきました。どのようにしてそれに立ち向かい、運動の一体感を守ってきたのでしょうか?

 民衆の不安や不満を聞いたり、責任ある行動を取ったりする代わりに、政府はありとあらゆる薄汚いわなを仕掛けてきました。カーストや職業によって分断を仕掛け、何の実態も理解もない偽の支援グループをでっちあげたり、海外からの資金援助や人脈に関して事実無根の非難をくり返したりしてきました。

 それに対処するために私たちは、シンプルで率直な言葉で真実を話してきました。真実には、美しさがあり、力があります。こうしたわなは、私たちを分断して滅ぼさせるための邪悪な試みであると話しました。正直で働き者の人々は、誰が真実を話し、誰がうそを話しているか、わかるのです。

 クダンクラム原発はすでに完成しています。「いまさら運転をやめるのはお金の無駄だ、こうなる前に、もっと早く抗議行動をしていればよかったのに」などという人もいますが、どう答えますか?

 私たちはクダンクラム原発の建設予定地選定の段階から反対運動に関わっています。最初のうちは、1万人の雇用とペチパライダムからの安価な水道水、町の発展などというばら色の計画を聞かされて、村人たちは政府を信用していました。村人にとって、反対派は敵だったのです。しかし村人たちも、それらがすべてうそだったことをすでに身にしみて理解しています。インド政府も核エネルギー省も、環境影響評価などの重要な基礎データをすべて非公開としてきました。公開ヒアリングもなく、私たち反対派の声を聞くこともありませんでした。今になって、なぜもっと早くから抗議をしなかったのか、などというのは理不尽です。

 想像してみてください。愛する娘のために大金をつぎ込んで素晴らしい結婚式の準備をしたとしましょう。招待状も出してあり、食事の用意もできて、会場の飾りつけも完璧です。でも、もし結婚式の数時間前になって、娘が「彼は私を傷つけるので本当は結婚したくない」と告白してくれたとしたら、責任ある親としてはどうすべきでしょうか? せっかく準備に大枚をはたいたのだからとにかく結婚しないのはカネの無駄だと思いますか? それとも愛する娘のために、結婚式をキャンセルしますか?クダンクラム原発で起きていることはそういうことです。使ってしまったお金のことはほうっておきなさい。民衆がそれを悪いプロジェクトだと考えるなら、政府はそれを閉鎖しなければなりません。

 クダンクラム原発の建物を取り壊す必要はありません。風力などと組み合わせて、ガス発電所に転換することもできます。ハイブリッドなエネルギーパークにすればよいのです。

 あなたは闘争の結果を楽観視していますか? また、中産階級がクダンクラム原発問題に関心を持つようになることについてどう思いますか?

 はい、私はきわめて楽観視しています。タミルナドゥ州政府も私たちを支え続けてくれると思っています。また、中産階級の人々がさらに多くこの問題に関わってくれれば、インドの原子力プロジェクトがいかに、外国人の雇用を増やし、外国企業の利益を増やし、インドの政治家や官僚へのキックバックや賄賂を増やすようにデザインされているかを理解する人が増えていくことと思います。

 「民衆は無知だ。科学者次第で民衆の恐れは鎮められる」などという言葉が、反原発運動を揶揄するために言われたこともありました。どう思いますか?

 賢明な科学者と愚鈍な大衆、などという考え方は、もはや時代遅れです。原子力が傲慢を誇った時代はすでに終わりました。

 タミルナドゥ州の活動家は、タミルナドゥ州に原発が建つことに反対しているのでしょうか? 他の原発反対運動を支援する動きはありますか?

 私たちは、核も原発もないタミルナドゥ州、核も原発もないインド、そして核も原発もない世界を目指しています。私たちはクダンクラム原発から始めるのです。




ノーニュークス・アジアフォーラム通信 No.113もくじ

              
 (11年12月20日発行)B5版26ページ

●NNAF 2012 韓国で開催 (韓国エネルギー正義行動) 
            
●インド・クダンクラム原発反対運動のその後 
           
●[声明] 問題だらけのベトナム/ヨルダンへの原発輸出
              拙速な原子力協定批准に抗議 (FoE Japanほか)
   
●原発輸出を促進する日越合意に反対します
                (原発いらない全国の女たちアクションほか)

●タイ市民団体からのメッセージ   
           
●ベトナムへの原発輸出の問題点   
  
●ヨルダンへの原発輸出の問題点   
                   
●ベトナムへの原発輸出に対するこれだけの疑問 (満田夏花) 
      
●馬英九総統の原子力政策を批判する (台湾緑色公民行動連盟)  

●ソウルで長谷川公一教授の講演を聴く (高野聡)    
          
●韓国への感謝の手紙 (青柳行信・木村英人・鍬野保雄)  
          
●韓国・モンゴルの反原発運動と連帯しよう (崔勝久)  
          
●2011ウラン鉱山開発事情 (玉山ともよ)                  

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