ノーニュークス・アジアフォーラム通信No.104より

中国電力の上関原発建設と埋立てに反対する
祝島の人びとを応援する
原子力開発監視タイ民衆ネットワークの声明


祝島は日本の内海に位置し、面積7.67平方キロ、周囲12キロほどの小さな
島である。現在の島民人口は約500名で、自然に適った農業として、枇杷の
栽培、枇杷茶の生産、米作りなどを行い、重要な水産業として、蛸壺を使った
漁業、海草採り、海苔の生産などを行い、日本の島で見られる伝統的な暮ら
しを営んでいる。また、4年ごとに開催され、1000年以上も続く島の歴史を物
語る「神舞(かんまい)」という祭りでは、対岸の国東半島から船で渡ってくる
ご神霊を迎えるために櫂伝馬船などを出し、祝いの舞いを舞うなど、古代の
島民文化を今に至るまで伝えている。

祝島から約3.5キロ離れたところに位置する上関町田ノ浦では、中国電力が
約135万kWの原子力発電所の建設を計画している。29年も前に、たった3.5
キロの沖合での原発建設計画が明らかになった直後、祝島島民の大半は
計画に反対を表明した。というのも、計画は島民の営む自然な農業や漁業に
打撃を与え、とりわけ、「スナメリ」と呼ばれるクジラの一種やナメクジウオなど
の海洋生物、希少種の鳥類、絶滅危惧種のハヤブサなど、海中にあるこれら
生物の生息地に影響を及ぼすと考えたからである。祝島の周辺は豊かさをた
たえ、生物多様性に富み、実際、日本政府も瀬戸内海国立公園の一部に指
定してきたほどである。

祝島島民は30年近くも原発建設反対運動を続け、島の内外でさまざまな形態
の活動を展開するために、原子力発電所に反対する祝島島民の会を結成した。
とりわけ重要な活動として、毎週月曜日午後6時に島民たちが屋外に出て、
島の港に集合し、「原発反対」と記した鉢巻を巻いて旗を掲げ、島内各所をデ
モ行進する街頭行動がある。約30年間にわたり、1ヶ月に4度、これまでに
1,077回を数えたデモ行進では、参加者のシュプレヒコールが島中に響きわたる。

きれいなふるさとを守ろう!
原発反対!エイエイオー!
きれいな海や山を守ろう!

祝島島民たちは、島の内外で原発建設計画反対の立場を表明する集会を開催し、
中国電力が原発建設に向けた埋立てを実施するために海中にブイを設置しよう
とした際には、多数の船をくり出して現場をおさえ、ねばり強く埋立てや作業の中
止を求めた。ところが、そのたびに住民リーダーたちは、暴力的な作業妨害や器
物損壊、あるいは公務執行妨害といった名目で訴えられ、今日では多数の住民
が裁判を抱えている。

2008年初頭、中国電力は原発建設のための埋立てを始める意図で、山口県に
埋立て許可を申請し、県もこれを了承した。一方、祝島の島民たちは、島内およ
び日本全国から約85万筆の埋立て反対署名を集めて提出した。2008年10月に
住民代表が始めた、中国電力の埋立て差止め請求訴訟も係争中である。

最新の動きとして、先週、祝島での原発をめぐる紛争を注視してきたタイ民衆ネット
ワークは、祝島島民たちから、中国電力が島民や全国の市民の声をまったく無視
して、海に船を出し、原発建設のための埋立てに向けて囲いを作ろうとしていると
いう知らせを受けた。現在、島民は海と自分たちの島を守るために船を出し、中国
電力の行動に対して抗議し、海を台無しにする埋立てを止めるよう要求している。
しかし、中国電力と山口県は、原発建設のために埋立てを実施しようとしている。

タイ民衆ネットワークも、祝島島民と同様、現在、タイ政府の原発建設推進政策に
直面しており、祝島をめぐる問題の推移を島民に対する共感の目で見守るとともに、
人権やコミュニティーの権利を侵害し、島民と全国の市民の声と要求を無視して原
発建設を進めようとする中国電力と山口県の強硬な行為が引き起した事態と紛争
に対して不安を感じている。

タイ民衆ネットワークは、原発建設や埋立てが祝島島民を含む周辺の住民、とりわ
け建設地と近郊に住む漁民に直接的な打撃を及ぼし、生計喪失に至る事態を案じ
ている。漁民たちは豊かな環境自然資源を失い、また、埋立ては、瀬戸内海全体
にも影響を及ぼすだろう。

現在、祝島の島民たちは非常に緊迫した状況に直面している。原子力開発監視
タイ民衆ネットワークは、原発建設に反対する祝島の島民と日本の市民の闘いに
連帯を表明し、励ましを送りたい。また、原発建設のために海、コミュニティー、自
然資源を破壊することに反対し、中国電力と山口県に権利の侵害を止めるよう要
請するとともに、今後とも状況を注視したいと思う。

連帯の気持ちをこめて

仏歴2553年(西暦2010年)10月15日

原子力開発監視タイ民衆ネットワーク、生態文化研究グループ、
ウドンタニ県環境保全グループ、東北タイ人権平和情報センター、
コミュニティー資料センター、タイ鉱山被害住民ネットワーク、原子力ウォッチ、
パランタイ、バイオタイ財団、生態系啓発推進計画、
タイ環境正義ワーキンググループ、スリン県持続可能エネルギーネットワーク、
消費者財団、持続可能・代替開発協会、チェンマイ県地球温暖化防止ネットワーク、
生態系回復財団、鉱山資源公共政策推進計画、
北部下流域土地・水・森林資源ネットワーク、ヌンマプラーン郡開発住民機構、
ピサヌローク県民衆環境ネットワーク、社会政治改革のための住民ネットワーク、
タイ住民財団、環境法律計画、社会ボランティア財団、NGO調整委員会中部、
北部NGOネットワーク、北部下流域社会管理機構、農村開発農業改革計画、
社会のための法律家グループ、ヌンマプラーン環境保全会、
ルーイ県故郷を愛する人びとの会、ルーイ県ヒンレックファイ山を保存する会、
プレー県ソーイ川流域住民、ターク県メータウ・カドミウム被害住民の会、
ランパーン県メモ患者権利ネットワーク、パヤー推進機構、
ジェーム川流域ネットワーク、貧民フォーラム、サンティ・プラチャータンマ協会、
ウォンサニット僧院、ヤドフォン財団(トラン県)、
タップサケ保全グループ(プラチュアップキリカン県)、
ボーノーク地域を愛する会(プラチュアップキリカン県)、
バーンクルート環境と自然を守る会(プラチュアップキリカン県)、
インドシナ・ビルマ地域生態系回復プロジェクト、創造的消費プロジェクト(スラタニ県)、
南部消費者団体ネットワーク、ソンクラー消費者協会、トンクラー協会、
ウィサンゲグループ、緑の地球財団、持続的農業財団、農業保全ネットワーク(サラブリ県)、
ヒンソン山石炭火力発電所計画・影響モニタリングネットワーク(チャチェンサオ県)
持続可能性のための代替エネルギー計画(AEPS)          55団体

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