ノーニュークス・アジアフォーラム通信No.106より

第四原発の直近に断層! 日本地質学者が発見

                                緑色公民行動連盟

日本静岡県からやってきた地質学者の塩坂邦雄氏は、9月15〜17日、貢寮郷の
第四原発近辺で地質調査を行った。

塩坂氏は、第四原発の機材を運ぶための重件埠頭と澳底漁港の間で、複数の
南北走向の断層を発見した。

これらの断層は敷地からわずか1.5 kmしか離れていないのに、これまでの「環境
影響調査報告書」などの関連資料には一切記載されていなかった。

この断層帯は、第四原発の敷地を支える岩盤(大桶山層)と同一の地層で、断層
帯の密度から見れば、原発敷地の直下地層にも同じような密度の断層が分布し
ていると推測できる。

活断層でなくても、地震に襲われた際、断層のある岩盤の震度階は、通常より1〜
1.5倍高くなる。しかし、台湾電力は影響の可能性を無視しており、原発の安全性を
脅かす要素がさらに増加した。

断層がいたるところに存在する地震多発国台湾には、地震の危険性を軽んじる余
裕はない。09年11月、第一と第二原発からそれぞれ5kmと7kmしか離れていない
活断層「山脚断層」(長さ50km)が発見され、「敷地から8km範囲内に活断層は存在
してはならない」という、原発の立地選定基準は打ち破られた。このことは、原発建
設を行う際の地質調査が十分に行われていないことを立証した。

また、17日の午前、調査チームは田秋?立法委員(国会議員)の同伴で、1時間の交
渉を経て、ようやく第四原発の敷地内に入ることができた。原発の裏側の貯水池に
登っていく道の斜面で、塩坂氏は大きな断層面を発見した。古い年代の断層ではあ
るが、敷地内の断層の存在が証明でき、原発プラントの直下に断層がある可能性が
ますます高くなってきた。

日本静岡県の浜岡原発5号機で、09年8月のM6.5の地震で耐震基準以上の揺れが
観測され、原発は長期間の休止に入った。原発の耐震性が日本原子力業界の一大
課題となった今、台湾電力は依然として400ガル(第四原発の耐震基準)の数値にこ
だわり、「どんなに強い地震が来ても大丈夫」と自信満々に発言する。

最近、日本では多くの地質学者の調査によって、「原発建設のために行われた地質
調査」の間違いが指摘され、浜岡、島根、六ヶ所など多くの核施設で活断層の存在が
明らかになった。

我々は原発地質調査のやり直しを求める。大地震が発生し、断層帯に位置する原発
で深刻な被害が出る前に、政府や台湾電力は断層の問題を再考すべきである。


塩坂邦雄氏、新聞各紙や台電の公式声明にコメント

                            まとめ/緑色公民行動連盟



9月18日、新聞各紙は、「第四原発近辺で断層発見」記者会見について報道しました
が、地質調査の結果を懐疑的に見る部分がありました。また、台湾電力側から真実と
かけ離れた公式声明が出されました。これらの疑義に対して、塩坂邦雄氏は以下の
ように反論しました。

1. たったの3日間で断層発見? 台湾電力関係者は高価な機器で長い期間をかけて
原発の地質調査を行ってきたから、日本人学者の調査結果は厳密さに欠ける(自由
時報、聯合報)


「3日とはいえ、事前準備をしっかり行ってからの調査でした。訪台前、私は日本でラン
ドサットを駆使し、リモートセンシングの技術で事前に東北角近辺の地形を調査してい
ました。

調査初日、私は先に三貂角灯台近辺の高台で全体の地形を見渡し、一帯の地質構
造の特性を把握してから、澳底漁港の海辺に焦点を当て、すぐに断層の露頭を見つ
けました。

地質調査の経験者にはわかるはずです。断層は見つけようと思ってもなかなか見つ
からないものです。高い機械で長い時間をかけてやっても、結果が出ない場合もあり
ます。

調査結果を批判するなら、私が撮影した証拠写真や、実際に現場を見てきてから批判
していただきたいです」

2. 今回発見した断層は原発の安全性に影響しない?(自由時報、聯合報)

「今回は原発の敷地内外で多くの断層を発見しました。敷地内で見えた大きな断層面は、
確かに年代の古い断層です。しかし、海沿いで見つかった断層帯の性質は異なります。



漁港の防波堤のヒズミを見ればわかるように、直下にある断層は数十年の間、少しずつ
防波堤を動かしました。防波堤の建築年代は漁協に確認する必要がありますが、おそらく
30〜50年前でしょう。私は台湾電力の職員に、構造物にヒズミがあったことを話し、これら
の断層の影響を考慮したことがあるかと聞きましたが、まともな返事はありませんでした。

また、海岸で見つかった断層面は綺麗な『鏡肌』で、上に多くの擦痕が存在しています。
これは、断層が1回以上の地震の影響を受けていることの証拠です。

 鏡肌

 また、何回も申し上げますが、断層は死んでいようが生きていようが、外部からの力が
加わったら、震度階は通常より1〜1.5倍高くなります。ひび割れた氷を横からハンマーで
叩いたら、ひび割れの部分からさらに割れていくのと一緒です。活断層というのは学術上
の定義にすぎません。いかなる断層であろうが、私たちはその影響を軽視してはならな
いです」

3. 第四原発から最も近い「枋?斷層」の前回の活動時期は3万7千年前、動かない死断
層だ(台電の声明、聯合報)


「活断層の定義は国によって違いますが、十万年以内に動いた断層は、日本でも、台湾
でも、活断層の範疇に入ります。台湾電力の声明は彼らの専門性のなさを証明しました。
また、断層に『生き死に』の定義をつけるのは大した意味がありません」


★ また、台湾電力は18日に公式声明で次のように言いました。

「現場で話し合った後、塩坂先生は敷地内で見たのは断層ではなく、せん断帯だと同
意した。
一部報道で、『台湾電力は最初に断層を認めなかったが、後ほど、それは古い断層だ
と認めた』とあるが、そのようなことは一切ない」

我々はこの発言に対して最も厳しい批判をしなければなりません。塩坂氏が「左側は
水平方向のせん断帯だが、右側は縦方向の岩盤だ。左右の構造がまったく違う。断
層に間違いない」と、その場で断層の構造を説明すると、最初に断層であることを否定
していた台電職員もしぶしぶ認め、さらに慌てたようすで隣にいた田秋?国会議員に、
「死断層だから大丈夫」と必死に弁解していました。

事実を歪曲し、真実とかけ離れたことをでっち上げ、市民団体や海外学者の監督を逃
れようとする台湾電力に厳しく抗議します。

原子力発電は危険性の高い技術です。「事実の指摘」に対して誠意をもって対応せず、
まともな回答もできない台湾電力は、市民の原発への危惧感と原発事故の可能性をさ
らに高めました。

★ 塩坂氏はインタビューの最後に、こう述べました。

「今回の調査は初診のようなものです。貢寮でやらなければならないことはまだたくさ
んあります。これからも引き続き調査が必要です」

「科学者の本務は人類の幸せを求めることです。しかし、一部の人間は自らの利益を
守るため、良心から目をそらします。だから見えるべきものが見えず、見つかるべきも
のが見つからないです。人間は誰しも過ちを犯します。私も例外ではありません。台湾
電力や台湾の学者とお互いのデータを持って、公の場で対等な立場で話し合い、人類
にとって最善のやり方を探し求めたいです」



ノーニュークス・アジアフォーラム通信 No.106もくじ

              
 (10年10月20日発行)B5版32ページ

● 第四原発の直近に断層! 日本地質学者が発見
       
●塩坂邦雄氏、新聞各紙や台電の公式声明にコメント
              
●非核亜洲論壇2010(NNAF in台湾)報告
                
     非核亜洲論壇2010 ダイジェスト(末田一秀)
              
     NO NUKES ASIA FORUM 2010 共同声明

     台湾のNNAFに参加して(村上正子) 
               
     【我是核四】【今天的所作所為/楊貴英さんの歌】(とーち)  
   
●829ノーニューク・アクション ― 反核の新しいスタート(チェ・スーシン)

●第四原発稼動反対ヒューマンチェーンに参加して(松本なみほ) 
     
●対等な関係の中で連帯を続けよう(冨田貴史) 
            
●第四原発、来年の完成予定、延期確定

●中国電力の上関原発建設と埋立てに反対する 祝島の人びとを応援する
原子力開発監視タイ民衆ネットワークの声明

●生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)参加者に向けての
広島・上関リンクと連帯する国際共同声明                 
************************************************
見本誌を無料で送ります。ココをクリック
年6回発行です。購読料(年2000円)
************************************************

[目次へもどる]