ノーニュークス・アジアフォーラム通信No.99より



バタアン原発反対! 3000人がデモ


       NO to BNPP Revival(バタアン原発復活反対ネットワーク)

 1985年の民衆ゼネストは、バタアン原発の運転開始を阻止すべく闘うフィリピン民衆の活気を示していた。「非核バタアン運動」の6月20日の24周年記念デモでは、バタアン州北部のディナルピハンと南部のオリオンから出発して州都バランガ市のバランガウ・トゥヨで合流するという、24年前の民衆ゼネスト時のデモルートが再び採用された。

 「非核バタアン運動」議長のトニー・ドゥマウアルは、「アロヨ大統領が日本で『原発をひとつの選択肢としてみている』というスピーチを行ったことは、アロヨ大統領自身がバタアン原発を推進しているのであり、ただマーク・コジュアンコ議員の背後に隠れているだけであることを示している」と語る。

 85年の民衆ゼネストを回想して、デモはバランガのバランガイ・トゥヨにおいて、当時実際にあった歴史的な瞬間をも再現した。それは、軍隊のバリケードと武装警官の装甲車によって北部からのデモ隊が前進を阻まれ、それを知った南部からのデモ隊がさらに士気を高めてその現場へと突き進んでいった出来事である。

 参加者は花火やバルーンを空に放ちながら「民衆ゼネストの教訓を思い出そう! バタアン原発を廃炉にしよう!」と叫んだ。

 今回のキャラバンには、バタアンの司教、ソクラテス・ヴィレガスも参加した。彼と共に、モロンのロニ・ロレト、ディナルピハンのフロイラン・ミゲールなどの神父たち、そしてディナルピハン、サマール、オリオン、オラニ、マリベレス、バランガなどから市長や市議会議員らも加わった。

 このたびの行動には、約3000人の参加者が遠くはマニラ、パンパンガ、ザンバレスをはじめとして12の地域から結集した。北部からは、長年の活動家から若い参加者まで老若男女がサマールからバランガへ行進し、南部のモロン、マリベレスなどからの参加者はオリオンからバランガへと行進した。

 参加者は、機動警察によって先月逮捕された反原発活動家、アルシエ・バタンの即時釈放を要求するプラカードも掲げた。非核バタアン運動は、バタンの逮捕は高揚するバタアン原発反対運動に先制攻撃をしかけるための恐怖政治の一環として行われたと信じている。

 行動に参加したグループのひとつ、KPDのピート議長は、「われわれの行動に対して暖かい反応が送られていることは、バタアン原発に反対する思いが現地のみならず全国的に共有されていることを明確に示している。われわれはバタアン原発にこれまでも一貫して反対してきた。今も反対している。そしてこれからも反対していく。バタアン原発という怪物が消え去るまで、この戦いは続いていく」と語った。




★プレスリリース(抄訳)
バタアン原発復活と憲法「改正」の動きを終結させよう!


 NO to BNPP Revivalは、バタアン原発運転開始を止めた1985年の歴史的な民衆ゼネストを記念し、今般のバタアン原発復活の動きを止めるために、結集することを呼びかけた。

 ネットワーク参加団体であるカリカサン(環境のための民衆ネットワーク)のクレメンテ・バウティサは、バタアン原発を廃炉に追い込んだ多くの問題は今も生きている。国民と歴史によってすでに「受け入れない」と審判されているこのプロジェクトを再開させようとすることは、現政権の貪欲さの表れに他ならない、と語った。

 バウティサは、アロヨ政権がこれほどバタアン原発復活に傾斜している理由のひとつはその背後にある金であると指摘する。その金とは、憲法「改正」を追求するために十分な仲間を得るために、アロヨの集票装置と彼女自身に燃料としての資金を注ぎ込むものだ。われわれは、抵抗を避けることにばかり腐心して自らの権力の座を永続させるためならなんでもやるという、憲法違反の政権の下にいる。

 バウティサは、そうした背景からアロヨ政権がバタアン原発復活へと舵を取り、彼女の権力欲を満たすためにバタアンの地を汚染された遊び場と化してしまうかもしれない、と強調する。
 ネットワークの広報担当のジョバンニ・タパンは「権力者にのみ利益をもたらすようなプロジェクトに資本を投入しようとするアロヨ政権は非道徳的だ。なぜなら、現在提案されている憲法『改正』においては、電力を含めた公益事業が外国の投資家の手に渡ってしまうからだ」と語る。

 「公益事業が100%所有されれば、電気代は上昇し、運転上のリスクやコストが消費者に転嫁されてしまう。このことはフィリピン人にとっては凶兆である。民衆を犠牲にして、収益と毒と海外資本による支配が始まるのだ」とタパンは説明する。

 そして「われわれはバタアンの人々と連帯し、マラカニアン宮殿の新たな独裁者とバタアン原発復活プロジェクトに反対して、ふたたび歴史的な行動を起こしていくよう呼びかけたい」と結んだ。



バタアン原発復活に強い抗議

        (「フィリピン・デイリー・インクワイアラー」6月21日付より)
 
 6月20日、バタアン原発反対運動が勝利をおさめた民衆ゼネストから24周年の記念行動の一環として、3000人余りがデモ行進を行った。

 デモにさいして、バタアンのソクラテス・ヴィレガス神父は、アロヨ大統領が原発をエネルギー源の選択肢として考えていることに対して激しい怒りを表明した。

 神父の発言は、アロヨ大統領が19日に東京で行われた日本アセアン経済文化フォーラムの会合で行ったスピーチに対して向けられたものである。アロヨ大統領はスピーチの中で、フィリピンが原発の利用も含めてエネルギーオプションの刷新のプロセスにあると語った。(訳注:このとき彼女は「日本企業に原子力発電での協力を期待する」とも語った)。

 「大統領がそのようなことを言っても驚きはしない。しかし、非常に腹立たしいし、失望させられる。大統領はその言葉を我々バタアンの人間に対してではなく、外国で言わざるをえなかったのだから」

 神父は今年2月、バタアン原発の復活と運転を目指す法案が国会に上程されたのを受けて、バタアンの役人のみならずさまざまなセクターへのロビー活動を行った。

 神父は「原発や放射性廃棄物が人間にどのような脅威や危険をもたらすかについて、大統領は明らかに無知だ」と指摘する。

 バタアン原発に関しては、50人の原子力の専門家がチームを結成して調査を行い、40000ケ所に上る構造上及び安全上の不具合が見つかっている。この調査は、当時のコラソン・アキノ大統領によって1980年代に行われたものである。

 午後3時までには、24年前の抗議行動と同じルートをたどったデモ隊が次々とバタアンのバランガイ・トゥヨに結集し始めた。ここは1985年に、軍隊とデモ隊が対峙した場所である。

 すべてのデモ隊が到着すると、1985年6月にマルコス大統領が出したバタアン原発運転命令を撤回させた民衆ゼネストの勝利を祝って、色とりどりの風船が空に放たれた。

 国営ラジオでは、政府の要人が「アロヨ大統領はバタアン原発復活を推進しているわけではない」と発言している。しかし「非核バタアン運動」のアントニオ・ドゥマウアルは「もしアロヨがバタアン原発に賛成していないなら、どうして彼女の盟友であるマーク・コジュアンコ議員がバタアン原発運転開始の提案を主張しているのか」と語る。

 コジュアンコ議員の主張は、第6300法案となり、そこではバタアン原発復活、委託、商業運転のための方策が盛り込まれている。コジュアンコは「バタアン原発が、10年以内に到来するといわれるフィリピンのエネルギー危機を解消し、化石燃料によって引き起こされる汚染を軽減する」と主張している。

 20日に発表された声明において、コジュアンコは「メディアにおいて、原発に対して周到に組織された攻撃が仕掛けられているので、原発稼働を歓迎する動きが覆い隠されている。同時に、原発の運転によって生み出される無数の恩恵も、見えなくされている」と述べた。

 コジュアンコはさらに「サバン、マバヨ、ビナリタン、ナグバラヨン、ポブアシオンなどの住民はバタアン原発再開に賛成しているが、彼らの声は、潤沢な資金を後ろ盾として原発に反対するグリーンピースなどのグループによってかき消されている」とも述べた。

 しかし原発反対の活動家らは、キャラバンを通じてさらに反対運動を継続していく予定だ。6月22日にもバタアン州バランガ市で集会と祈りの会が開かれる。



ノーニュークス・アジアフォーラム通信 No.99もくじ

                
    (09年8月20日発行)B5版28ページ

●「安全・安心は? 未来は?」(桑原三恵)                

バタアン原発反対! 3000人がデモ                    

「カニャクマリ宣言」とともに「反核運動全国連合」が発足         

全国会議「核エネルギーと抵抗の政治学」への呼びかけ
                              (S.P.ウダヤクマル)

「貢寮ノーニュクサー」元年へ(康世昊ほか)               

「タイ発電公社、原子力発電に前向きな取りくみ」         

「サラティガに行ってきました」(桜井薫)               

映画「ヒロシマ・ピョンヤン」完成(伊藤孝司)
                  
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