「韓国の米軍基地に
           劣化ウラン弾300万発」


                                            イ・シウ

米国の機密解除文書から、韓国と沖縄の米軍基地に放射能兵器の劣化ウラン弾を保管し
ていることが公式に確認されたことで、今後、激しい論議を呼ぶものと予想される。

2001年2月20日、米国親友奉仕会ハワイ支部幹事のカイル・カジヒロが、情報自
由法(FOIA)に基づき、米太平洋司令部 総司令官 ブレア提督に、米軍基地の劣化ウラン
弾に関連するすべての記録を公開するよう要請したのに対し、ヒカム空軍基地の太
平洋空軍司令部ノーバート・A・ヒューズ中佐が03年8月1日に答弁したところによると、
米軍はハワイなどの米国領内には劣化ウラン弾を保管していないが、沖縄の嘉手納空軍
基地と韓国のオサン(烏山)空軍基地、スウォン(水原)空軍基地、チョンジュ(清州)空軍
基地に保管していることが明らかになった。

スウォン基地に 1,360,181発、チョンジュ基地に 933,669発、オサン基地に 474,576発が保
管されている。三つの米軍基地に保管された劣化ウラン弾だけで約280万発であり、国民
12人に1個の割合で貯蔵されていることになる。

オサン基地に保管されていた劣化ウラン弾は、文書上の数量と実際の数量に 20,353発も
差が生じており、チョンジュ基地とスウォン基地でも 9,408発の差が発見されている。しか
も、オサン基地の 24,696発は紛失したことが明らかになり、劣化ウラン弾の保有と共にそ
の管理の実態が深刻な状況にあることが露見した。

これらの記録は、沖縄嘉手納空軍基地の18弾薬分隊と韓国オサン空軍基地の51飛行弾
薬維持分隊から提供された。

これによって、韓国では1997年にヨンチョン(連川)爆発物処理場で、米軍のミスにより劣
化ウラン弾1発が誤って処理廃棄されたという発表以後、駐韓米軍の劣化ウラン弾の保
有が具体的に確認された。

一方、沖縄の鳥島での駐日米軍の劣化ウラン弾誤発事故以後、住民らの激しい抵抗に
あい、駐日米軍当局により撤収されたと思われていた劣化ウラン弾が、依然として嘉手納
空軍基地に40万発も保管されていることが確認されたことで、沖縄でもまた、劣化ウラン
弾をめぐる論争が再び加熱するものと見られる。


(劣化ウラン弾に関する報告書から)



(資料を整理し、劣化ウラン弾の貯蔵量にしぼって調べてみる)

貯蔵場所

貯蔵量()

オサン基地

  474,576(+24696紛失分)

チョンジュ基地

  933,669

スウォン基地

1,360,181

韓国の基地小計

2,768,326(+24696紛失分)

嘉手納基地

  398,768



上の表で見られるように、駐韓米空軍基地三ヶ所で確認された劣化ウラン弾約277万個に、
紛失した弾薬2万5千個を追加すると、約280万個が貯蔵されているわけだ。過去にキム・
ウォヌン議員が、駐韓米軍が劣化ウラン弾を5万発ほど保有しているという発表をしたことが
あるが、今回の資料により、その約60倍である280万個の劣化ウラン弾が3つの基地に保
管されていることが明るみになったわけだ。これは沖縄嘉手納基地の約7倍に達する数だ。

湾岸戦争当時、米軍が使用した劣化ウラン弾( A-10対地攻撃機用 30mm)の総量が
940,000発だった点を思い起こすと、駐韓米空軍基地の劣化ウラン弾の量は、その3倍に該当
する数だ。

1997年、120mm戦車砲弾1発がヨンチョン(連川)爆発物廃棄場で誤って分類され
爆発したという駐韓米軍の報告は、空軍基地だけでなく陸軍基地にも戦車用劣化ウラン弾
が保管されているということを証明をしたわけだ。120mm劣化ウラン弾を主に使用する戦車
は M829シリーズであり、M829A2戦車に使用される劣化ウラン弾の劣化ウラニウム含有量
は 4.74kgで、30mmに使用される劣化ウラニウム 0.3kgの約16倍に達する。

米陸軍用劣化ウラン弾の保有場所として現在まで最も有力と判断されるのは、ウィジョンブ
(議政府)のキャンプ・クヮンサリ(廣沙里)弾薬庫であり、その規模は外観から見ただけでも
上記三ヶ所の空軍基地の弾薬庫に比べはるかに大きい規模である点、また駐韓米軍が陸
軍中心の体系である点からも、無視できない水準であるものと判断される。米軍の海外駐
屯地域の弾薬庫中、最も大きい規模のドイツのカイザースラウテルンのミエザウ弾薬庫の
弾薬貯蔵量が顕著に減った現実を反映するならば、韓国が米軍の劣化ウラン弾の最大の
貯蔵所であるかもしれないという話も決して聞き流せない状況だ。

同時に、紛失した劣化ウラン弾が2万発以上ということは、深刻な憂慮を呼び起こす。上の
図表によると、劣化ウラン弾目録で問題が生じていることがわかる。弾薬目録では 24,696
個が実際の数量として不足し、別の弾薬目録では逆に実際の数量が 44,849個多い。
管理上の差が発生した数量だけでも何と69,545個にのぼる。くり返し指摘するが深刻な
問題は、劣化ウラン弾 24,696発が紛失していることである。


●1997年の駐韓米軍による劣化ウラン弾誤爆事故


                     廃棄処理された劣化ウラン弾

湾岸戦争以後、放射能汚染の後遺症問題で物議を醸してきた劣化ウラン弾に対する安全
性の論争が韓国でも爆発した。駐韓米軍が1997年2月に京畿道ヨンチョン郡テジョンリ
(大田里)、かってキャンプ・ビーバーといった米軍基地の裏手の爆発物処理場で、事務処理
上の錯誤により120mm劣化ウラン弾1発を破壊処理した事実を、3ヶ月もたった5月16日に
明らかにしたためだ。

当時米軍は発表を通じ、ウィジョンブ(議政府)のキャンプ・クヮンサリで事故が発生したと発表
するなどの混乱を見せた点や、劣化ウラン弾はテグ(大邱)所在の米軍第19支援司令部(別
名 キャンプ・ヘンリー)配下の部隊が管理・補給していることが確認された点などから、当時、
陸軍の戦車用の120mm劣化ウラン弾はキャンプ・クヮンサリに保管されていると判断された。

一方、米軍が発表した5月以前の97年3月3日に、劣化ウラン弾の保有の実態と安全性に
関する <ハンギョレ21>(週刊誌)の質問に対して、駐韓米軍スポークスマンのティム・コルス
は、「保有しているが、まだ一度も使用したことがない」と答弁していた。さらに 「誤発射等、
ミスにより使われたことはないか」という質問に対し、「劣化ウラン弾の製造、輸送、貯蔵は米
原子力委員会が認めた免許を所持した人間のみによって運営されている」として、安全に自
信を持っていた。

しかし、駐韓米軍の答弁がなされる以前の2月に、すでに劣化ウラン弾が誤って処理され爆
破された点に注目しなければならない。また今回の情報公開請求資料を通じて明らかになっ
たように、劣化ウラン弾の管理の実態が憂慮に値する水準であるという点を指摘せざるを得
ない。

当時、事故にもかかわらず米軍の態度は堅固だった。かりにミスによって爆破処理されたとし
ても、安全だというのだ。しかし当時、緑色連合のソク・クァンフン幹事は、「すでに国連は、ウ
ラニウム弾を人間を破壊する武器と規定、生物化学爆弾、核爆弾と共に使用と生産を中止す
ることを強く要求している」と主張した。原子力の専門家らは劣化ウラン弾の致命性をくり返し
提起してきた。

ニューヨーク州ノールズ原子力研究所に勤務していたレナード・ディーツは、91年に人間の肺
に入った劣化ウラン弾の酸化物の微粒子の放射線被曝量を測定した結果、半径2.5マイクロ
メートルの微細な粒子から放出される放射線量が年間170レムに達するという事実を明らか
にした。国際放射線防護学会が原子力発電所で働く労働者に許容している年間被曝勧告量
2レムの85倍におよぶ量であり、一般人の許容値にくらべ340倍にも達する量だ。

さらに劣化ウラン弾が爆発する時に発生するこのような放射性物質は数km先まで広がるだけ
でなく、雨水に溶け地下水と表層水を汚染する可能性があるというのが専門家らの共通の指
摘だ。このような物質が呼吸や経口摂取を通じて体内に入ると、鉛のように蓄積され腎臓にた
まり腫瘍を発生させることもあると医学界はみている。米国防総省は1991年5月、劣化ウラン
弾の使用が「基本的に水路を通じて人の健康に否定的な効果を及ぼしうる潜在的な可能性を
産み出す」と認めた。

ヨンチョン郡テジョン里 爆発物廃棄場の渓谷を貫く河川は、爆発物の化学的影響から完全な
無防備状態にある。4kmほど行くとハンタンガン(漢灘江)遊園地の上流に流入していて、上
で指摘した地下水と表層水を汚染させる最も確実な条件をもっているが、誤爆事故以後、米
軍はなんらの環境影響評価も行わなかったし、韓国政府もまたなんの要求もしなかった。


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