NPT再検討会議開催にあたっての要請書

核廃絶を求める広島の市民グループ、プルトニウム・アクション・ヒロシマとボイス・オブ・ヒロシマは、2005年NPT再検討会議の開催を前にして、日本政府が「核燃サイクルの新規事業凍結」構想に反対していることに対して、反対の撤回を求める、下のような要請書を提出します。

「核燃サイクルの新規事業凍結」は、現時点で核拡散を防止するために非常に重要なステップです。ところが、日本政府は、日本が進めようとしている核燃料サイクル事業への妨げになり得るとして、この構想に反対を表明しています。核燃料サイクル事業の経済・資源上の意味は、今やまったく無いにもかかわらず。この政府のふるまいは、核廃絶を求める日本の市民の切実な願いを、まっこうから裏切るものです。

4月8日、8団体・63名の連名で、小泉首相他あてに、メールと郵便で送付しました。    
 (西塔文子/プルトニウム・アクション・ヒロシマ)

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内閣総理大臣       小泉純一郎 様
外務大臣          町村 信孝 様
経済産業大臣       中川 昭一 様
資源エネルギー庁長官 小平 信因 様

2005年核拡散防止条約運用検討会議
開催にあたっての要請書

まもなく、ニューヨーク国連本部で2005年核拡散防止条約(NPT)運用検討会議が開催されますが、現在、核拡散の危険性はこれまでになく高まっているように見えます。

こうした中、国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長が、核燃料サイクル新規事業を5年間凍結する構想を表明し、今回のNPT再検討会議で提案する予定となっていることが伝えられました。

これは、核拡散を防止するために、きわめて重要な措置です。

ところが、日本政府は、この提案が、六ヶ所村で進めようとしている使用済み核燃料再処理事業に影響を与え得るとして、この構想に対する反対をIAEAに伝え、今回のNPT再検討会議における核燃料サイクル新規事業凍結構想の実現を困難なものにしています。

わたしたちは、この日本政府のふるまいに、深い失望と激しい怒りを覚えずにはいられません。

核のいわゆる「平和利用」が、核兵器拡散の隠れ蓑になっていることは、現在の世界では周知の事実です。多くの国が、NPT第四条にもある「原子力の平和利用の権利」を盾に、ウラン濃縮やプルトニウム抽出の技術を入手し、核兵器の製造を実現したり、その疑惑を持たれたりしています。

日本では「北朝鮮の核疑惑」が喧伝されていますが、朝鮮民主主義人民共和国が保有しているのではないかと疑われているものとは比べものにならないほど大量の、日本の「民生用プルトニウム」の蓄積は、海外からは、日本の核武装の可能性と結びつけてとらえられています。

核兵器が使用された場合、あるいは使用されなくても、製造され、廃棄されるまでの全過程で、人類に与える損害には、計り知れないものがあります。それは、60年前に広島と長崎に投下されたたった2個の原子爆弾が人々に与え続けている苦しみを見ても、マーシャル諸島やセミパラチンスク、その他多くの場所で行われた核実験が人々に与え続けている苦しみを見ても、ウラン鉱山や核燃料再処理工場周辺に住む人々の苦しみを見ても、明らかです。命あるものは核と共存することはできません。

安全保障のためにより強力な武器を持つことが必要だという考え方は、人間が人間らしく生きるために必要な医療や福祉、教育を人間から奪い取り、ついには人類を破滅に導く、誤った考え方だと言えるでしょう。

核廃絶は、それが遂げられなくては人類の生存自体が危うくなる、人類にとって必須の課題であることは明白です。

にもかかわらず、これまで膨大な税金を注ぎ込んで国策として推進してきた「核燃料再処理事業」を中止するわけにはいかないという理由で、日本政府が、核拡散防止・核廃絶にとって非常に重要なステップである「核燃料サイクル新規事業凍結」に反対することは、あまりにも愚かな行為であると言わざるを得ません。

以下に署名する団体・個人は、日本政府が、核戦争の惨禍を知る国の政府としての最低限の良心を以って、核燃料サイクル新規事業凍結構想への反対を撤回し、今回のNPT再検討会議におけるその実現に協力し、「2020年までに核兵器のない世界を達成する」という平和市長会議の提案への支持を表明することを強く求めます。

[団体]

プルトニウム・アクション・ヒロシマ
ボイス・オブ・ヒロシマ
原発はごめんだヒロシマ市民の会
広島瀬戸内新聞
民主主義の会
核のごみキャンペーン・中部
脱原発・東電株主運動 
ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン
柏崎・巻原発に反対する在京者の会
脱原発へ!中電株主行動の会
原子力資料情報室

[個人]91名         (4月20日現在)

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