住民投票2月14日のプアン

 ノーニュークス・アジアフォーラム通信No.68より

第2回日韓原発立地地域議員交流会報告

―全羅北道副知事による巻町長発言ねつ造をあばく―


                       柏崎市議会社会クラブ 高橋新一

5月5日から8日まで日本、韓国で反原発運動に取り組んでいる議員たちとの交流会を開催しました。2年前、台湾で行われたNNAFで交流を約束し、同年11月に柏崎市議会社会クラブのメンバー4人が韓国を訪問しました。今回の2回目はウルチン、ウルサン、プアンの道・市・郡・区議会議員ら9人が柏崎・刈羽を訪れました。

国会議員秘書の方が1名参加されましたが、「本当のところ今回の来日は(対日感情から)あまり気が進まなかったけれど、こんなに歓迎してくれて本当に来て良かった。気持ちが変わりました」と自己紹介で挨拶をされ、胸に熱いものを感じました。

6日は、巻町を訪問し、中村、板垣両氏の案内で巻原発建設予定地であった角海浜を視察、



その後、巻町労農会館で現地報告会を行いました。中村氏から勝利した巻のたたかいの報告を受けましたが、その席上、プアンのイ・ビョンハク道議員、チェ・フニョル郡議員から「4月1日に全羅北道副知事が巻町を訪問して町長と会見。帰国後『原発計画が破産したおかげで巻町は停滞を極め、国の機関や企業が撤退、合併で町名も消えてしまうと、町長が涙ながらに語った』と全北日報が報道したが本当か?」との発言があり、早速、役場に行き町長に真相を確かめたところ「いくら何でも、そんなこと言いませんよ」と一笑に付されました。


後日、プアンのみなさんが副知事の懲戒を求める記者会見を行ったとのことですが、まさか自国の地方議員が巻町長に直接会うとは思いもしなかったことでしょう。いずこの「エライさん」も同じだということでしょうか。

3日目は、柏崎刈羽原発を視察。ABWR原子炉の模型を見ながら説明を聞きましたが、東電は、ひび割れ、トラブル隠しや圧力抑制プール内の異物などに言及しないので、私(高橋)が変わって丁寧に?説明する場面もありました。

柏崎市長を訪問した後、柏崎産業文化会館で現地報告会に移り、ウルチン、ウルサンの原発増設反対運動、プアン核廃棄場闘争勝利の各報告がありました。

韓国の原発政策は、すべてが日本に「右ならえ」で日本の真似であり、日本のやり方を見ているとのことでした。台湾をはじめとするアジア地域で日本は中心的(悪い)役割をはたしており、反核運動は外にも目を向けなければならないことを改めて感じました。

すべての日程が終わった8日、新潟空港への見送りの途中、口に合うか心配だった「日本そば」は次々とおかわりの注文があり、「おいしい」の連発で、交流会を締めくくることができました。柏崎市議、刈羽村議、西山町議のみなさん、松谷・静岡県議、みどりと反プルサーマル新潟県連絡会、柏崎地区労、市民のみなさん、そして通訳でご苦労いただいた金福女さんに心から感謝致します。


プアン対策委が
全羅北道副知事の懲戒を要請


「イ・ヒョンギュ副知事の一方的な言にすぎない」
と田辺・巻町長


キム・ヒョンサン記者(チャムソリ 5月18日付)

5月18日午前11時、全北道庁でイ・ヒョンギュ副知事の懲戒を要求する記者会見がもたれた。核廃棄場白紙化プアン対策委員会は、全羅北道のイ・ヒョンギュ副知事が、道内の日刊紙(全北日報4月9日)への寄稿文『老紳士・巻町長の告白』によって虚偽の事実を提示し、住民世論を欺き、公務員の品位を落としたとして、行政部と監査院に対して「監査および懲戒」を要請した。

イ・ヒョンギュ副知事は、4月に日本を訪問した際の田辺・巻町長との懇談会の内容を、帰国後、巻町長の発言内容を引用して、「原発施設の誘致に失敗した巻町の場合、沈滞に陥り近隣都市との合併を推進しなければならないくらいに存立の岐路に立たされている」という要旨で寄稿した。

これに対し、この日の記者会見で、韓国地方議員団の一員として5月に巻町長を訪問したプアンのイ・ビョンハク道議員、チェ・フニョル郡議員は、「田辺町長の表現で言えば『とんでもない話』であり、記事『老紳士・巻町長の告白』は、意味と内容が一つも一致しないぐらい事実と異なることを確認した」と明らかにした。

議員らは、「田辺町長は、新聞の内容について『一方的なイ・ヒョンギュ副知事の言にすぎない』と一蹴し、通訳の問題があるかもしれないにしても、長い溜息、震える声、目がしらが熱くなっていた等、悲しい表情になったという表現については、町長自身も『全くのでたらめだ』と言った」と語った。

議員らはまた、「『国の機関の撤退』とは、原発を推進するためにあった東北電力会社が住民投票で原発誘致がなくなったことで撤退したものだし、『企業が撤退』した事実はない」としたうえで、「むしろ原発が設置されれば移転することにしていた食品会社と菓子工場が、白紙化以後そのまま存続することになった」と明らかにした。

プアン対策委は、「国の最高級公務員である1級公務員が、事実と違う内容を事実であるかのように、浮かべてもいない表情まで描写して、自身の文章に説得力を持たせようとしたことは、道徳的に容認できない行為」とし、政府に監査および懲戒を要請した。

田辺町長、総務課長、総務参事の参席のもと、韓国地方議員9名、柏崎市会議員4名、前議員1名、巻町原発反対の会の事務局長が参加し、『老紳士・巻町長の告白』に引用された発言内容を田辺町長に確認した結果は次のとおり。

1.「賛成・反対運動を行ったそれぞれの代表たちに一同に集まってもらい対話をしようと思ったが、両陣営いずれも同席することを敬遠したため、それぞれ別々に会い対話した後、巻町長と懇談会を持った」という記事内容については、
田辺町長は「反対派側には会おうという話がなかったし、住民投票実行の会と賛成派の会への取り持ちをしてくれるよう(一日前に!)要請され、会わせるようはからった」と言った。

2.「住民投票当時、町の企画課長であった田辺町長は『自分も原発誘致に積極的に努力していた』」という内容については、
田辺町長は「原発誘致に積極的に努力したという表現は違う。企画担当の公務員という身分で、賛否を表明することもできなかったし、また、してもいけない立場であった」と言った。

3.「『巻町の発展のためにどんなことをしたらいいのか全く考え及ばずにいる』と話した」という内容については、
田辺町長は「町長選挙の時期に、地域経済活性化を主要公約としたので、企業誘致、雇用創出、経済活性化についての話をしたまで」と言った。

4.「また田辺町長は『人口と住民所得が減少し、ある程度あった企業や国の機関さえも撤退することによって、巻町はいま自立のための身もだえで、近隣の新潟市と合併の是非をめぐって深刻に悩んでいる』と打ち明けた」という内容については、
田辺町長は「巻町の発展について話したのであって、自立のための身もだえについての話はなかった。新潟市と巻町の合併は、原発とは関係がなく、来年3月に国家施策として合併を論議中である。国の機関の撤退とは、原発を推進するためにあった東北電力会社が、住民投票で原発設置が消えたことで撤退したもので、企業が撤退した事実はない」と言った。

5.「『原発建設に反対した最初の地域という汚名ゆえに、どの企業も巻町に来ようとしない。日本地図から巻町の名前が消える窮地に立たされている』と言った」という内容については、
田辺町長は「原発建設は国策事業だが、住民投票の結果を尊重し、投票で確認されて白紙に戻すことになったもの。むしろ原発が設置されれば移転することにしていた食品会社と菓子工場が、白紙化以後そのまま存続することになった」と言った。

6.「長い溜息をつく巻町長の声は震え、目がしらが熱くなっていた。洋服の右側に青い羽根を挿した老紳士、巻町長の姿。そして『巻町は未来もなく希望もない、絶望の土地になってしまった。韓国の全羅北道プアンは、巻町の轍を踏まないようにして欲しい』という嘆きと願いがかすかに聞こえるようだ」という内容については、
田辺町長は「一方的なイ・ヒョンギュ副知事の言に過ぎない」と一蹴し、「通訳の問題があるかもしれないが、ため息をつき、声は震え、目がしらが熱くなったと、悲しい表情を浮かべたように表現したことは、全くのでたらめ」と言った。


「知事は、恥さらし外交の責任を問い、
道民に謝罪せよ!」


全羅北道議会(5月27日)でのイ・ビョンハク道議員の発言   

2002年に反核アジアフォーラム議員団会議が結成され、日本の柏崎市議会社会クラブが訪韓され、2004年5月5日から私を含む韓国側の地方議員9名が日本を訪問することになりました。

日本訪問の日程中、人口3万人程の新潟県巻町を訪問し、社民党事務所(巻町労農会館)で韓日の反核の立場の人々が出会い、話をしていたときのことです。巻原発設置反対会議の事務局長であり、労働組合運動も長年してきた中村正紀氏(前職は教師)に、「全羅北道のイ・ヒョンギュ副知事が、巻町を訪問し、町長をはじめ、賛成・反対、両運動の代表らと会談をし、巻町長の談話として、原発の誘致ができなかったことで地域発展がならなかったかのように新聞に寄稿した」という話をしたら、「誘致反対陣営側では、訪問の事実を全く知らなかった」とのことで、中村氏が田辺町長に直ちに電話で確認したところ、町長は、4月1日にイ・ヒョンギュ副知事側の要請で住民投票実行の会の2名と、誘致賛成側の3名を紹介したとし、午後に町長との面談がなされたが、イ・ヒョンギュ副知事の寄稿文のような、そのような内容の話をした事実はないし、田辺町長の表現で「とんでもない話」であり、「寝耳に水の話」であるということでした。田辺町長自ら、イ・ヒョンギュ副知事の訪問時に同席していた職員とともに解明するために、私たちと会うとのことで、田辺町長との出会いが実現することとなりました。(我々の側の恥部をさらけ出すようで、むしろ私たちが戸惑いました)。

イ・ヒョンギュ副知事を含む10名の訪問団一行と会ったという町長室の隣の接見室に、田辺町長、総務課長、総務参事と幹部一名、訪問した側は私たち一行9名と、柏崎市会議員4名、中村氏などが参加し、イ・ヒョンギュ副知事の4月9日付道内某日刊紙とプアン地域新聞への寄稿文「老紳士・巻町長の告白!」の六項目ほどに要約される内容を田辺町長に一つ一つ尋ねたところ、意味と内容が一つも一致しないほど事実と異なることを確認しました。

イ・ヒョンギュ副知事! 日本で4月1日がどんな意味を持っているかご存知ですか? 日本では4月1日は始業式であり、学生たちの新学期が始まる大変忙しい日で、無理な訪問や面会の要請はしないのが礼儀であり、特に一日前に面会の要請をすることは、日本では失礼とし、同席した総務参事によると、そういう理由で面会要請を拒んだのに、行政対行政ということでお願いしたいと懇々と要請されたので、仕方なく午後になって町長との面会がなされることになった、ということです。

私たちは、イ・ヒョンギュ副知事の寄稿文が、原発賛成側の弁を町長の談話としてすり替えた可能性について話しました。

経験に根ざした説得力を得るために海外を訪問して見聞を広めることは職務としては望ましいことではありますが、一国の最高級公務員である1級公務員が、外交を行うにあたって自身の日程を無理なく消化するための私欲で、礼儀や手順を無視し、無理を通す無礼なふるまいをしたことは、国家的な恥辱といわざるを得ないというべきですし、事実と異なる内容を事実であるかのように、浮かべてもいない表情まで描写して、自身の文章に説得力を持たせようとしたことは、道民を欺瞞した行為だと言わざるをえません。

にもかかわらず、イ・ヒョンギュ副知事は、5月18日の本議員をはじめとする反核プアン対策委の記者会見に関連して、「コラムは寄稿者がテーマについて自己の意見を主張したり、感じた点を主観的に表現したものだ」「一部の表現上の問題で寄稿文全体を罵倒したり懲戒をうんぬんすることは適切ではない」というプレスリリースを発表したり、インターネットを通じて本議員がまるで何か誤解をしているかのような文を発表しています。

権威意識に染まっている大韓民国の最高級公務員である1級公務員のやりかねない所業であり、わが国の現実であります。

最も官僚的かつ権威的であり、無責任な行為といわざるをえません。信頼を与えるべき公務員が、事実に基づいた客観的な判断や意見ではなく、事実の歪曲はもちろん、主観的判断といいながら職位に対する信頼を利用して事実をごまかそうとしたことは、許されないでしょう。

かりに、本議員の主張に対して納得しがたいというのなら、日本訪問の映像資料を隠さず提出するべきでしょう。

知事におかれては、イ・ヒョンギュ副知事の日本訪問の報告書と経緯を必ず検討され、恥さらし外交の真偽に対する責任を問い、道民に対する謝罪と再発防止についての約束があってしかるべきと考えます。



ノーニュークス・アジアフォーラム通信 No.68もくじ

No.68(04年6月20日発行)B5版36ページ   

●東芝は台湾に原発を輸出するな!(佐久間真一)               
●台湾向け原発輸出に反対する抗議申し入れ書                
●第2回日韓原発立地地域議員交流会報告(高橋新一)            
●プアン対策委が全羅北道副知事の懲戒を要請                  
●「恥さらし外交を、道民に謝罪せよ」全羅北道議会での発言(イ・ビョンハク)
●ウルチン反核運動の経過と展望(チュ・クァンジン)            
●欺瞞的な核廃棄場誘致請願地域づくり(韓国反核国民行動)    
●国際平和巡礼・・・静かに熱く・・・各地で交流
(藤井学昭・福澤定岳・梅森寛誠・斉藤春光)  
●核に関する二重基準の象徴として−モルデハイ・バヌヌ氏−(野間伸次)  
●マドゥ−ラで海水の淡水化に核技術使用?                 
●ウラニウム兵器の汚染が世界規模に拡散の危険性(山崎久隆)       
●「ウラン兵器」の国際的禁止に向けて(振津かつみ)
●日本被団協・声明「石破防衛庁長官のミサイル防衛発言にきびしく抗議する」
●六ヶ所再処理施設ウラン試験凍結・・・ 6・6全国会議決議文     

****************************************************************
見本誌を無料で送ります。ココをクリック
年6回発行です。購読料(年2000円)
****************************************************************

[目次へもどる]