ノーニュークス・アジアフォーラム通信No.63より

韓国プアン郡ウィ島、核廃棄場反対闘争


 韓国では、7月15日を期限として放射性廃棄物の処分場候補地の公募が行われていたが、唯一手を挙げたのが全羅北道プアン(扶安)郡。

 政府と学界、言論界、社会団体など、14人で構成された敷地選定委員会が15日から6回の会議で総合評価作業を行い、 24日、政府・産業資源部は、プアン郡ウィ(蝟)島を核廃棄物処分場に最終確定した。
 政府は1年間、精密地質調査と環境性の検討などを経て、06年に着工し、08年までに完工する予定だ。

が、現在地域住民の反対闘争が激しく展開されている。

 21日、プアン郡議会は、誘致をした郡長に対する辞任勧告決議案を賛成8票、反対4票で可決した。
 22日には、現地で1万人規模の抗議集会・デモが8時間も続き、警察の暴力鎮圧で約200人が負傷する事態となった。以降、大規模集会・デモは25日、8月1日、9日とくりかえされている(9日は約12000人集まった)。
 30,31日にはソウル上京闘争が展開され、約100人が、大統領府や政党、関連省庁などに対し、抗議・要請活動を展開した。
 31日には現地海上で150隻の船舶デモも行われた。さらに、高速道路での徐行デモ(8月13日、17日)、第2回海上船舶デモ(8月20日)と続いている。


 政府はウィ島が処分場として適格だと宣伝しながら、韓国電力とともに地域への支援事業を本格化させているが、現地の対策委員会と「ウィ島を愛する集い」は、住民が当局に懐柔されたり幻惑されないよう、住民の説得活動を展開している。
 また8月13日には、環境運動連合など42の団体が、核廃棄場撤回を求める共同声明を発表した。チョルラブット(全羅北道)地域の対策委員会では、19日から100万人署名運動を行なうことにするなど、反対闘争が拡散するもようである。

 住民対策委の2つの声明を翻訳、紹介する。 (韓統連 ソン・セイル)


プアンに決定した
産業資源部、行政自治部、科学技術部長官は
プアン住民の叫びを聞け!


         2003年7月26日  核廃棄場撤回 全プアン郡住民対策委員会



 産業資源部は、死の核廃棄場の候補地としてプアン(扶安)郡ウィ(蝟)島を一方的に選定し、これを既成事実化するために、地域への支援と暴力による鎮圧を行使している。
 お金を前面に押し立てた卑劣な方法で、プアンの住民に対し浅はかな利己主義をあおり、安全性に対する真しな検討もないまま、無理やり核廃棄場の建設を押し進めている。

 そうしたなかで、産業資源部長官、行政自治部長官、科学技術部長官がプアン郡を訪問し、再び事件の本質をごまかしている。プアンの住民は長官らのぎまん的な行為に強く抗議し、少しでも対話の意思があるならば、まず住民と席を同じくする場に出てくるよう要求している。

住民たちの意思を無視した敷地の確定を撤回せよ
 
 政府は、産業資源部長官の書簡と行政自治部の報道資料、各種マスコミへの広告などを通じて、まるでプアン郡住民とウィ島の住民が、地域発展のために核廃棄場を誘致すると申請したが、一部が反対しているかのように主張している。そして「国民全体が励ましてあげるべき、最近珍しい勇気ある偉大な決断だ」とかおだてながら、反対運動に乗り出した住民を一部の不純なやからと決め付けている。しかしどうして、地方自治と分権を主張していた(国民)参与政府が、郡長の独断を許してそのように主張するのか。公聴会も住民説明会も一度も開かずに、地域住民の意思だと歪曲し、他地域の郡長も核廃棄場の誘致を何回か主張しているのに、キム・ジョンギュ郡長の独善に便乗して解決しようとする不道徳な政権に憤怒せざるをえない。

 とくに、政府は核廃棄場敷地であるウィ島住民が賛成していると宣伝しているが、これは、世帯当り3億ウォンから5億ウォンの現金支援という詐欺劇に住民を巻き込み、強制的な署名に基づいた無理な主張にすぎない。政府はお金で住民を屈服させ、道徳も良心もない社会をつくり、手段と方法を選ばず、原子力産業界の利益だけ保護しようとする蛮行をすぐさま中断すべきである。

政府は住民の正当な主張を暴力で押えようとする策動を中断せよ

 18日、国務総理は、住民の反対闘争に厳しく対処すると明らかにした。ノ・ムヒョン(盧武鉉)大統領も22日に断固たる対処を求め、ついには23日、キム・ジョンギュ郡長に激励の電話までかけた。また、キム・ドゥグァン行政自治部長官は25日、報道資料を通じて、住民のデモに対する厳重処罰を警告するなど、絶えまなく住民を脅迫してきた。そのうえ、デモ鎭圧特殊部隊を配置し、住民を刺激した。

 したがって、約100人の負傷者と約40人の重傷者を発生させた22日の集会弾圧事件は、政府により計画され主導されたものであり、国民を暴行した事件だ。住民の平和的で合法的な抗議を暴徒のろうぜきだとねつ造したのは、国民世論を歪曲するための術策である。政府はこれ以上国民を分裂させ、プアン住民を脅かす行為を中断すべきだ。

形式的な敷地の調査決定は絶対容認できない

 政府は、核廃棄場が手袋と服などの保管施設であり、陽性子加速器をすごい先端施設のように広報してきた。しかし、産業資源部の計画書には、高レベル核廃棄物(使用済み核燃料)貯蔵施設が含まれており、世界的に放棄されている使用済み核燃料の再処理施設まで構想されている。これはプアンを死の核団地に造成しようとする原子力産業界のち密な意図が込められているのである。

 さらに、産業資源部が急造した敷地選定委員会は、永遠に隔離され安全に管理されなければならない施設を、ただ一度の訪問と数回の会議で、適合していると判断した。地震と地質の安全性、地下水問題などのために、先進国では数十年をかけて論議しているのに、わずか10日で核廃棄場の敷地の安全性について検討を終えたのだ。

 私たちは、とりまき官制学者らの机上の空論を認めることはできないし、彼らを押し立てた政府の危険な決定を絶対受容できない。私たちは国民の安全に対する最小限の配慮もしない政策が、第2のチェルノブイリを招くと直視し、これを白紙化するために総力闘争するだろう。

長官らはまずプアン郡の住民に会って住民の声を聞け

 
 この間、長官らはキム・ジョンギュ(郡長)を激励し公務員を訓戒するために、プアンを訪問したが、彼らがまず会って話し合うべき相手はプアンの住民だ。そして住民たちの意思がどうなのかを客観的に確認すべきだ。それなのに、彼らはまたも当然の常識を無視し、遠まわしにプアンの住民を侮辱し欺まんしている。マスコミを利用して、プアンの住民を罵倒し、住民をお金の前にひざまずかせようとしている。私たちはだまされない。長官らは今からでも、偽善の仮面を脱ぎ虚構に満ちた芝居をやめるべきである。

 私たちはプアン郡を平和で清く守ることだけが目的だ。この国で常識と良心が通じることを望むだけである。子供達の未来が脅かされず、プアンの希望が消えないことを渇望する。このために、私たちは公権力の脅迫と暴力に屈することなく、最後のひとりまで決死闘争することを明らかにする。



政府はプアン住民に対する暴力と弾圧を中断せよ

            
2003年8月18日  核廃棄場撤回 全プアン郡住民対策委員会


 7月14日、キム・ジョンギュ郡長が住民の意思を問う手続きもないまま、核廃棄場を誘致した。それ以来、プアン住民は驚きと衝撃に包まれ、平常状態に復帰することができない。また反対運動を進める過程で、プアンに配置された約5千人の戦闘警察から暴行され、約150人の住民が入院した。住民がかけておいた垂れ幕数百個を、警察が真夜中に取り外すというあきれるような目にあわされたりしている。そして、現在も7人が拘束されており、数十人が立件されたり手配される厳しい弾圧を受けている(アンミョン島の場合でも、拘束者は7人、不拘束立件者は9人に過ぎない)。しかし、住民は核廃棄場候補地撤回闘争を平和的に進めるために、忍耐と節制を発揮している。

 しかし、参加だ分権だとの言葉を並べたノ・ムヒョン政権は、人口7万のプアンで数千人の住民が毎日ろうそく集会を開き、数万人が集まるデモを5回繰り広げても、ろくな対応もしていない。ノ・ムヒョン政権は暴力で住民を屈服させ、海外旅行や現金補償などで住民を懐柔しようとしている。

 したがって現在、プアン住民が核廃棄場の源泉無効を主張するために、高速道路で車によるソウル行きの徐行デモまでせざるをえなくなったのは、政府の政策が詐欺とごまかしで決められ、住民の切迫した主張が合理的に反映されることがない歪曲された現実のせいである。そして無能で無原則な政府のせいである。それなのに政府は、徐行デモの方向ソウルから自分たちの故郷へと戻した住民の車を無理やりに止め、ハンマーで壊し、住民らをこん棒で叩き、引っぱって留置場に放り込んだ。つまり、こうした方法で解決するという。

 司法当局は、産業資源部と韓国電力がおこなった住民買収と専門家の偽証に対しては沈黙していたのに、平和的に高速道路を運行したプアン住民には獣のように飛びかかり、「交通妨害」だの「主導者は厳罰」だのと騒ぎたて脅迫している。

 私たちは、政府がなにがなんでも核廃棄場建設を強行するために、住民を弾圧し暴行をはたらくという今日の事態に絶望している。
 公権力と法の名で住民を脅かし、死の施設を押し付けようとする陰謀に憤怒している。

 すでに住民の忍耐は限界に到逹している。政府はこれ以上、住民を押さえつけるな。プアン住民は強制連行に屈服しないだろう。どんな暴力にも立ち向かい闘う準備ができている。

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