ノーニュークス・アジアフォーラム通信No.62より

日本の人々へ 
―恨みと恐怖の原子炉輸出―
           (塩寮反核自救会)

 台湾電力の第四原発建設計画において、日立の原子炉が近々台湾に搬入される予定となった。私たちはどうしても日本政府に聞きたい。なぜGE社は日立と東芝両社にそれぞれ注文をしたのか? この利権絡みの国際交易において、誰が安全を保証できるのか? 誰が責任を負うのか? これは普通の商品輸出貿易ではない! 一体、どのような政府が許可を下し、この恨みと恐怖に満ちた輸出行動を許すのか!

 去年、東京電力の損傷隠蔽事件が起き、原発事業が嘘と特権、ブラックボックスの混合体であることを証明してくれた。これは日本と台湾だけの問題ではなく、世界中の原発が抱える共通の問題だといっても過言ではない。しかし残念ながら、日本政府は真正面から問題解決に取り組もうとはしなかった。幸い、日本では尊敬すべき数多くの民間団体が立ち上がり、政府が積極的に後始末をするようにプッシュしてきた。
ところが、国内の原発安全問題が未だに解決されていないにもかかわらず、日本政府は原子炉の輸出を許可し、輸出許可期限を度々先延ばししている。

 私たちはぜひ日本政府に答えてもらいたい。
 原発企業の不良商品を国の名で保証するのはどういうことだ? また、北朝鮮の核開発に反対しながら、核設備を他のアジアの国々に輸出することはどういう理屈で説明するのか?

 この十数年間、私たちが心配していたことがことごとく現実になってしまった。
原子炉を搬入する埠頭をつくるために、私たち貢寮郷住民が生計を頼ってきた三貂湾漁場と福隆砂浜がほとんど破壊されてしまった。発電所の進出水口をつくるために、先住民ケタガラン族の遺跡が跡形もなく取り壊された。
 もし原子炉が本当に入ってきたら、誰も補償できない原発災害の恐怖から、私たちは永遠に逃げ出す方法がないだろう! 

 ここは私たちの先祖代々が伝えてきた土地である! 原子炉を乗せた船がこの埠頭に着く日。そのすぐそばにある日本軍上陸記念碑とともに、その原子炉は再び私たちの心に痛々しい傷を残すだろう!

 同じくアジア諸国の一員でありながら、日本が台湾に原発を輸出することは、私たちの心の中に恨みと恐怖を輸出することを意味する。あるいは悲劇を輸出するともいえる。
 これは特定の原発企業の利益のために強行されるシナリオに過ぎない。私たちはここで、日本政府と原発企業に対して、最も沈痛な抗議と怒りを表す。

 その反面、この険しい原発反対の道をここまで歩んでこれたのも、大勢の日本友人の声援と激励があったからである。彼らの長年にわたる暖かい協力があって、私たちは初めて日本人の本当の優しさを感じることができた。

 十数年来、私たちは命をかけて第四原発に反対してきた。悔い無しの反原発一筋である。原発反対運動は後に引く余地がない。 
 台日双方の力を合わせ、市民のパワーで原発政商怪獣の行動を引き止めよう! 
 第四原発建設を止めて、恨みと恐怖の輸出を止めよう! 
 原発に脅かされない新しい非核アジアを一緒につくろう!                  (6月5日)                    
     
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