ノーニュークス・アジアフォーラム通信・号外2015.11より
丹下さんの反原発ビデオと、
その偽ビデオ事件


Pınar Demircan プナール・デミルジャン



 
 私は、映像ディレクターの丹下紘希さんと、2013年にフェイスブックの友達になりました。反原発の活動のために色々情報交換した結果、丹下さんは14年3月に、一つのメッセージビデオ映像(7分)と手紙を送ってくれました。そのビデオは丹下さんが勉強したトルコ語で話したビデオでした。
https://www.youtube.com/watch?v=X2pAfzNlvds(トルコ語と日本語の字幕あり)

 私は手紙をトルコ語に翻訳して、自分がよく記事を書いている「イェシル・ガゼテ」(グリーン新聞)に載せました。さらにビデオと手紙をフェイスブックに載せたら、他のインターネット新聞なども紹介し始め、ビデオはフェイスブックでブームになりました。メインニュース番組にも出て、トルコで見ていない人がいないほどビデオの人気が出ました。

 福島原発事故の後に原発を輸出するためにトルコ政府と契約したのは日本でしたので、丹下さんは、そのビデオと手紙を通してトルコの人びとに福島原発事故の事実と原発の危険性について伝えました。

 丹下さんのメッセージビデオは全国で知られるようになり、14年9月15日、「フラント・ディンク・アワード」という名の平和の祭典でも賞を受賞しました。

 実は、丹下さんはそのビデオと手紙をトルコで誰かとシェアーするために1年も待ったそうです。ビデオを正しく普及するところを探していたからです。

 現在、彼の心配した理由がわかります。オザン・サラユという原発推進派の人によって丹下さんのビデオが偽造されたのです。画像はそのままで、丹下さんの話と字幕が100%逆の内容にされました。偽ビデオはソーシャルメディアやインターネットで広がっていきました。

 私は環境派弁護士のアリフ・アリ・ジャンギさんに知らせました。ジャンギ弁護士の提案は、丹下さんの依頼で裁判を始めることでした。丹下さんは心を込めて原発の危険性を伝えるために作ったビデオが偽造されたことを聞くとショックを受けてしまいましたが、提案通りジャンギ弁護士に依頼しました。15年3月、丹下さんの裁判が、法律5651の9/1 号によって始まりました。5月に丹下さんの裁判は勝利しました。

 しかし、裁判の結果、httpのリンクはアクセス禁止になりましたが、httpsのリンクはアクセス禁止されませんでした。httpsは、YouTubeのリンクですので、アクセスはYouTube次第となりました。

 そこで、社会的な圧力を造るために、「イェシル・ヅシュンジェ」という団体と「ヌクレルシズ・ウェブサイト」は、「Change.org」を通してのキャンぺーンを始めました。同時に私は、グリーン新聞に丹下さんの裁判のニュースを書いて、キャンぺーンのことも広めました。他の新聞社も裁判のニュースとキャンぺーンを報じた結果、偽ビデオに対する社会的な圧力となりました。

 結局YouTubeも、偽ビデオのアクセスを禁止して、偽ビデオが見えなくなりました。丹下さんは、トルコの原発推進派に対して、法的、社会的に勝利を収めたということです。

■丹下さんの本物のビデオのメッセージ

「トルコの人へ。こんにちは、私は日本人です。私はトルコの人のことを心配しています。私はトルコ人にメッセージを伝えたくてトルコ語を教えてもらいました。

 日本の首相はトルコに原発を売りました。そのことをとても恥ずかしく思っている日本人がたくさんいます。なぜなら、私たちの国は福島原発事故を経験したからです。私は福島原発から20キロ圏内の町を訪れました。事故にあった町は2年半過ぎてもあの日のそのままです。今も事故のあった原発の中はどうなっているか危険すぎて誰も確認できません。毎日300トンの放射能汚水が海に流れています。汚れた大地は掠めとってもそのゴミの処分は決まっていません。原発の使用済み燃料は10万年管理をし続けなくてはいけないとても危険なものです。
 
 もしも未来に、私たちが売った原発があなたの国で事故を起こしたら一体どんな事が起きるか想像すると私たちはとても恐ろしい。日本人として謝っても謝っても謝りきれない。私はトルコ人のことをとても心配しています。私たちはあなたとあなたの国の未来を心配しています。

 原発は、エネルギーですが、同時に、とても大きなお金を産み出すシステムでもあります。日本がそうであるように、その利権について人々は判断を間違い、意見がわかれます。同じ国の中で同じトルコ人が争うことになるかもしれません。

 原発は安全ではありません。日本は経済のために未来を犠牲にしてしまった国です。決して誰も信用しないで下さい。

 私はトルコをバスで旅したこともあります。とても美しい国だと感じました。未来にその美しさを失わないよう祈ります。

 トルコの人へ、その未来の子供達へ、日本より愛を込めて」

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ノーニュークス・アジアフォーラム通信
号外2015.11もくじ
 (15年11月20日発行)B5版16ページ

●日本で第17回ノーニュークス・アジアフォーラム 
-アジアの仲間たちと核も原発もない世界をめざして-      

●アジアのみなさんへ(武藤類子)

●国境を越えるネットワークで(黒田節子)
      
●韓国で新規原発の是非を問う住民投票、住民の勝利(小原つなき)

●トルコ、丹下さんの反原発ビデオと、その偽ビデオ事件(プナール・デミルジャン)

●日印原子力協力協定 ― 何が問題なのか(松久保肇)     
●インド・ジャイタプール;終わりのない闘い(3)(シャムシェル・ユサフ、モニカ・ジャー)

●書評『原発をとめるアジアの人びと』(小倉利丸)     

●『原発をとめるアジアの人びと』推薦文
(鎌仲ひとみ・ミサオ・レッドウルフ・鎌田慧・満田夏花)
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