ノーニュークス・アジアフォーラム通信No.133より

 ヨンドク核発電所「住民投票」要求から
「建設計画白紙撤回」を勝ち取る闘いへ!


パク・ヘリョン
(「脱核新聞」共同代表、ヨンドク核発電所白紙撤回闘争委員会・執行委員長)




●「ヨンドク核発電所反対汎郡民連帯」結成

 ヨンドク郡議会前で3月2日、ヨンドク地域の農・漁民団体をはじめとする11の市民・社会団体が「ヨンドク核発電所反対汎郡民連帯(以下、汎郡民連帯)」結成集会を行ない、150人の住民が参加した。

 汎郡民連帯はこの日、「ヨンドク住民の意思に反して核発電所用地が選定された」として、核発電所用地選定の白紙撤回に向けた住民投票を要求した。


●ヨンドク住民は健康で安全な暮らしがしたい

 韓国農業経営人ヨンドク郡連合会は「核発電所用地選定の過程で、住民の意思が反映されていない」として、昨年9月ヨンドク郡議会に請願書を提出した。請願書は「建設予定地内の399人の同意のみで誘致申請が行なわれ、その後もヨンドク郡民を対象とした意見聴取がなかった」と指摘している。

 汎郡民連帯は、コリ核発電所の近くで暮らすイ・ジンソプさんが核発電所を相手どった訴訟で、昨年10月にプサン地方裁判所が、イさんの妻の甲状腺ガンについてコリ核発電所側の責任を認め、慰労金1千5百万ウォンの支払いを命じた判決を出したことに注目している。核発電所周辺地域のガン発症率が他の地域より高いということは、周辺地域が放射能に汚染されているということを立証するものだからだ。

 ヨンドク住民は、「核発電所はいかなる悪影響も及ぼさない」という政府の言葉を信じていない。そして、金よりも健康に生きることを願う平凡な要求が貫かれねばならないと考えている。

 汎郡民連帯は3月14日、福島核発電所事故4周年にあたり、全国から集まった仲間たちとともに500人あまりでヨンドクをデモ行進し、核発電所絶対反対と「清浄ヨンドクを守ろう」という意志をひとつにした。




●ヨンドク郡と韓水原の建設推進策動

 ヨンドク郡議会は、核発電所の全面的見直しと住民投票という要求を検討するため、「原子力特別委員会」を設置した。昨年、原発特別支援金130億ウォンの予算編成を否決し、今年度の130億ウォンについても保留状態だ。「原発特別支援金を使うということは核発電所を受け入れることと同じだ」というのだ。

 汎郡民連帯は、ヨンドク郡守(郡長)イ・ヒジンが住民の意見とりまとめと「郡民疎通委員会」の設置を約束しながら守っておらず、政府の経済的支援策のみを独断で追いかけていることに怒りを表している。

 韓国水力原子力(以下、韓水原)はヨンドク郡の公務員に対して、コリ核発電所内にある韓水原人材開発院で広報教育を施し、幹部クラスの公務員を海外核発電所の視察に送り出している。ヨンドク郡は、これまで同郡の公務員の90%ちかい450人を、2泊3日の日程で1回に約90人ずつ5回にわたって核発電所広報教育に送り出した。

 汎郡民連帯はこのような行為に強い不満を表し、もはや住民投票を通じて自分たちの意志を示すしかないと述べた。昨年10月にサムチョク市が住民投票を通じて反対の意思を示したことに注目するとともに、ヨンドク郡議会とヨンドク郡守に住民投票実施の決断を迫った。


●ヨンドク郡議会が世論調査、ヨンドク住民60%が反対

 ヨンドク郡議会原子力特別委員会は4月8日と9日の二日間にわたってヨンドク住民1500人あまりを対象に世論調査を行なった。同調査によればヨンドク郡民の58.8%が核発電所建設に反対であった。

 この結果は、地元マスコミが今年1月と3月に行なった世論調査において反対がそれぞれ51.8%、53.3%であったことと比べると、ヨンドク住民の核発電所反対の声が次第に大きくなってきているということを示している。そして核発電所の安全性については60.9%が「不安」、核発電所が住民の健康に及ぼす影響についての問いには66.5%が「悪影響を及ぼすだろう」と答えた。

 また、全郡民に賛否を問う住民投票を行なうべきかについては、「行なうべき」が65.7%と圧倒的多数を占め、「郡民の世論を議論に反映する過程を経るべき」は70.3%にのぼった。

 これはヨンドク郡民の賢明な判断と選択の結果であり、1989年の韓国初の放射性廃棄物処分場建設阻止の闘い以来すでに26年も核発電所•核廃棄物処分場反対運動を続けているヨンドク郡民の、後には引けない核反対の意志表明である。

●ヨンドク核発電所建設計画を白紙撤回せよ!

 ヨンドク郡民が核発電所反対を表明するのは、政府の核発電所推進手続きが根本的に誤っているからである。2010年に政府と韓水原は、ヨンドクとサムチョクを一方的に候補地にしたのみならず、福島核発電所事故以降もヨンドクとサムチョクの住民の意思を無視してきた。政府とヨンドク郡は、誘致過程で住民の意見をとりまとめるという約束をまったく守っていない。

 サムチョクは住民投票で市民の85%が核発電所に反対の意思を示した。そして今度はヨンドクでも、住民の意思を問う手続きが、ヨンドク郡議会と市民社会団体の努力によって進められることだろう。

 いまや必要とされるのは、政府によるヨンドク核発電所建設計画中止である。すでに多くの世論調査によって、ヨンドクとサムチョクの住民はもちろん全国民が核発電所の危険性を認識しており、反対の意思を表していることが明確に示されている。

 汎郡民連帯は、ヨンドク郡の行政および議会に、産業通商資源部に対して「新規原発予定地告示」解除を要求することを求めており、これが行なわれなかったときには住民投票をはじめとする核発電所反対闘争に総力を挙げて突入することを宣言している。


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ノーニュークス・アジアフォーラム通信 No.133 もくじ
 (15年4月20日発行)B5版24ページ

● トルコ・シノップ原発建設の法整備に反対する
(サムスン県反原発プラットフォーム)...

●シノップにもアックユにも、トルコのどこにも決して原発をつくらせない! (トルコ反原発プラットフォーム)  
 
●インド・人々の反対を押し切って進められるミティビルディ原発建設に反対する!
(4村長)

●インド・決して終らないジャドゥゴダの悲劇 (ジャールカンド反放射能同盟)

●台湾・2015全台廃核大遊行、46000人                      
●韓国・ヨンドク核発電所「住民投票」要求から、「建設計画白紙撤回」を勝ち取る闘いへ!
(パク・ヘリョン)
    
●司法がとめた再稼働
(水戸喜世子)   
                
●避難計画の矛盾を具体的に突いて ― 関西での再稼働反対のとりくみ
(島田清子)

●被ばく労働者統一春闘 (三浦俊一)  
                   
●玄海MOX裁判・不当判決 ―命のためにひきさがるわけにはいかない
(永野浩二)

●いよいよ正念場! STOP川内原発再稼働 (小川みさ子)
            
●川内原発のスイッチは押させない!
(青柳行信) 

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