ノーニュークス・アジアフォーラム通信No.126より



「福島を繰り返すな!  日印原子力協定反対!
安倍さん、あなたは歓迎しますが、原発はいりません」
             (ジャイタプールでのデモ、1月25日、8km、3000人)

安倍首相の訪印を受けて、インド全土に広がる原子力協定反対の声

                          Kimberly Hughes(Mainichi)

 1月25日から27日にかけて日本の安倍晋三首相がインドを訪問し、インドのマンモハン・シン首相と会談した。議題は多岐にわたったが、交渉が中断していた日印原子力協定についても話し合いが行なわれた。安倍首相の訪印前から、「安倍さん、あなたは歓迎しますが、原発はいりません」と書かれたポスターを掲げた自分の写真をネットにアップするキャンペーンが呼びかけられ、インド全土から数千人の市民が抗議メッセージを寄せた。

 日本からインドへの原発輸出を可能にする日印原子力協定に抗議するアクションも、全国行動デーとして1月25日にインド各地で一斉に行なわれた。

 この抗議行動は、ニューデリーに本拠地を置く「非核と平和のための連合」(CNDP)が提起したキャンペーンと連動して組織された。CNDPは、反核、反原発、平和を求めて2000年11月に結成されたネットワークであり、インドとパキスタン双方に対して核廃絶を要求している。

 CNDPのクマール・スンダラム氏によると、抗議行動はデリー、ムンバイ、ハイデラバード、コルカタ、チェンナイなどの大都市で行なわれたほか、クダンクラム、ジャイタプール、ミティビルディ、ファタハバード、チュッカ、コバーダなど原発の新増設予定地でもとりくまれた。

 スンダラム氏によると、各地での抗議行動参加者数は80~125人であり、最大規模となったのはジャイタプールであった。巨大な原発群の建設(訳注:990万kW、アレヴァと三菱)が予定されているジャイタプールでは、3000人以上の農民や住民が結集し、8kmにわたるデモ行進を行なった。

 ジャイタプールでのデモ参加者の多くが、「安倍さん、あなたは歓迎しますが、原発はいりません」「日印原子力協定反対!福島を繰り返すな!」などと書かれたプラカードを掲げていた。これらの文言は、日本語と英語だけではなく、いくつかのインドの言語にも翻訳されていた。

 CNDPは国際的な連帯を呼び掛けており、ポスターキャンペーンに対しては、ドイツ、フランス、アメリカ、日本などからも写真が寄せられており、日本では東京で連帯デモが行なわれた。

 CNDPが日印原子力協定に反対する根拠は3つある。この協定は福島原発事故後に世界的に巻き起こっている脱原発の潮流に反していること、きわめて貧弱な安全文化しか持ち合わせておらず十分な規制がないインドの原子力部門に原発を託することになってしまうこと、そして、NPT(核不拡散条約)に加盟していないインドとの原子力協定が危険な先例になってしまうことである。

 「新しい原発は、農民や漁民たちから農地を奪い、灌漑用水を横取りし、伝統的な生活を取り上げることによって建てられます。これらのプロジェクトは世界で最も原初的で繊細な生態系を破壊することになるでしょう」

 「この闘いは、世界で最も巨大な企業たちと世界で最も強大な政府たちが手を組んだ勢力と、もっとも貧しく無力にされた民衆による闘いです。民衆には、立ち上がってやり返す以外に何の選択肢も残されていないのです。環境を破壊するこうしたプロジェクトによって、直接的に数百万の人々が影響を受けることになります」とスンダラム氏は説明した。

 今回の安倍首相のインド訪問の間に、日印原子力協定が締結されることはなかったが、すみやかに締結を実現するため交渉を継続することが確認されている。

インドの人々は日印原子力協定に反対する

        クマール・スンダラム(非核と平和のための連合)

 日本からインドへの原発輸出は、インドの常軌を逸した原発拡大路線に燃料を注ぎ込むことになる。インド政府のしていることは、福島事故の教訓を完全に侮辱するものである。

 日本企業が関わることによって、核の巨大企業であるアレヴァ、ウエスチングハウス、GEなどが建設する原発の主要機器が日本から供給されることになる。この常軌を逸したプロジェクトで最悪の犠牲者となるのは、インド各地の原発予定地の貧しい人々である。何の正当性もない危険な原子炉が、暴力的な弾圧とともに彼らの上にのしかかろうとしている。

 日印関係が、経済成長ばかりを崇拝する軍事主義的なものになりつつあることは不幸なことである。日印の軍事協力は、ここ数年で多面的になりつつある。表面的にはアメリカの要請のもとで中国をけん制するためだ。

 インドの核兵器は、インドにいかなる安全ももたらさなかった。そしてインドの防衛予算は何乗という規模で増大した。インドは世界でも最も巨大な武器輸入国となった。

 日本が、積極的に核兵器を増産して南アジアの安定と平和を乱しているインドに対して原発輸出を進めようとしていることには、目を覆いたくなる。

 安倍首相が共和国の日の式典の主賓となり、核ミサイルやそのほかの殺人兵器がショーケースのように陳列される軍事パレードに出席したことは、許しがたいことである。
 
 軍事的なパートナーシップを強める一方で、インド政府はクダンクラムに向かおうとした日本人の活動家たちを強制送還した。クダンクラムは、大規模で集中的な反原発運動が、完全に非暴力なやり方で継続されている場所である。

 私たちが未来に思い描くのは、このような日印関係ではない。日本とインドは、福島事故から十分に教訓を学び取り、ともに再生可能エネルギーと持続可能なライフスタイルを推進していかなければならない。

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