ノーニュークス・アジアフォーラム通信No.114より

インド・クダンクラム原発反対運動(3)

● リレーハンストが50日目に突入
                                  (Pravasi today 12月6日)

 タミルナドゥ州のティルネルヴェリで敢行されている、クダンクラム原発に反対するリレーハンストは、50日目を迎えた。クダンクラム原発に反対する抗議行動の第三期として、ティルネルヴェリとその周辺地域の村人たちが、10月18日に開始されたこのハンストに参加している。

 原発の運転を管轄する原子力公社は、100万kWの原発2基の運転を計画している。村人たちは、原発事故の際に環境と人命が危機にさらされること、原発の稼働による長期的な環境影響が不確定であることを訴えて反対している。8月16日からの抗議行動で、建設工事はストップしたままである。

 PMANE(原発に反対する民衆運動)が結成した「専門家委員会」は、まもなくタミルナドゥ州政府に独自の調査結果を提出する予定だ。この民衆による専門家委員会は、中央政府が組織した専門家委員会による38ページの報告書を詳細に検討しており、「タミルナドゥ州政府が招集した」専門家委員会となっている。
 
● 1500人の村民が、クダンクラム原発を包囲
                                  (Pravasi today 12月10日)

 タミルナドゥ州のクダンクラム原発で、工事の即時停止を求めて1500人の村民が原発周辺を包囲した。

 「今朝、西ベンガルから来たという10人ほどの人たちが、クダンクラム原発にはどう行ったらいいかと村人に道を聞いてきた。何の用事でクダンクラム原発に行くのかと村人が聞いたところ、その人たちはサイト内での工事のために雇われた作業員であると話した」。原発の即時閉鎖を求めて闘っている、「民衆の権利運動」のシヴァスブラマニアンは語る。「このことによって、民衆の不安が緩和されるまであらゆる工事を停止するというタミルナドゥ州政府の決議を、原子力公社が全く尊重していないことが明らかになった」

 この話が伝わると、クダンクラムやその周辺の人々が原発に結集し始めた。
「老若男女が集まっているが、人々は道の両側に座っている。道路を封鎖してはいない。しかし発電所関係者で原発敷地内に出入りする者はいない。さらに多くの人々が集まりつつある」と、ある活動家は語った。

 10月13日にも人々が原発を包囲して、原発サイトへの出入りができなくなったことがある。州政府は原子力公社に対して、事態が沈静化するまでサイトを離れるよう求めた。

 しかしながら、原子力公社は、機器が壊れたり冷却水がよどんでパイプラインがさびたりしないように、必要不可欠なメンテナンス作業を行なっているとしている。

 クダンクラム原発の工事は、激しい反対運動によって、数カ月の遅れが出ている。

● 日本の首相に対して、クダンクラムの人々がアピール
                                      (Pravasi today 12月26日)

 日本の野田首相が、2日間の予定でインドを訪問している。両国は、原子力分野を含めて一連の協定締結をめざしている。

 クダンクラムの人々は野田首相に書簡を送った。「原爆と原発の両方で核の被害を経験した唯一の国として、核の悪夢から人間性を守り、致命的な核ビジネスで金儲けをしないよう、世界をリードしてほしい」

 書簡には、「自国において今も福島第一原発事故による被害が続いているというのに、このような危険な技術を他国に売るということは道徳的に許されないことです。私たちは、日本がインドとの間で民生用の原子力交渉を復活させないよう要請する」とも記されていた。
 
● 原発稼働なら、無期限包囲行動で応戦する
                                         (Asian Age 1月7日)

 クダンクラム原発に反対するPMANEは、「クダンクラム原発の稼働が強行されるなら、運動を強化して無期限包囲行動に突入する」と発表した。

 運動を率いるウダヤクマール氏は、「中央政府が地域の人々の意見を尊重しないなら、人々は迷いなく無期限の原発包囲行動に出る」「原発閉鎖以外に、いかなる妥協もあり得ない。政府は、アメリカ、ロシア、フランス、日本との原子力交渉をすべてキャンセルするべきだ。民衆が多国籍企業のいけにえにされることは許されない」と述べた。

● 中央政府との対話には応じない
                                      (Outlook India 1月30日)

 中央政府の専門家委員会との第4回会合を明日に控えて、クダンクラム原発反対派は、「会合には出席するがいかなる対話にも応じない」と語った。

 「私たちは、彼らが原発から半径30キロの住民に対して話をすることのみを要求する。私たちは推進派とのいかなる対話にも応じない。中央政府の委員会は、われわれが提示した安全性に関する懸念を、根拠のないことと切り捨てた。他の懸念を表明したところで、彼らがまともにとり合うとは思えない。しかし、タミルナドゥ州政府が会合を準備してくれたのだから、それを尊重してボイコットはしない」とした。

 今日の午前中には、PMANEの活動家であるウダヤクマール氏たちがクダンクラムにおいて、原発の模型を燃やして「火葬」にするという抗議行動を行った。

 これまで中央政府の専門家委員会との会合は、11月7日、11月18日、12月15日と3回開かれているが、中央政府の委員会が地元住民の不安や質問に対して満足の行く返答をしていないため抗議がつづいており、1号機の運転開始への道筋は不透明である。

 クダンクラム原発の運転については、福島第一原発の破局事故をきっかけに、抗議行動が激化していた。

● クダンクラム原発に反対する人々が、暴力を受ける、話し合いはキャンセルに
                                 (The New Indian Express 1月31日)

 クダンクラム原発の反対運動を率いるグループは、中央政府の専門家委員会との会合をキャンセルした。今日、反対派のメンバーに対する暴力事件がティルネルヴェリで発生したためである。

 「全く信頼できない。私たちの質問への回答は全くなされていない。私たちが公開を求めた資料もまったく公開されない。それでいて、会合に参加しようとしていた人々が暴力を受けたのだ。話し合いは中止だ」リーダーのウダヤクマール氏は語る。

 中央政府による専門家委員会とタミルナドゥ州が任命した(民衆による)専門家委員会は、今日の午前中に4回目の会合を行なうことになっていた。しかし、州の専門家委員会のメンバーである反対派の2人の委員とその他の活動家らが会場に入ろうとしたところ、ヒンドゥ・ムンナニのメンバーが突然彼らを襲撃した。

 「ラジ・リンガム委員は車から引きずり出されて殴打され、車内にいた女性たちも次々に襲撃された。彼らは病院に運ばれた。私たちは警察に被害届を出して、クダンクラムへ引き返した」と、プシュパラヤン氏は説明する。この事件で10人が拘束されている。

 活動家襲撃のニュースが届くと、クダンクラムやイディンタカライの村々では激高した人々が原発のゲート前に集結している。
 
● 原発反対派が襲撃される
                                 (The New Indian Express 2月1日)

 地方長官事務所前でクダンクラム原発に反対する活動家が襲撃されたことで、周辺には緊張感が高まった。活動家が乗っていた車も襲撃で破壊された。ヒンドゥ・ムンナニのメンバー14人がこの騒動に関連して逮捕された。

 31日は、中央政府が組織した専門家委員会とタミルナドゥ州の専門家委員会の会合が午前に予定されていた。

 原発に反対するプシュパラヤン氏、ジェスライ氏、ウダヤクマール氏らが、車で第2ゲートを入ろうとしたところ、ヒンドゥ・ムンナニのメンバーらがいきなり突進して、警官の目の前で車に投石し始めた。その時、2台目の車に乗って、活動家の仲間たちがやってきた。多くの女性も乗っていた。車が襲撃されているのを見て、女性たちは履物を投げつけるなどしてヒンドゥ・ムンナニの暴徒を追い払った。しかし、数人がその場に戻ってきて、つかみ合いの乱闘となり、警官が制止に入った。

 警察署長は、「活動家が第1ゲートからではなく第2ゲートから入ろうとしたので、ちょっとした揉め事になった」と説明した。

 ウダヤクマール氏は、「地方長官事務所前での襲撃事件は、活動家の命を奪うことでクダンクラム原発反対運動に終止符を打とうとしたものだ。われわれは原発閉鎖まで断固として闘う」と述べた。負傷者の中には、3人の女性も含まれている。

 「すでに私たちは被害届を出した。警官がたくさんいたのに、暴漢を止めなかった。安全が確保されないので、今日の専門家委員会との会合には出席できない。中央政府も、中央の専門家委員会も信用できない。彼らが主催する会合がまたあっても、我々が来ることはない。州政府の招きであれば来る用意がある」とした。

 リーダーの1人であるプシュパラヤンは、「事前に襲撃情報があったので、2台の車に分乗して多くの仲間たちと会場に行った。我々は襲撃情報を地方長官事務所にも伝え、警備を強化するとの確約をとっていたのにこのようなことが起きた」と語った。



● 中央政府、「これ以上反対派と話すことはない」
                                (The New Indian Express 2月1日)

 クダンクラム原発に反対する民衆の不安を緩和するために中央政府が組織した専門家委員会は、活動家のメンバーが会場前で襲撃されたことから反対派が第4回会合をボイコットしたことを受けて、州が組織した委員会とは今後もう会合を行なわないと決定した。

 同じ日に、原発サイトに近いイディンタカライの海岸沿いの村で座り込みをしていた人々が、ヒンドゥ・ムンナニのメンバーと衝突する事件が起きている。

 中央政府の専門家委員会の議長は、「われわれは70ページに及ぶ報告書を追加で作成した。これによれば、クダンクラム原発は安全基準を完璧に満たしており、運転には何の心配もない」と主張した。

● PMANE活動家襲撃事件に対して、批判の声が高まる
                                 (Save Tamil movement 2月2日)

 1月31日にクダンクラム原発反対運動の活動家らが襲撃されて負傷した事件を受けて、多くの政治指導者から、「中央政府はついに、民主的手法で反対運動を行なっている民衆に対して、暴力で原発稼働を強行しようとしている」「政府は活動家たちの間に緊張状態を作り出し、法と秩序の名のもとに反対運動をつぶそうとしているのではないか」などの批判が相次いだ。

 チェンナイでは多くの市民団体や政党が結集して抗議行動を行なう予定だ。襲撃事件を糾弾して、襲撃を行った人間に対する法的制裁を求めている。

● デモと抗議の剃髪
                               (The New Indian Express 2月4日)

 PMANEのウダヤクマール氏は、クダンクラム原発に反対する活動家が黒旗を掲げて抗議行動を行なうことを明らかにした。

「本日、中央政府と国会を糾弾するため、黒旗を掲げたデモ行進と抗議の剃髪を行なう」

 デモには多くの市民団体や政党が集まり、クダンクラム原発に反対する活動家らに対して行なわれた告発を取り下げることを求めている。また、黒旗のデモは、本日ティルネルヴェリの議会で開催される予定となっているクダンクラム推進ミーティングに対する抗議行動でもある。



ノーニュークス・アジアフォーラム通信 No.114もくじ

                        (12年2月20日発行)B5版32ページ

●NNAF 2012 in韓国 に招待します (ノーニュークス・アジアフォーラム・コリア)

●サクチョク・ヨンドク "立地選定、撤回せよ" (脱核新聞・創刊準備号より)   

●インド・クダンクラム原発反対運動(3)                   

●ヨルダンへの原発輸出問題から見えてきたこと (田浪亜央江)         

●健全な精神が世界を破局から救う (L.セレンゲ)

●インドネシアに原発を輸出しないで (アディ・ヌグロホ)

●関西びわこ集会&デモに500名が参加 (久保木契)             

●「足尾―水俣―福島 ・・・公害の歴史から原発震災を問う」 (菅井益郎)     

●「放射能からいのちを守る全国サミット」報告と春休みへの思い (宇野田陽子)

●ノーニュークス・アジアフォーラム通信(No.96〜113)主要掲載記事一覧   

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