福島原発事故についてのテレビ報道に猛抗議する声明

                            2011年3月21日
                            ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン

 このたびの東北太平洋沖大地震がもたらしたあまりの甚大な被害に、胸が張り裂けそうです。さらには、命からがら地震と津波から生き延びた人々が、すでに塗炭の苦しみを受けているにもかかわらず、さらに原発事故の恐怖にさらされ、実際に被曝しているのです。

 これほどの人道の危機が生じているにもかかわらず、一日中テレビでは妄言が垂れ流されています。どのチャンネルをつけても、不謹慎な学者たちが原発の模式図を片手に、誤謬に満ちた無責任な解説を続けています。そうした内容を報道しているテレビ局に対しても、人々の苦しみを微塵も理解しないえせ学者たちに対しても、私たちは猛省を促します。

 スリーマイル原発事故は人為ミスが原因だから、スリーマイルのようにはならない。チェルノブイリ原発とは炉型が違うから、チェルノブイリのようにはならない。このような詭弁が繰り返されました。しかし事故の国際原子力事象評価尺度での評価レベルは着々と上がっています。MOX燃料の危険性、使用済み核燃料が核分裂を起こす可能性があることや猛毒プルトニウムが含まれていることにも、ほとんど触れられませんでした。一般の視聴者が原子力の知識に乏しいとたかをくくっての傲慢な態度です。

 また、さらに許しがたいのは被ばくの危険性に関する報道です。より影響の大きい内部被曝の危険性に触れず、外部被曝を「洗えば大丈夫」などと軽視して伝えました。マイクロシーベルト/年とマイクロシーベルト/時を故意に区別せずに示しました。国策として推進してきた原発のために被曝させられ住み慣れた街を追われた被災者に対して、その被曝をレントゲンやCTと比較するような不謹慎な議論を繰り返しました。どんな放射性物質でどこがどのくらい汚染されているかのデータすら提示できない状況でありながら、30キロ圏外の人々が避難していることについて「全くそんな必要はない」と言いました。安全だというなら、あなた方が行ってそこに長時間滞在して証明したらよいのです。

 福島原発から放出された放射性物質による食物の汚染がすでに明らかになりました。その値は、現在のチェルノブイリですら検出されないレベルの汚染といわれます。にもかかわらず政府は「ただちに健康に影響はないレベル」と発表し、マスコミも同様に報道しています。

 冷静に対応するということと、真実を隠すことは全く別のことです。真実を伝える人々を、パニックをあおる扇動者であるかのように誹謗してはいけません。政府発表をうのみにせず自ら身を守ろうと行動する人々を、風評に踊らされた軽率な存在のように評してはいけません。これほどの事態に至っているのに、このような緊張感のない無責任な言説を放送しつづけるマスコミこそが、愚かな存在です。子どもや未来の世代に対する罪を犯しているのと同じです。このような報道が続けば、それだけ人々から身を守る機会が奪われるのです。
 
 安全な高みから人々を愚弄することは直ちにやめてください。だれがいつどのようなとんでもない犯罪的な嘘の解説を行ったかはすべて記録されているので、時期が来たら審判が下されるでしょう。今後も私たちは、悪質な発言については追及を行っていきます。市民は独自に情報を交換し合って助け合っています。肩書きをひけらかしてテレビで専門用語を駆使してしゃべっても、人々を洗脳することはできないことを肝に銘じておくことです。

 私たちノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパンは、これまでのような欺瞞に満ちた言説が流布されないよう、各テレビ局に以下のことを強く求めます。

1. 福島原発事故にかかわる報道を行う際は、原発を推進する御用学者だけではなく、正しい知識を持った本物の専門家を、推進側と同じ割合で同席させてください。

2. 原発事故による汚染の状況(各地での放射線の空間線量、検出された放射性物質の種類や量や場所など)を常時テレビ画面で公表してください。

3. 根拠もなく安全性のみを強調するような偏向報道を是正し、危険性やその回避方法が正しく人々に伝わるように報道の内容を精査してください。

4. 内部被曝による将来的な発がんリスクの問題にも言及し、「ただちに健康に影響がない」というたぐいの表現を即刻やめてください。

[目次へもどる]