ノーニュークス・アジアフォーラム通信No.108より

ジャイタプール原発反対、5000人が抗議行動


インド環境省がジャイタプール原発にゴーサイン

                          「NDTVニュース」2010年11月28日付
 
 フランス企業との共同でマハラシュトラ州ラトナギリ県に計画されている990万kWのジャイタプール原発は、あといくつかの条件が整えば現実のものとなる。

 このプロジェクトは、強制的な送電停止に直面するマハラシュトラ州のような州にとって、電力不足の助けになると考えられている。安全面や立ち退きなど多くの懸念について議論があるが、環境省は今日、インドのエネルギー需要を満たすためには原発が不可欠であると明言した。

 ジャイタプール原発の敷地は900ヘクタールに及び、敷地の内部に小さな町を擁することになる。西ガーツ山脈に位置する この地域は、豊かな生物多様性で有名である。そして、5つの村の2300人が立ち退きを迫られる。

 「環境主義者は言う。地球温暖化をもたらすから石炭はだめ。水没する地域が出るから水力はだめ。そして原子力にも反対する。インドには12億人が住んでいるのだ。インドが太陽光やバイオ発電でエネルギー需要を充足できるなどと考えるのは愚の骨頂だ」と、環境大臣は語った。

 「決断の仕方がどう見ても拙速すぎる。あわてて決断を下したのは、サルコジのインド訪問のせいだ。フランス大統領が来るまでに何かをしたかったのだ。この案件は、大慌てで行動して、後になって悔やむことになるだろう」。ムンバイのヴィヴェック・モンテイロは指摘する。

 すべてがうまくいったとして、ジャイタプール原発で発電が可能になるのは7年後である。

 インド政府は165万kWの原子炉6基を設置しようとしている。それらの原子炉は、フランスの巨大核企業であるアレヴァと、およそ180億ユーロ(約2兆円)で取引を行うという。
環境省が賛成の意を表明したことで、世界最大の原子力パークがインド国内に出現することとなった。環境省は厳格な条件を課しているが、NPCIL(原子力発電公社)はそれらすべてを満たすことができるとしている。



ジャイタプール原発反対、5000人が抗議行動
                                    「livemint」12月4日付
 
 フランスのサルコジ大統領のインド訪問に合わせて、5000人の住民が12月4日にジャイタプール原発建設に反対する抗議行動を行った。

 村人たちは原発予定地で「人間の鎖」を行い、原発を建設しないよう要求した。彼らが掲げた横断幕には、英語、フランス語、マラティー語、ヒンディー語で「ジャイタプールに原発は要らない」と書かれていた。

 約2000人の漁民が正午前に、原発予定地から2キロのナテ村へ結集した。予定地に最も近接した村であるマドバン村では、3000人の人々が抗議行動に参加した。

 農民や漁民たちは11月30日、環境影響評価報告書において重要な問題点が省略されていることを明らかにし、環境面での許可が再検討されないなら大規模な抗議行動を行うと警告していた。

 村人たちは、環境影響評価報告書を再評価することを要求し、地震の多い地域での原発の危険性について発言した。

 パルヴィン・ガヴァンカルは次のように語る。「政治家たちは、さもわれわれがもっと金がほしいから反対しているかのように見せかけたがっている。それは事実ではない。母なる土地を破壊することを、どうして許せるだろうか? 原発で生み出される放射性廃棄物をどのように処分するか、当局からは何の説明もない。原発から放出される冷却水だけをとってみても、沿岸の海洋生態系が破壊される。さらに、ジャイタプールは地震の危険性の高い地域だ。去年ここでは地震があり、村に通じる橋が崩れ落ちた」

 調査によると、ジャイタプール地域は地震被害の高いリスクがある。5段階の尺度で段階4の地域と位置づけられている。

 ジャイタプールで計画されている原発が、5000人を超える漁民の共同体を破壊するのではないかという懸念もある。漁業共同体のリーダーであるアムジャド・ボルカルは、この地域の漁業の将来像がどのようなものになるのかについての説明がないことを不安に思っている。「地域の漁業共同体に対する脅威は甚大で直接的だ。保安上の理由などで漁民が漁をすることが禁じられてしまうのではないかと心配している」。

ジャイタプール原発に抗議して住民がデモ
                                  「The Hindu」紙 12月5日付

 サルコジ大統領がインドに滞在したのは2日足らずであったが、ムンバイにおいても予定地の村々においても、反対運動は激しさを増している。

 マドバン村では、警察が「800人を拘束した」という。活動家らによると、拘束された人々は1500人以上に上るという。主要なグループのリーダーも多数逮捕されてしまった。

 警察は、拘束の詳細を明かしていない。「まだ手続きの最中である」ナテ警察の警官は本紙の取材に対してそう語った。ナテ警察の所長は、何度取材を試みても応じなかった。州警察の司令室も、この行動について何も言うことができなかった。

 活動家たちは、重要なリーダーたちは軒並み逮捕されたと語る。

「私はマドバンで逮捕されました。警察が私をどこに連れて行くつもりか、どういう罪に問うつもりか、何も分かりません。コルセ・パティル(前高等裁判所判事)も逮捕されたと聞いています」と、KBS議長のヴァイシャリ・パティル氏は、逮捕された後に本紙にこう語った。

 パティル氏は、刑法第144項に基づいた禁止令が彼女に対して出されていたと語る。この命令で、彼女は12月3日から5日にかけてラトナギリ県に入ることを禁止されていた。しかし、彼女は4日に行われる抗議行動に参加するために、それを無視したのである。同様の命令は、コルセ・パティル氏に対しても出されていた。

「KBSの他のリーダー2人も、マドバン村に到着する前に拘束されたようです。携帯電話をかけてもつながりません」。KBSの共同議長のアドワイト・ペドネカル氏は本紙の取材にそう答えた。

 インドの刑法第144項が、ジャイタプール周辺で乱用されている。しかし村人や活動家たちは、抗議行動への参加に対する規制を無視している。

 ムンバイでは、さまざまな労働組合や社会組織の人々が結集して、このプロジェクトに対する抗議行動を行った。

 抗議行動に参加した人々は、環境影響評価報告書の客観性に対して疑義を申し立てた。この報告書は、プロジェクトへの環境面での許可の根拠となるものである。ボンベイ自然史学会が並行して行った研究によると、ジャイタプール原発は甚大な環境被害をもたらすとされている。

 技術的・経済的な有効性に対しても、疑問の声が上がっている。3日に開催された会議では、原子力規制委員会の前議長だったゴパラクリシュナン氏が、「アレヴァの新型原子炉は、まだその性能も証明されておらず、工期の遅れやコスト超過に悩まされている原子炉だ」と、インドがアレヴァとの契約に踏み切ることが賢明なことかどうか疑問を呈した。

村人たちがジャイタプール原発に抗議
                             「NDTVニュース」2010年12月28日付
 
 ジャイタプール原発の予定地となるラトナギリ県で、抗議行動が沸き起こっている。これによって、世界最大といわれる990万kWのジャイタプール原発の建設着工が遅れる可能性が出てきたため、マハラシュトラ州政府は議会チームを現地に派遣した。

 「議会委員会は明日ジャイタプールを訪問する。委員会は、漁民や農民と話をして、彼らの見解や問題を聞いてくる」。マハラシュトラ州議会議長のマニクラオ・タクレは語った。

 環境省が条件つきでジャイタプール原発にゴーサインを出してから1ヶ月が過ぎた。しかし実際のところ、抗議行動が沈静化する様子はない。

 「自分たちの地域が原発計画に直面している人々は、これは破壊的なプロジェクトだと語っています。われわれの次の世代は生きる糧も生き延びるすべも失ってしまうと言うのです。田んぼも、プランテーションも、果樹園も、すべてを失って、飢えて死ぬしかないと」。ラトナギリ県のマドバン村の住民ウマカント・カンブリはそう語った。

 「われわれは死んでしまうが、このプロジェクトを実行させはしない」。前サルパンチ(自治組織の首長)のマンダ・ラクスマン・ワデカルは言った。

 人々は、政府に対して不信感を抱いている。この地域の人々はプロジェクトに関して詳しい内容を知らされておらず、土地は強権的に奪い取られ、民主的な抗議行動が不法に弾圧(10月に600名、12月に1500名が拘束)されたと主張している。

 専門家たちは、「原子炉を建設し、保障措置を整え、輸入された核燃料を装填するとなると、それはあまりにもコストがかかり、ジャイタプール原発で発電される電力はとうてい人々が購入できる額ではなくなる」と指摘している。

 「石炭ベースのプロジェクトでは1メガワットごとに5000万ルピーが必要となるが、ジャイタプールの場合は、メガワットあたりのコストは2億ルピーに跳ね上がる」と語るのは元電力大臣のサルマ博士である。

 このプロジェクトにおいては、放射性廃棄物の貯蔵と処分に関して何の計画もなされていない。また、農業、園芸、漁業、生物多様性のどれをとっても貴重な資源に満ちたラトナギリ県をどうやって生態学的に守るかについての草案もない。地域の村人たちはそう主張している。

 こうした計画がないところでプロジェクトを実行することは自殺行為だ、と彼らは考えている。



ジャイタプールの反原発運動
                            インド共産党  2011年1月1日

 2010年12月6日、フランスからインドへ2基の原発を提供することに関する5つの合意が、サルコジとマンモハン・シンの立会いの下に調印された。将来的には、さらに2基の原発が提供される。

 サルコジは、「フランスとインドの絆の要となるものとして、民生部門における原子力協力を築き上げたい」と述べた。サルコジは、この原発取引に前向きな姿勢を見せるインドの首相に対して、いくつかの珍味や賄賂を用意していた。選び抜かれたそれらの提案の中には、原子力供給国グループのメンバーとなれる国連常任理事国の席も含まれていた。また、宇宙プログラムにおけるフランスとの協力もあった。

 その2日前、12月4日、マンモハン・シンがサルコジと馴れ合っている間に、マハラシュトラ州のラトナギリ県ではいくつもの村で住民らが集まり、ジャイタプール原発建設に反対する抗議行動を行った。

 厳密に言うと立地場所はジャイタプールに隣接するマドバン村であるが、プロジェクトの統括事務所がジャイタプールにあるということから、原発の名前はジャイタプール原発とされた。原子炉や技術的なノウハウはフランスのコングロマリットであるアレヴァが供給する。

 人々の抗議行動 ― 人々がプロジェクトに反対するために民主的な権利を行使すること ― を恐れて、州政府はジャイタプールで夜間外出禁止令を発令している。ジャイタプール原発に反対する人々が掲げる横断幕には、さまざまなメッセージが書かれている。「人々を蹂躙する原発を許すな」「コンカン地方の経済と環境を破壊するジャイタプール原発建設を撤回せよ」「ジャイタプールに原発は要らない」「インドにおけるすべての核プロジェクトを撤回せよ」そうしたメッセージが、英語、フランス語、マラティー後、ヒンディー語で書かれていた。人々は平和的な抗議行動しか行っていないが、1500人の参加者とすべてのリーダーが警察によって拘束されている。拘束されているリーダーの中には、ムンバイ高等裁判所の元裁判官であったコルセ・パティル氏や主要なNGOの指導者などが含まれている。

 ジャイタプール原発はその敷地が968ヘクタールに及び、隣接する5つの村にまたがっている。その村々の人口はおよそ4000人である。農民や漁民たちの間には、へこたれない前向きな雰囲気が共有されていて、土地の売却には応じないし、補償の要求も行わないということで一致している。

 2008年にさまざまな先進的な社会組織が結集してキャンペーンを開始した。彼らは、まず原発に反対する住民の運動を構築することから始めた。既存のさまざまな組織やNGOがこれに力を貸した。

 この核プロジェクトの遂行は相当に困難なものになるだろうという感覚が広がりつつある。

 インド国内には十分な石炭供給があり、新しい石油の埋蔵も確認されている。年間を通して太陽光は豊富に降り注ぎ、沿岸地帯は風力発電に適している。

 しかし、太陽光や風力が再生可能エネルギーであるとしても、それらは先進国や大企業に対して投資のインセンティブを与えるものにはならない。なぜなら、そうした再生可能エネルギーにはたいしたメンテナンスコストもかからないし、その技術は移転先の国において容易に採用、発展されるものだからである。

 アメリカ、日本、フランス、ロシアなどは、インドを彼らの技術に依存させつつ、原発の設備や技術を購入する市場にしようとしている。

 政府が主導するプロパガンダのキャンペーンは、原発に「グリーンパワー」「地球に優しい」のラベルを貼りつけようと躍起になっている。また、原発がコンカン地方に発展と進歩をもたらす、と思い込ませようともしている。

 隠されたコストや危険性は、放射性廃棄物を処分する確かな方法がまだ見つかっていないこと、そして原発を廃炉にするにはとてつもない金額が必要になることだ。

 ジャイタプール原発に反対する運動には、政治政党や独立系の団体など、さまざまなグループが加わり始めている。ガンジー主義者やNGO関係者らは、人々の怒りを何とか和らげ、抗議行動が暴力的な騒乱へと変質することを防ごうとしている。

 今後10年間の電力需要の予想を検討すれば、その需要の大部分がムンバイとその周辺にある工業都市に集中していることがわかる。1つの新興ショッピングモールで消費される電力は、100の村々の電力消費に匹敵する。さらに、電力に飢えたインフラや工業開発プロジェクトが次々に控えている。

 ジャイタプール原発で発電される電力は、地域の人々やコミュニティの「発展と進歩」を意味するものではない。ジャイタプール原発は、企業の利益のためのものだ。

 それがもたらす重荷は地元の住民たちが背負わされ、その危険は地域のすべての生命の上に重くのしかかるのだ。



ノーニュークス・アジアフォーラム通信 No.108もくじ

                   (11年2月20日発行)B5版26ページ

● 塩寮反核自救会 9年ぶりに大会 (ダン・ギンリン)              

● 第四原発 再び300億円の予算追加   
                 
● 台湾最後の海岸線を守ろう (ダン・ギンリン)  
              
● 原発推進者はフィリピンから出て行け(非核バタアン運動ネットワークほか)  

● インド・ジャイタプール原発反対、5000人が抗議行動     
       
● ジャイタプールの反原発運動(インド共産党)    
           
● 上関原発を止める抗議活動報告(渡田正弘) 
               
● 西オーストラリアからデラ・レイ・モリソンさんを迎えて(振津かつみ) 
    
● 「ロカ・ホンダ、ウラン鉱床開発」プロジェクトをストップさせよう!(振津かつみ) 

● 原発を止めたくなる本の宣伝(小田美智子)           
     
● 日本の原発輸出がもたらす危機(山崎久隆) 

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