ノーニュークス・アジアフォーラム通信No.100より


― 9.29日本原発反対運動ルポ ―:

     祝島住民の阻止行動、長期戦へ突入

                                  チェ・スーシン


                      (撮影:チェ・スーシン、以下も)

 私は日本の社会運動の現場を見学するため、8月末から約2ヶ月日本に滞在しています。何回か訪ねたことのある祝島は元々スケジュールに入っていました。当初は10月下旬に行 予定でしたが、9月10日、中国電力が突然埋め立て工事に着手しようとし、祝島の住民および各地の反対派が田名埠頭に集まり阻止行動を行っています。この情報が入ったので、私は予定を変更し、山口県へ向かう準備をしました。9月13日の日曜日、大阪の友人と車で5時間かけてようやく現場に着きましたが、あいにく工事も阻止行動もお休みでした。戦闘モードに入った私は苦笑いしかできなかったです。

 その後私は元のスケジュールに戻りましたが、昨日(9/28)久々にインターネットにつないだら、阻止行動は今も続いているということがわかりました。体力と根性比べの長期戦になってしまっています。阻止行動に参加できなくて悔しかった私は、今度こそ逃がすわけには行きません。一人で東京から新幹線、ローカル電車、柳井から一時間に一本しかないバスに揺れて、午後3時50分、やっと田名埠頭に着きました。阻止行動の16日目です。

 田名埠頭の海上には、8隻の祝島漁船が「上関原発反対」の旗を掲げ、ブイの前に止まり進路を塞げています。バケモノのような大きなクレーン台船は少し離れたところに止まり、陸上にはブイのほかに、多くのクレーン車や機械も置かれていました。反対派は毎朝6時にここに来ているそうです。先ほど中電は工事中止を宣言し、それぞれ帰る準備をしているところでした。今日は阻止行動16回目の成功らしいです。

 中止宣言の30分後、陸上で応援している反対派や報道陣も帰る仕度を始めました。今日はこれで終わりだろうと思いきや、なんと作業船がいきなり動き出しました。この隙を見て作業を始めるつもりか? 周りの人はすぐさま携帯で情報を伝えました。瞬く間に、いったん引き返した漁船は迅速に埠頭に戻りました。なるほど中止宣言の後、漁船は安心して帰ったわけではないです。近くの海域で待機していただけでした。話を聞くと、反対派はほとんど24時間体制で海の動きを監視しています。阻止行動のために仕事などろくにできません。この長期戦がいかに住民に負担をかけているかを思うと、心が痛くなります。



 阻止行動の現場は緊迫感が満ち溢れていました。広い海で小さい漁船とカヤックが巨大な作業船の前に立ち向かっているのを見ると、感動を覚えます。とくに今回の阻止行動は今までと違って、祝島住民のほかにも、カヤック隊を中心としたマリンスポーツのプレーヤー達が応援しに来ました。若い彼らは一日中海に浸って、肉体で中電の作業船と対抗しています。まさに本物のヒーローです! 今回は始めて祝島以外の人が第一線の阻止行動に参加しています。上関原発に反対するのは、決して祝島の住民たちだけではありません。カヤック隊の強い意志によって、このことを世間にアピールできたと思います。

 中電は反対派の高い機動力を見て、今回は本当にあきらめたようです。今日の阻止行動はやっと本当に終わりました。祝島の清水さんは私に微笑みながら、今夜はここに泊まると言いました。この戦いは本当に気力と忍耐力が必要です。

 私は明日もここで声援と撮影を行います。現場の方々は私が台湾からやってきたと知り、よく親切にしてくださいました。カヤック隊の若者一人が、私をカヤックに乗せてくれると言いました。本当にラッキーです。海に落ちないように気をつけます。(9月29日記)



* チェ・スーシンさんの29日のブログ http://souhim.blogspot.com/
を、チン・ジョンリンさんが訳してくれました。

9月29日から3日間、田名埠頭を訪れたチェ・スーシンさんは、映画「こんにちは貢寮」(日本が輸出する台湾第四原発建設に反対する地元貢寮の人々のたたかいのドキュメンタリー)の監督。

06年に来日し、大阪、東京、新潟、柏崎、北九州・下関・祝島・広島で「こんにちは貢寮」上映と現地報告を聞く集いを開催。圧巻は、なんといっても祝島でした。公民館に集まってくれた約100名(過半数は女性)の人々は、映画の中の、何十隻もの漁船を繰り出すシーンや、住民が電力と言い争うシーン、役人に抗議するシーンなどを見て、どよめき、「そう、そう」「おんなじじゃね」と。同じ20数年間を、同じように苦労して闘ってきたのです。

その後、祝島を数度訪れ、滞在し、人々のくらしを撮影、映画制作中。

スーシンさんは10.3 NO NUKES FESTA分科会でもスピーチしました

映画[こんにちは貢寮]プロモーションページ(日本語) http://www.SelectOurFuture.org/gongliao/

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    田名埠頭の情景               佐藤大介

田名埠頭に12日、関西から4人で行きました。
座り込みテントに祝島のおかあさんたちや山口県のあちこちの女性たちがいて、
さっそく手作り弁当や、お菓子、くだもの、お茶などをいただいてしまいました。

海を見ると、中電の台船よりずっと小さな祝島の漁船たち、さらに小さなカヤックたち。
ウェブの写真で見ると「かっこいい」カヤックですが、実際に見ると、実に「けなげ」です。
長時間、波間にただよい、流されないようにパドル(オール)を動かし続けています。

テントに座り込む祝島のおかあさんたちや、漁船のおとうさんたちが、
「守ってやんなきゃ」という気持ちになったというのが、ホンマにうなずけます。
カヤック隊は、その祝島の人たちを守ろうと長期戦をがんばっています。
そして、祝島の人たちとカヤック隊は、私たちや、生き物たち、
すべての命を守ろうとしてくれています。

海や景色ももちろん美しいですが、それよりも、
田名埠頭の情景こそが美しいと思いました。
みんなの気持ちが、今ここに、あふれているから。



ノーニュークス・アジアフォーラム通信 No.100もくじ

                   (09年10月20日発行)B5版24ページ

●祝島住民の阻止行動、長期戦へ突入 (チェ・スーシン)

●NO NUKES FESTA 2009 日本反原発大型集会現地ルポ
                              (チェ・スーシン)
    
●台湾第四原発反対運動の経過と今後の課題 (チェ・スーシン)  
     
●核燃料サイクルの流れと現状、韓国の状況と課題 (イ・ホンソク) 
      
●マレーシア・ベトナム・タイの原発建設計画

●核兵器廃絶への真のリーダーシップを求める要請      

●インド・デリーでウラン採掘反対デモ

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